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日産を危機に陥れた5つの欠如、市場調査の新組織「マーケットインテリジェンス」が目指すもの

従業員を使った短納期・低コストの調査の仕組み

 しかしながら調査を実施するには、膨大な工数や予算、準備期間がかかります。大規模な定量調査をプライベートで実施しようとすると、その準備だけでも2か月ほどかかり、さらに結果を得るのに1か月以上を要します。

 そこで日産自動車のMIでは、①定期定量調査②オーダーメイドの調査③従業員パネルの3つの調査データ、および報告書を社内に提供しています。それぞれの調査は補完的なもので、その3つを組み合わせてお客様理解に役立てています。特徴的なのは、③の従業員パネルでしょう。これは費用やリードタイムのかかる①②の調査に対して、小規模調査でデータ分析上も制約は多いものの、クイックに調査結果が得られることを目指して設定したものです。

日産自動車の調査の種類

従業員パネル調査の特徴

 従業員パネルとは、文字通り従業員をお客様に見立てて調査をする仕組みで、従業員数の比較的多い、日本、米国、欧州、中国の各統括会社に設置され、必要に応じ活用されています。その活用範囲は、従業員では難しいと思われるブランドや価格に関する調査などを除き、多くの分野をカバーできるようになっており、比較的短い期間と低予算でフィードバックが得られるようになっています。

 さらに従業員パネルでの調査は内製で実施されているため、従業員が自分自身で、①調査に必要な仮説を立て②分析によってお客様の声を理解し③さらに改善を加えるという作業を通して、従業員のカスタマーマインドを強化することも可能になります。

日産自動車の従業員パネル調査の特徴

 日産自動車ではこの仕組みを使って、デザイン、部品・装置の使い勝手などの調査に活用されているほか、一般のお客様を使った調査の予備調査など、広く活用されています。

日産自動車の従業員パネル活用の事例

日産自動車のマーケットインテリジェンスの目指すもの

 我々は現在、カスタマー・インサイトをもとに様々な事業分野で提言を行う努力を続けていますが、世界を見るとさらなる上手がいます。2009年のボストン・コンサルティング・グループの分析によれば、市場調査部門の進化は大きく下記の4段階にまとめることができ、その究極の姿は「蓄えた知見と将来の予兆をもとに、会社全体戦略に提言」とされています。

1. 個別調査の実施と発見の報告
2. 個別調査に基づいて、個別プロジェクトに提言
3. 蓄えた知見をもとに、事業分野に提言
4. 蓄えた知見と将来の予兆をもとに、会社全体戦略に提言

 この究極のレベルを目指して我々は日夜努力を続けていますが、残念ながらまだこのレベルには達していません。日産自動車のMIはこの1つ前の段階の「蓄えた知見をもとに、事業分野に提言」をしている、というレベルであろうと考えています。世の中の多くの企業が1と2のレベルにとどまると言われていることから、まだまだ市場調査、あるいはその分析から得られた「カスタマー・インサイト」を企業戦略に生かす余地は大きいのではないでしょうか?

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この記事の著者

市川 晃久(イチカワ アキヒサ)

日産自動車株式会社
コーポレート市場情報統括本部 グローバル カスタマー インサイツ部
カスタマー・インサイト・スペシャリスト

1989年、東北大学経済学部卒業。同年4月、日産自動車株式会社入社。1990年4月は社団法人日本経済研究センター出向、1993年4月復職。以後、商品企画、経営企画を...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/05/11 10:00 https://markezine.jp/article/detail/22360

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