介護福祉士が不足している介護業界
日本では2007年に65歳以上の高齢者が人口の21%を超え、超高齢社会を迎えました。2015年5月の調査では、高齢者の割合は26.4%まで増加しています(人口推計-平成27年5月報- ※PDF)。同時に要介護者も増加しており、介護に関する人材は慢性的な供給不足に陥っています。それは、逆から見れば需要が拡大しており、業界として成長していると見ることもできるでしょう。
特に需要が高いのがホームヘルパー(訪問介護員)、看護師、そして介護福祉士です。看護師と介護福祉士は国家資格ですが、ホームヘルパーは都道府県知事が指定する「訪問介護員養成研修」を修了することで認定されます。実際の業務は、看護師は主として医療に携わり、ホームヘルパーと介護福祉士はより日常的なケアを業務とします。
介護福祉士とは?
そもそも介護福祉士とは、介護に関する専門知識や技術によって身体・精神上の障害がある人の介護を行なう職種です。老人福祉施設や障害者福祉施設などの入所施設、デイケアセンターなどの通所施設、自宅介護を行なうホームヘルプサービスの事務所などが主な職場で、サービス付き高齢者向け住宅で働く方もいます。
2014年の介護福祉士登録者数は約130万人。ですが、実際の業務従事者は約50~60%に留まります(介護人材と介護福祉士の在り方について ※PDF)。介護福祉士国家試験の合格率は受験者13~15万人のうち60%を超える年度が続いていますので、社会状況を背景に見て取ることもできます。いま受験を考えている方にとっては、きちんと勉強すれば合格が確実に近づくということでもあります。
合格後はサービス提供責任者やケアマネージャー、施設管理者などを目指したり、日本介護福祉士学会が行なう研修に参加し、介護のニーズに合わせた仕事に進んだりすることができます。介護福祉士は、介護業界でのキャリアアップにほとんど必須の資格といえるでしょう。
介護福祉士になるには
試験はマークシート方式の筆記試験のあとに実技試験があり、先に「介護技術講習会」を修了すると以降の3回分は実技試験を免除されます。つまり、修了後の試験3回以内に筆記試験に合格すれば、それだけで資格の取得ができるというわけです。
また、筆記試験は例年1月末の日曜日に行なわれ、実技試験は3月初めの日曜日に実施されています。だいたいの時期は変わりませんので、学習ペースや上記の在職期間に合わせて受験するのがよいでしょう。
ただし、受験するには3つの要件のうち、いずれかを満たさなければなりません(2016年度からは一部法改正により要件が変わりますが、2015年度は以下となっています)。
- 特別養護老人ホームや介護老人保健施設の介護職員など、主たる業務が介護等の業務である人、介護保険の指定訪問介護事務所の訪問介護員(ホームヘルパー)などで、介護等の業務に従事(在職期間が3年以上、実働日数が540日以上)した人
- 高等学校又は中等教育学校(専攻科を含む)において、福祉に関する所定の教科目及び単位を修めて卒業した人
- 特例高等学校(専攻科を含む)において、福祉に関する所定の教科目及び単位を修めて卒業した後、介護等の業務に従事(在職期間:9か月以上、実働日数:135日以上)した人
1は特に実務経験ルートと呼ばれる、働きながら資格取得を目指す方向けの要件です。法改正では450時間以上の実務研修の受講が義務づけられる予定になっています。また、資格取得には別のルートもあり、養成施設(2年以上)に通えば卒業と同時に資格を取得できます。しかし、こちらも法改正によって2022年度からは国家試験の受験が義務づけられる予定です。
どういう人が介護福祉士を目指すのか
介護福祉士には女性が多く、受験者も8割が女性です。特に40代以上の方が介護業界に転職後、受験資格である在職期間を経てキャリアアップを目指し、受験されるようです。ですが、業界として特別に女性が必要とされているわけではありません。30代以下では、割合としては男性のほうが圧倒的に多いのです。
また、訪問介護員(ホームヘルパー)の場合は40代以上で82%を占め、60代以上に限れば30%以上にも上ります。逆に施設などで働く方は40代以下が大半です。介護の道を選び、社会貢献を志す若い人も少なくありません。
しかしながら、専門課程を修了できる学校の卒業者以外、例えば別業種から転職された方が受験する場合は3年間の実務経験が必要ですので、介護の現場で仕事をしながら試験勉強をしなければなりません。そのため、思うように時間を取れない方も大勢います。どの業種でもそうですが、キャリアアップのためにはきちんと時間を取るか、隙間時間を効率よく利用して勉強するしかないようです。
そこで翔泳社では時間の取れる方、取れない方に関わらず、介護福祉士を目指す方の想いに応えるため、『テキスト』『問題集』『一問一答』の3種類を刊行しています。
介護福祉士 完全合格テキスト/完全合格問題集/一問一答
福祉教科書 介護福祉士 完全合格テキスト 2016年度版
本書は、試験の出題範囲を完璧に網羅し、これ1冊を読み通せば合格には充分な実力をつけられるようにしています。章立ても出題範囲と重なるように構成し、出題数に応じて内容に厚みを持たせています。
目次
第1領域 人間と社会
第1章 人間の尊厳と自立
第2章 人間関係とコミュニケーション
第3章 社会の理解第2領域 介護
第4章 介護の基本
第5章 コミュニケーション技術
第6章 生活支援技術
第7章 介護過程第3領域 こころとからだのしくみ
第8章 発達と老化の理解
第9章 認知症の理解
第10章 障害の理解
第11章 こころとからだのしくみ
筆記試験では「第1領域 人間と社会」からは16問、「第2領域 介護」からは52問、「第3領域 こころとからだのしくみ」からは40問、そして総合問題が12問、合わせて120問が出題されます。おおよそ60%の得点が合格基準となっています。
巻頭にはカラーで、試験に出やすい社会・介護関連のデータを掲載。本文中では重要語句を赤字にして目立たせ、脚注による解説でより理解が捗るよう工夫しています。用語解説も充実しているので、学ぶべきこと、知りたいことをすべてカバーすることができます。
福祉教科書 介護福祉士 完全合格問題集 2016年度版
本書最大の特徴は、『完全合格テキスト』と章立てが連動していることにあります。テキストで学習したら、本書で問題を解き、いまの理解度を確認。そして分からないところをテキストで再び学習し、また問題を解くという流れが理想的です。
また、本書には科目別問題だけでなく、過去問題や模擬試験も掲載しています。全635問を繰り返し解き、正答率を上げることが合格へと繋がることは間違いありません。解説も豊富で、こちらも重要語句は赤字にしてあります。テキストと合わせれば、どの部分を重点的に覚えればいいのか一目瞭然です。
福祉教科書 介護福祉士 出る!出る! 一問一答 第2版
本書はテキストと問題集を補完する、ポケットタイプの一問一答型問題集です。テキスト・問題集は内容の充実を優先し大型本になっているため、持ち運びには少々不便です。電車の中や外出先でできた隙間時間を利用して学習するには、本書のサイズがぴったりです。
もちろん章立てはテキスト・問題集と連動。各章の冒頭には要点チェックポイントがまとめられていますので、すでにおおよその知識がある方は本書のみで理解度を確認するのもよいかもしれません。
介護福祉士を目指す方へ
今回紹介した福祉教科書シリーズ「介護福祉士」のテキスト、問題集、一問一答は、より多くの方が生きやすい社会を作りたいという志ある方を少しでもお手伝いしたいという想いから、毎年刊行しています。2年前から本シリーズの担当編集となった翔泳社の藤澤は、営業からの異動とあって初めはまったく介護業界のことを知りませんでしたが、いまでは前任者に匹敵するほど知識を持って制作しています。
どの本で勉強すればいいのか迷っている方に、その想いが伝わればと思います。