── イベント全体を通してマーケターが昔から実現したかったことが、現実にできるようになってきている点を強く感じました。
そうですね、まさにマーケターがやりたかったことが実現できる時代になりました。デジタル環境が一般化したことで、顧客のデータが収集できる時代になりました。また収集したデータを高速で処理できるツールも発達しています。モバイルも一般化している。これらの背景から従来の広告/マーケティング領域にテクノロジーを活用する流れが急速に進んです。
これまでは誰がいつどこで何をしたのか追跡ができませんでした。今は追跡ができる時代になりました。そして今後は誰がいつどこで何をするのか、いわゆる「予測」ができるようになってきます。データをより収集することで、予測の精度も高まっていくでしょう。こうした変化はまだ始まったばかりだが、急速に浸透していきます。
── 予測について教えてください。現状はどの程度まで取り組みが進んでいるのでしょうか。
すべての企業がパーソナライズ化を始めてくるでしょう。それは既にリテール領域では、先行して起こり始めています。リテール領域のマーケティングのトップランナーと言えば、Amazonでしょう。彼らはオンライン上のEコマースの顧客体験を高め、スマートなマーケティングを実行している。そのため、競合する企業はよりスマートなマーケティングを実現していかなければならない状態になっています。
一方で、BtoC向け企業のマーケティングはまだ取得できている顧客の情報が少ないため、本来の意味でのパーソナライズ化には程遠い状況です。そのため、全般的にBtoC業界ではソーシャルメディアを活用し、顧客との関係を構築することを始めていますね。
── ロレアルオーストラリアのデジタル担当から、機能を使いこなせていないという話がありました(参考記事)。
変化は始まったばかり。組織の面でも個人の面でも新しい環境には新しい考え方およびスキルが必要です。これまで企業は各領域の専門家を雇っていました。Eメールのエキスパート、モバイルのエキスパート、広告のエキスパートといった具合です。
こうした人材は、テクノロジーに対して見識があることが必要です。ただ、テクノロジーに対する見識の深さ以上にもっと重要な点は、顧客のジャーニーがどんなものなのか、そのジャーニーのライフサイクルがどのような仕組みになっているのか、そのジャーニーに対して効果的にマーケティングを実行するのは、どのようなビジネスプロセスが必要なのかを見抜く視点を持っていることでしょう。
キーノートで登壇頂いた私たちの顧客は、地道な取り組みを何年も続け今のような状況を作ってきました。現場のデジタルマーケターが改革を進めてきた例もあるし、トップダウンで改革を推進してきた例もあります。いずれにせよ日々変化が進行する中、待ったなしの状況であることは変わりありません。
── 日本への印象は。
私自身、日本市場のエキスパートではないですが何度か訪れたことはあります。そうした経験から申し上げると、欧米マーケットとの違いは明白です。例えば、CMOが定着していないなど組織のあり方が違います。もっとも大きな違いはテクノロジーの普及の仕方です。特にモバイル分野でのテクノロジーの普及はユニーク。LINEのようなサービスがいち早く立ち上がり、いち早く普及しています。ただ、国や文化が違っても顧客中心での取り組みが求められている点は共通だと思います。
── 今後についてはどう考えていますか。
様々なデバイスがネットワークでつながる、いわゆるIoT時代が到来することでユニークな製品がこれからどんどん出てくるでしょう。デバイスで言えばアップルウォッチ、サービスの面で言えばLINE、WeChat、WhatsAppなどが直近では挙げられます。次の変化がどうなるか確信は持てませんが、変化に対していち早くキャッチアップしていく姿勢を保ち続けることが大切です。私たちはアップルウォッチ向けのアプリもいち早く提供しています。新しいものを試験的に試し、顧客と一緒に動向を見ていく姿勢が重要な点は今も昔も変わりありません。