複数ジャンルの商品を購入してもらうための工夫とは?
内山:お客様側のニーズ、何が欲しいかといった観点の分析はどのように行っておられますか?
礒野:カタログ送付の際には、過去にお買い上げになったことのあるジャンルのカタログを最優先でお送りしています。我々にとっては、いかに別のジャンルも買っていただくかが大切なので、他のカタログも同梱したり、フォローのはがきをお送りしたりしています。ただ、何回かお送りしても購買行動がなければ、今後も買われない可能性が高いので、時系列で区切っています。そこからさらに、どのような方が買い回りしやすいか、カテゴリごとに商品の関連度分析などをSASで行っています。
ですが、いくら買い回りをしていただきたいからといって、メインの5ジャンル(アウター、インナー、ライフグッズ、メンズ、コスメ)全カタログを送付するのは、収益的に厳しい。そこで、2013年には各ジャンルの商品をピックアップした総合カタログを作成しました。もともと2ジャンル程度のカタログをお送りする予定だった方に対して、総合カタログをお送りし買い回りを増やすことを目指したわけです。
さらに、1000品中の約50品については値引きして巻頭に載せ、ページ構成も他ジャンルの商品を同じページに掲載する工夫をしました。例えばレディースのインナーを買う方はメンズのインナーも買う傾向が高いという知見があったので、男女のインナーを同じページに載せたりしました。
内山:顧客像としては、おそらく主婦の方で、ご自分のものを買いつつご家族の分も買っていくといったイメージのお客様ですね。
鳥塚:当社のお客様は、9割以上が女性です。まずはお客様ご本人の必要なものをお買い上げいただき、旦那様、お子さん向け、おじいちゃんおばあちゃん向け、というような買い回りができる戦略をとっています。
施策の実施には内部連携が重要、人材育成はじっくりと
内山:分析からここまでの施策に落とし込むには、顧客分析以外の部分でもご苦労があると思いますが、いかがでしょうか。
礒野:そうですね。当社の場合、アウター事業部、インナー事業部、ライフグッズ事業部と、カタログごとの事業部制が敷かれています。そのため、部署間の連携が必要でした。総合カタログに載せる商品にしても、担当部署によっては、売れ筋だから値引きしたくないといった事情もあります。
内山:データを分析して、売り方を導き出すまではシステムでできますが、具体的な施策を実施するため社内各部との調整がとても重要になるのですね。
礒野:新しい媒体を作るわけなので、人手も必要ですね。私どもの部署だと、どうしても商品知識が弱いため、商品の各担当部署の手を借りながら進めています。
内山:分析やマーケティングの体制や人材育成はどうされていますか?
鳥塚:元は1つのマーケティング部隊が、全ての商品ジャンルのマーケティングを行っていたのですが、2015年1月からは組織が変わり、ジャンルごとにマーケティング分析担当が配置されています。
礒野:人材育成については、分析を少しずつ確実に学んでもらっています。これは当社の特徴かもしれませんが、新卒・中途採用にかかわらず、コンピューターになじみの薄い人が多いんです(笑)。服や雑貨を作りたいとか、カタログの誌面を作るのが好き、という人が圧倒的。ですがジョブローテーションなどで、そのような志向の社員も我々の部隊に配属されるわけです。
ですから、まずはグラフなどのビジュアルを交えて売上等の数値感覚を身につけ、次に過去の購買履歴や年齢などの顧客属性を扱えるようになる。そして、セグメントを作成して施策を実施する。このように段階を経て、顧客分析になじんでいくわけです。
礒野:より高いビジネス成果を生み出すための顧客分析には、ある程度統計的な観点や分析ノウハウが必要ですが、そのための教師が不足しているのが正直なところです。そこはSASのコンサルタントから他社の事例や分析手法を紹介してもらえるので、その中から、我々のビジネスに活用できそうなものを重点的に教えてもらい、施策に展開しています。
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