複雑・複数のキャンペーンを「最適化する」発想が重要
MarkeZine編集部(以下、MZ):エクスペリアンのマーケティングソリューションは、これまでにも「Cross-Channel Marketing Platform(CCMP)」などを取材していますが、今回はグローバルではすでに浸透しつつある「最適化分析」という考え方、そしてそのツールについて、うかがいたいと思います。Experianのバーチさんは、この領域で非常に経験が厚いと聞きました。簡単にご経歴をうかがえますか?
バーチ:Experianに所属して、16年になります。当社の最適化分析ツール「Marketswitch Optimization」には、専門的に携わってもう10年になりますね。英国以外にもさまざまな国の企業へ、ツールの導入とコンサルティングを行っています。
MZ:「Marketswitch Optimization」は、10年も前から展開されているんですね。
バーチ:正確には、1999年に誕生しているので、もっと前ですね。数学者とビジネスリーダーが国を越えて協力して、数学的なアプローチでビジネスの成果を上げられないかを追求したことが契機です。以降ももちろん、常にアルゴリズムをブラッシュアップしています。アプローチ回数の上限など企業ごとのルールに基づいて、企業の有する顧客データベースを高度なアルゴリズムで分析することで、誰にどのようなオファー(商品/サービス)を提供するのが最適なのかを精緻に推測するのが「Marketswitch Optimization」です。
一人に数多くのキャンペーンをアプローチすると逆効果
MZ:「最適化分析ツール」というのはまだ日本ではなじみが薄いですが、特に有効な業界などはあるのですか?
バーチ:このツールはフレキシブルにさまざまな使い方ができるので、多くの業種で使えると思います。実際に私が直接担当している企業でも、銀行や生命保険などの金融から、通信、メディアまで業種は多岐にわたります。別の軸で、どういう企業に有効かというと、常時たくさんのキャンペーンやメッセージを多くの顧客に対して展開しているような企業です。顧客一人ひとりに最適なメッセージと最適なチャネルでコミュニケーションを行うにはどうすればよいのかを追求する、その点では、顧客数やサービスの種類が多い業種が多いですね。(図1)
MZ:確かに、銀行や通信キャリアなどは、さまざまな顧客へいろいろなキャンペーンを展開していますね。具体的に、最適化というのはどのような意味合いなのでしょうか。
バーチ:ここでの最適化には、いくつかの意味があります。まずは、予算の最適化。それから、一人の顧客が受け取るオファーの量の最適化。数学的な意思決定プロセスを最適化に適用することで、最小限の投資で、一人の顧客から最大限のリターンを見込めるようになる、つまりROIが最大化できるということなんです。
例えば、企業の希望としては、予算の許す限り一人の顧客にたくさんキャンペーンをアプローチして、多くのリターンを得たいですよね。でも、当然ながら、現代に生きる皆さんは忙しい。そんなにたくさんのオファーを受けては、逆効果です。「Marketswitch Optimization」 によって、顧客に最も関連のあるオファーを提供することができるようになるため、カスタマーエクスペリエンスが最大化され、企業にとっても顧客の価値が上がるのです。