テレビを見て「あれ、どこで買えるんだろう」
有園:「この俳優が身につけているネクタイ、かっこいいな」なんて気になることが、たまにあります。ブランドや、どこで売っているかがわかる。そういうことが、すでに始まっているんですか。
薄井:はい。基本的に運用としてはできる状態になっています。あとは、テレビ局側の考えに応じて情報の出し分けがされます。
有園:現状、俳優の着ている服などについては出ていないわけですね。それってけっこう可能性があると思います。昔、トレンディドラマを観ていた世代としては「このソファいいな」と思っても、それがどこで売っているかわからなかった。そういったソファが「IKEAで売っている」などわかる。テレビ局側としても、頻繁に視聴者がスマホなどの画面に行かれては困ると思うので、いまは慎重に進めていらっしゃるのでしょうかね。
薄井:これは番組単位での特性やポリシーが異なると思います。ドラマなどの専念視聴型コンテンツもあれば、朝の情報番組は身支度をしながらのながら視聴型番組もあり、それぞれでネットやデバイス連携の有効手段は変わってきます。
アプリとCMの連動で、新たな収入機会を創出するテレビ局
薄井:「ぶぶたす」が秀逸なのは、CMとの連動機能も備えていることです。例えば、番組でCMがオンエア中に、「ぶぶたす」アプリで当該CMの内容がスマホの画面いっぱいに最大化し、色が変わったり点滅します。ユーザーが思わずタップすると、広告主のランディングページに遷移してキャンペーンに参加できたり、新商品のサンプリングに応募できたりします。当然ながら、その申込みに際し、視聴者の属性情報も取得でき、操作(視聴)ログと共にユーザーの視聴傾向や嗜好性などがデータ解析できるようになります。
広告主にとっては、テレビのリーチ力やブランディング効果に加え、スマホアプリを通して獲得型のパフォーマンスやコンバージョン効果が狙えます。加えて、視聴者の解析やマーケティング施策の効果分析までできるメリットがあります。まさに「放送と通信の連携」による新たなクロスチャネルマーケティングモデルです。
一方でテレビ局は、テレビ受像機以外にスマホ画面に広告枠を広げ、収入機会を創出できます。その意味でも、「ぶぶたす」アプリを開発したTBSのご担当者は、革新的発想とそれを実現する開発力、推進力に優れており、秀逸な取組みと感じる理由です。
有園:あと、私が知っている限りでは、テレビメタデータは、ソニーや東芝などのテレビ・レコーダーなどにも導入されていますよね。テレビ・レコーダーをインターネットとつなぐことでテレビメタデータが連携され、その番組が何時何分に、どういう話題で、どういうタレントが出て、何を話していたかインデックス情報を取得して、それにあわせ見たいシーンやCMを視聴できるようになるわけですよね。
薄井:キーワードでのシーンやCMの検索・再生だけでなく、各テレビメーカーのテレビアプリからの操作性の向上やそこからのEC連動、番組やCMに関するリサーチやポイント連携、レコメンドやSNS連携、更にはVODやネットでのテレビコンテンツを配信するキャッチアップサービスなどにも有効活用されます。
特にネットを介して取得されるログ解析で、ユーザー属性や視聴特性を踏まえ、スマートデバイスからのシーン再生の際にCMを差し込んだり、そのCMをターゲティングして当てる手法にもテレビメタデータが有効に機能すると考えており、その構想も進めています。
有園:そうなってくるとマーケティングの可能性が広がりますね。ところで、梅田さんが所属するライフログ総合研究所では、どのような活動をされているのでしょうか。
梅田:ライフログ総合研究所はエム・データが母体です。エム・データは、テレビメタデータ、テレビストリームをテキストで記録していて、そのデータをもっている会社です。それ以外の、特に視聴者から発生する活動記録とテレビのストリーム情報を掛け合わせて、何が見えるのかを考えていくのがライフログ総合研究所の仕事です。
もともと、エム・データは、クライアントからテレビのデータを使って「こういうことはできませんか」といった、ご依頼をよくいただいていたんです。ある程度、同じような依頼や課題があり、データを整理して、依頼内容や課題内容に応えることをコンサルティングとして個別に対応してきました。