テレビメタデータを糸口に、マーケティング課題を解決する
梅田:今回、私たちはダッシュボード「TV Rank」を開発し、テレビメタデータをマーケティングの課題解決に活用できるよう整理しました。これまで、世の中一般的にテレビメタデータは存在も含めて認知されておらず、利用もされてきませんでした。それが利用できるようにならないかと考えたのが「TV Rank」です。
テレビには番組視聴率というデータがあります。視聴率は、テレビで放送された番組を、どのくらいの人が観ていたかというデータですが、情報の単位は番組です。我々は、デジタルマーケティングで使われているような、ワード単位で露出状況をまとめ、カテゴリごとにテレビで放送されたワードのランキング情報が「TV Rank」です。CM放送企業名だけでなく、商品名でのランキング算出も可能で、業界カテゴリ、タレント、商品カテゴリなどでも集計できます。今後は番組データにも対応し、トレンドワードや人物、企業名、商品名、事象なども対応していきたいと考えています。

2015年1月1日から6月30日までの、関東地区で放送されたテレビコマーシャルの企業別ランキング。1位は花王で、約6か月間で約28万秒、CM本数は約1万6千本だった。
梅田:このTV Rankのスタンダード版に対し、「TV Rank Pro」というプロ版もあります。これは全部カスタマイズ型で考えています。我々が持っているのがテレビCMの放送データで、ここに、番組データや広告の視聴データ、検索とSNS、ブログとTwitter、売り上げのPOSのデータ、Googleアナリティクスのデータを入れたり、他にデータはなんでもインポートできます。これを何で見るのかっていうところからコンサルティングが必要で、マーケティングのPDCAをハイスピード化する領域になります。

有園:データを入れるというのは、たとえば広告主が、売り上げのPOSデータを購入していて、それをここに投入するってイメージでしょうか。これがダッシュボードとして使えますよってことですか。御社で、たとえば、検索データとSNSデータなどを持っているわけではないのでしょうか。
梅田:ダッシュボードとして使えるようになりますが、全てのデータソースを保有しているわけではありません。ただ、テレビメタデータをソーシャルリスニングツールに提供させていただいたり、その他にもデータを提供している様々なパートナーと協業しているので、データ連携が可能です。これはクライアント企業がついている前提での話ですので、クライアント企業のファーストパーティデータを含め、クライアントの希望条件次第で、どのパートナー企業のどのデータを利用するかを使いわけするのが、実際の展開になるかなって思います。
テレビとネットの相乗効果を作っていく
有園:テレビの力が弱くなっているといわれるなかで、ソーシャル動画などを使ってリーチを補完するような動きが、ここ何年か出てきています。「忍者女子高生」とかが流行ったりして。ネットで広がっただけでは一部で流行っている感じにしかなりません。感覚的な問題ですが、ネットで始まった情報がテレビでも取り上げられて、それがさらにネットで拡散して、リーチをドライブしていく。
梅田:「アナと雪の女王」なんかは、まさにそうでした。テレビって、パッシブなものです。自分で録画したりはできますが、アクティブな人ってタイムシフトしてしまったり。意外とリアルタイムに同時に見るっていうのは、パッシブな態度で見ていて、本来はそれに興味がなかったけれど見てしまったというのが多いのではないかと感じます。キャズムも何段階かあるなかで、最後はどれだけマジョリティにリーチして、自分たちのファンにするか。そこがテレビにあるかなって思います。ある特定の人だけに分かってもらえればいいってケースは、もしかしたらテレビは弱いかもしれません。でも、その展開が二次、三次、四次と波及していくとき、テレビが介在せずにそこまでいくのは難しいのではないかなと思います。
有園:3,000GRPテレビCMを流しても、全部が盛り上がるわけではありません。そうなると、必ずしも3,000GRP打てばいいってわけでもない。ここの連携をとりながらやっていくというプランニングをしないといけない。そういう意味では、今後の新たなプランニングに活用できるような可能性がすごくあると思います。同じGRPを打っていてもバズが発生するもの、しないもの、同じようにテレビが取り上げてくれてもヒットするもの、しないものがあります。そうすると、ヒットするものとしないものの違いをきちんと分析することが必要になってきます。
ネットフリックスの「ハウス・オブ・カード」など、タグをいっぱい入れて分析しているらしい。御社がやっていることもテレビ番組にタグをつけているようなことです。番組の中でどんな話題があり、どんなタレントが出ているか。いろいろな軸で分析ができることは、どういう番組が誰にうけて、どのくらいSNSで拡散するかなどを分析して、新しい番組を作っていくような時代になっていくということです。
2020年にはスマートテレビが普及するといわれており、ネットとテレビがつながり、テレビ視聴履歴のデータをインターネット経由でサーバーに蓄積することができるようになるかもしれない。今は視聴動向といっても、放送局は視聴率を秒単位で追いながら一喜一憂していますが、見ていたのは20代の男性なのか50代の男性なのかは基本的にとれていないし、そこで何を言ったのかもとっていません。ネットとつながることによって、そういうところが、もっと細かくとれるようになるといいなって思っています。
薄井:放送と通信の融合という言葉がありますが、テレビとネットの相乗効果を作っていきたいと思っています。VODのように視聴オーディエンスをインサイトできるようなログが活用できるようになり始めています。視聴者属性や視聴行動、視聴傾向や嗜好性をクラスターとして分析できるようになります。
有園:すでにコネクティッドな(インターネットに繋がった)テレビが一部では出回っているから、御社にもデータが集まってきているわけですね。
薄井:視聴者パネルのデータを保有する企業においては、属性と視聴ログを掛け合わせ、DMPなどと連携することにより拡張オーディエンスにつなげられます。
有園:拡張オーディエンスというのは、ネット業界でいうルックアライクのことですね。
薄井:はい。テレビに同期した連動型広告での相乗効果が、まさにテレビメタデータをトリガーにして実現していくだろうというのが考えです。テレビメタデータを基点に、テレビ連動型のDSPを実現すべく、DSP企業との協業やDMP接続の検討を進めています。
有園:今後がとても楽しみですね。きょうは、ありがとうございました。
本記事は「Unyoo.JP」の記事『急成長するtheTradeDesk、日本始動』を要約・編集したものです。長編のオリジナルコンテンツを読みたい方は、こちらをご覧ください!