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様々なデータを統合して、自社IDを生成、管理。AdTruthが提案するオーディエンス価値の向上とは?

 スマートフォンでのブラウザ訪問とアプリ訪問で同じデバイスを検出し、同一ユーザーを推定する技術、AdTruth DeviceInsight。2010年のリリース後、国内ではYahoo! JAPANやCyberZ、アドウェイズなど導入企業が増えている。2015年4月、41st Parameter社は企業が有するID群をすべてつなげられるデータリンケージシステム、AdTruth Resolve(アドトゥルース レゾルブ)を新たにリリースした。その有用性について、同社のHead of AdTruth, Japan、鳥井武志氏と、国内第1号の導入企業となった株式会社インタースペースのシステム企画部 副部長、日向瑞貴氏に話をうかがった。

金融サービスでの不正検知システムの知見を広告領域へ

MarkeZine編集部(以下、MZ):今、生活者はさまざまなデバイスを自由自在に使いこなし、その流れの中で一貫したサービスを受けたいという潜在ニーズも高まっています。こうした状況に対応できるのが、AdTruthの技術だと認識していますが、まずは先行して展開されているAdTruth DeviceInsight(以下、DeviceInsight)の特長を教えていただけますか?

左:株式会社インタースペース システム企画開発部 副部長 日向(ひなた)瑞貴氏
右:41st Parameter社 Head of AdTruth, Japan 鳥井武志氏

鳥井:DeviceInsightは、デバイスの持つ情報を統計的アルゴリズムで処理して、ユーザーが使っているデバイスを推定し、IDを生成する技術です。

 例えばスマートフォンが一般化した今、よく課題となっているのは、ブラウザとアプリをまたぐと、同じユーザーでも別々にしか認識できないことですね。DeviceInsightは、プライバシー情報やデバイス識別情報を取得せずに、同じユーザーだと検出することができます。

MZ:41st Parameterでは、どういった背景からDeviceInsightの開発にいたったのですか?

鳥井:2004年に米国で設立した当社は、元々は金融サービス向けに、不正なカード利用やアカウント乗っ取りなどを見つけるオンライン不正検知システムを提供していました。ここで培ったアルゴリズムと知見を、個人情報を使わないデバイス推定の技術に反映させて、広告マーケティング向け事業を開始しました。2010年のことですね。

あらゆるID情報を結びつけるAdTruth Resolve

MZ:金融領域での不正検知という、かなりクリティカルな部分で企業のサポートをされてきたのですね。DeviceInsightは、どのような事業者に導入されていますか?

鳥井:アドネットワーク、パブリッシャー、アプリなど、デジタルマーケティング事業を行う企業が中心です。国内外で、大手企業を含めてすでに多数のネットサービス事業者に使っていただいています。ちなみに当社は、2013年にExperianの傘下となり、今ますますグローバル展開を拡大させているところです。

MZ:では、リリースされたAdTruth Resolve(以下、Resolve)について、詳しく教えていただけますか?

鳥井:Resolveは、ひと言でいうとデータのリンケージシステムです。DeviceInsightでは、同一デバイスにAdTruth独自のIDとしてDeviceInsight ID(以下、DI ID)を付与し、その情報を導入企業が管理・活用しています。ただ、多くの企業では元々、ログインIDやCookie、IDFAといったさまざまな情報を保有しており、その管理や同一性の検出がとても困難な状況でした。

 ならば、これらをすべてつなげられるリンケージシステムを開発し、DI IDも含めてまとめて整理できるようにしようと考えたのです。これにより、ユーザーを高度に可視化することが可能になります。

データをどうつなげるか、ルール設定こそ重要

MZ:なるほど。デバイスをまたいでサイトやアプリにアクセスするユーザーを、精度高く「同じユーザーだ」と検出できれば、その行動に合わせたコンテンツ提供や広告配信ができますよね。

鳥井:ええ。Resolveでは、デバイスやOS環境に依存せず、デジタルユーザーを単一のマスターIDに集約します。結果、高いエンゲージメント効果が見込めますし、コスト削減にもなります。

 加えて、自社でログインIDを持たない企業では、FacebookやApple、Googleなど第三者のプラットフォーマーが提供するIDにユーザーIDを委ねるケースが多いですが、これらプラットフォーマーの挙動に左右されるリスクも高い。自社内にデータリンケージシステムを持つことは、この課題からも求められていました。

MZ:どういった仕組みで、マスターIDの生成が可能になるのですか?

鳥井:複数のトラフィックとそこに振られた各種IDを照合し、穴を埋めていく形で同一ユーザーを特定します。例えば最初のトラフィックで、CookieとIPアドレスとDI IDが付与されていたら、次のトラフィックでどれかが抜けていても同一ユーザーだと分かりますよね。この比べ方や優先順位の付け方が、企業ごとに違うので、それをルールとして導き出します。ユーザーの特性を加味して、データをリンケージするルールをうまく作ることが重要です。

インタースペース、アフィリエイト事業にResolve導入

MZ:では、ここからは導入企業の生の声をうかがいたいと思います。アフィリエイト事業を中心に展開するインタースペースは、Resolveの国内導入第一号の企業となったそうですが、まずは導入前の課題を教えていただけますか?

日向:まさに鳥井さんが言われたように、自社内のID情報をつなげられていないことが課題でした。背景にあるのは、やはりスマートフォンの台頭と、データのフラグメンテーション(断片化)です。ユーザートラッキングにはCookieを使っていましたが、正直、どこまで抜けがあるのかも検証できていませんでした。

MZ:どういった点がResolveを導入された決め手になりましたか?

日向:元々、先に挙げた課題から、今後は非Cookieが重要なトラッキングシステムになると思っていました。合わせて、鳥井さんとは以前からご縁があり、AdTruthの技術についてもうかがっていたのでメリットは分かっていたんです。ただ、自社で導入したときにシステム面やルール設計などをどうすればいいか、あまりイメージできていませんでした。

 今回、AdTruthのソリューション導入を決めたのは、ひとつはResolveが登場したことが大きいです。自社でIDを統合し、どのような展開ができるかを具体的に描けました。加えて、導入前のノウハウがない状態だと目的意識を固めにくいところがありますが、鳥井さんと何度もお話する中で明確になり、信頼関係ができたことも決め手のひとつですね。

正しく健全な成果を広告主とメディアに提供する

MZ:どのように活用されていく予定ですか?

日向:今、テスト導入を進めているのは、主軸であるアフィリエイト事業です。まずは一定期間、データを連携してResolveを運用し、可視化できていなかったユーザー行動のデータがどの程度あるのかをまずは把握したいと思います。

 Cookieが使えない場合に、どれだけ正しく健全な成果を広告主やメディアに提供できるかは、当社のシステムの品質にかかわります。なので、そういったところを補完したい意図がいちばんですね。ユーザーが特定できると、それだけ適正な広告評価が可能になり、正しいメディア評価を元にした広告運用が出来るので、ID情報を統合し管理できるResolveには期待しています。

MZ:これから、可視化できていなかったユーザーの状況もどんどん明らかになりそうですね。

鳥井:そうしていきます。例えば海外のResolve導入事例では、導入前はトラフィックのあるユーザーの4割が匿名状態でしたが、導入後にはそれが3割に減りました。全体の1割のユーザーを、新たに可視化できたのです。

 成果を上げるには、やはりユーザーの一致を検出するためのルールづくりが大事になりますね。これは企業からお預かりするデータによっても異なるので、基本的に当社でアドバイスしてプリセットし、運用開始後もチューニングのサポートをしていきます。今後は企業内でも簡単にチューニングができる管理画面の提供も予定しています。

Cookieに依存しないトラッキングがスタンダードに

MZ:ユーザーの特定には、以前はCookieを活用するのが主流だったかと思います。今、この風潮は変わりつつあるのでしょうか?

鳥井:そう思います。3年ほど前から、Cookieでは完璧なユーザー特定はできないという認識が広がり始めました。当時はまだ、スマートフォンのトラフィックが全体の3割程度だったと思います。今では、スマホのトラフィックも半分を越えるくらいになりますが、このCookieの抜けを回避するのに、第三者のプラットフォーマーのIDを使うことでなんとか対応しているという状況ですね。これに対して、Resolveは確実な解決策になると思います。

MZ:Cookieに依存しないトラッキングが、これからスタンダードになりそうですね。では、今後の展望をそれぞれ教えてください。

日向:今まさに、鳥井さんの手厚いサポートをいただきながら、近日中にインパクトの想定値が出せるよう動いているところです。当社としては、当初目的のトラッキングできていないユーザー行動の可視化にまず取り組んで、広告主やメディアへのサービス向上に努めていきます。

鳥井:データのフラグメンテーションは、ネットビジネスを展開するほぼすべての企業が悩まれているところです。Resolveの導入実績を重ねながら、より多くの企業に知っていただき、支援するのが当面の目標です。

MZ:スマートフォンの台頭をきっかけに、データのフラグメンテーションが課題となる企業が増えています。その中でAdTruth Resolveが課題解決の一手となることができれば、デバイス特定に新たな変化が起きそうですね。そして、インタースペースの国内初導入がそのモデルケースとなることを期待しています。ありがとうございました。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2015/11/24 08:00 https://markezine.jp/article/detail/23288