事業会社が語るMA運用の実状
MarkeZine Day 2015 Autumnでは、近年のマーケティングオートメーション(以下、MA)領域への熱い関心を反映し、同領域に関連したセッションが多く展開された。今回レポートするのは、その中でも「事業会社に聞く『マーケティングオートメーションの実際。効果の出るシナリオはどう作る、どう運用する?」と題されたパネルセッション。モデレーターもパネラーも事業会社で構成され、MA運用の実践状況がリアルに語られたセッションだ。
モデレーターを務める中澤氏はITベンダーなどを経て中古車売買のガリバーインターナショナルに参画、デジタルコミュニケーションチームを率いており、「今まさにMAを研究中」だという。
中澤氏は冒頭「MAの定義も企業によってさまざまかと思いますが、本セッションでは『最適なコンテンツを、最適なチャネル、最適なタイミングで、個々の顧客へのコミュニケーションを自動化すること』と定義します。MAツールを入れているかというよりも、この要件をどう満たそうとしているかを今日は聞いていきたい」と切り出した。
「顧客DBは統一、システムはサービス別」のリクルート
渡部氏はリクルートライフスタイルでCRMおよびコンテンツを統括し、同時にリクルートホールディングスの全社CRM推進室室長を務める人物。元々なかったCRM関連部署を立ち上げ、現在さまざまな取り組みを進めているという。
リクルートは日常消費系から、ライフイベントにまつわるサービスまで、幅広いwebサイトを展開。後者は一生に何度かしか接触しないため、これまではサービスごとにユーザーを分けて捉えていた。しかしリクルート全体で見れば、同じ一人の人が飲食や買い物をし、結婚や住宅購入をするかもしれない。
「これは一人格ではないかと考えるようになりました。そこで顧客DBを一元化し、IDやポイントを共通基盤で管理するように方針を転換。各サイトの運営は、それぞれの担当が使いやすいようにシステムを構築しているので、サイトは縦割、ユーザー管理は横串を通している形です」と渡部氏は語る。
ただし、「デジタルで事業を進めること自体にこだわっているわけではないんです」と渡部氏。同社の場合、シンプルに“最適な人に最適なタイミングで最適なコンテンツを提供する”ことをポリシーとして、それに必要な手段を講じている状況だという。
顧客IDとポイントを統一した今、例えば『SUUMO』で成約したユーザーにまとまったポイントを付与し、『ポンパレ』で新生活の買い物を促すなどの取り組みを行っているが、この特典はあえて紙で郵送している。
「WebでURLを送れば済みますが、シズル感が重要だと思うので。一方で、当然ですが最適なコンテンツをというと手動の運用は限界。結果、機械学習やOne to Oneマーケティング機能を取り入れています」(渡部氏)