『HOME'S』の“接客力”を高めたネクスト
一方、不動産・住宅情報サイト『HOME'S』を運営するネクストからは菅野勇太氏より、顧客管理の現状が紹介された。同社は不動産会社向けのBtoB、一般ユーザー向けのBtoCの双方で事業を展開するが、菅野氏はBtoC領域を担当。3年前に、国内企業で初めてMAツールのレスポンシス導入を指揮し、現在も運用を統括している。
同社は早い段階からOne to Oneマーケティングに取り組み、データベースの構築と、その中から一人ひとりにぴったりな情報を提供する技術をコアコンピタンスとしてきた。問い合わせ、来店、成約とユーザーのカスタマージャーニーが進行する中で、プライベートDMPを核としてメール配信や広告配信などを自動化している。
MAツールをいち早く導入したのは、「当時の“客待ち”のマーケティング体質を変えるため」と菅野氏。一般的に物件探しをする際、利用者は複数サイトを閲覧する。そのため、同社も初回訪問ユーザーの再来訪をリターゲティングなどで促していたが、サービスがコモディティ化し、また競争の激化に伴い広告単価も高騰していった。
「リタゲもそれなりに最適化していましたが、それだけでは限界があります。そこで、顧客の流出を防ぐ“接客力”で勝負しようと考えて、低コストで使えるメールからMAを取り入れました」と菅野氏。現在は、カスタマージャーニーを元にステージを分けて、ステップメールのシナリオを作成。各ユーザーに合わせ、そのタイミングを捉える積極的なマーケティングを展開している。
メール、広告配信、Web最適化など複数の施策に取り組む両社だが、いずれもひとつのMAツールをプラットフォームにしているわけではない。現場の使い勝手を第一に、自社開発を含めて、複数のツールを使い分けているという。
事業のゴールにつながるKPIの見つけ方
実際のKPIと成果について『HOME'S』では、問い合わせ数の増加が売上増に連動しているため、問い合わせ数や申し込み意向をKPIに設定している。シナリオメールの自動配信を開始してから、配信したメール経由での問い合わせ数が年々増加。MAツール導入前の年と導入年では実数ベースで3~4倍、その後も施策のチューニングによって前年同月比で数十%は増えている状況だ。

「メールの最適化によって、リタゲで競り負け機会損失となっていた見込み客へのアプローチができ、2回目以降の問合せに繋がったと思います」(菅野氏)
リクルートライフスタイルでも、一連の施策に手応えを得ている。KPIは「ROIをクリアしていることが前提の“アクション数”」と設定。ECなら購買件数、美容院などなら予約数だ。
ROIクリアという前提について、渡部氏は「セグメントを細かくすれば反応率は上がるので、ROIは高くなりますが、細かいほどボリュームは少なくなります。ROIを追求したいのではなく、求めたいのはボリュームなので、ROIは一定ラインを超えたらもう追わず、アクション数を追っています」と説明する。