日本の課題は「匿名のままでいたい」ユーザーが多いこと
数々のグローバル企業に導入されているの理由としては、多言語対応が万全であることも大きい。ソニーは300以上のアーティストの個別ページに対して、40カ国の言語でサイトを稼動している。また、今や世界中にユーザーがいるTwitterやPinterestでもDrupalは採用されている。
Peterson氏は続けて「Drupalを通して制作された日本語のサイトも、いくつも見ることができます。言語はもちろんですが、ここでお話ししたいのは、今やマーケティングにおいては必須ともいえる“パーソナライズ”についてです。おそらくほとんどの企業がまだ、趣味趣向の異なるさまざまなユーザーを一律に扱っているのではないでしょうか?」と投げかけた。
一人ひとりのユーザーとしっかりエンゲージメントを築くためには、それぞれの個性を把握し、適切なメッセージを適切なユーザーへ、適切なタイミングで発信する必要がある。しかしPeterson氏は、日本特有の課題として「日本のオーディエンスは『匿名のままでいたい』という人が非常に多い」と指摘。匿名性を気にせず、バナー広告も気軽にクリックするグローバルの傾向と比較して、クリックによる追跡を避けているからか、日本のネットユーザーは実に4割が「バナー広告を一度もクリックしない」という。
「統合カスタマープロファイルセンター」が顧客を明らかに
「企業にとって、行動データの取得はユーザー理解のために重要ですが、そこにハードルがある。日本では『自分がターゲットにされている』と感じさせずに、つながりをつくる必要があるのです。これを、Drupalでは“オープンマーケティングアプローチ”によって実現します」(Peterson氏)。
具体的には、Acquiaが提供するDrupal上の「統合カスタマープロファイルセンター」に、ユーザーの利用デバイスや接触時刻といった自動的に取得できるデータや、行動データだけでなく、ユーザーの属性やECの購買履歴などの企業独自の1stパーティデータが蓄積される。さらにここには、Googleアナリティクスなどの各種分析ツールからの情報や、セールスフォースなどのCRM、そしてソーシャルといった3rdパーティデータも随時入ってくる。こうしたある種のオープンデータは、「いつでもどれだけ使っても大丈夫」だとPeterson氏は語る。
「このように、さまざまなデータを活用して統合したカスタマープロファイルをつくり上げることで、無理にアクションさせずに匿名ユーザーをパーソナルに理解して、適切なメッセージを展開することができます」(Peterson氏)。
加えてPeterson氏は、Drupalが顧客を理解する基盤として企業のマーケティングの中心に位置づけられることで、社内でサイロ化し分断していた活動を統合できる可能性も示唆した。極めてユニークなプラットフォーム、Drupalのビジネス活用に関するセミナーは今後も続く予定。日本企業の充実した導入事例が待たれるところだ。