メールでのCV数は140%向上、顧客の反応にも変化
メールには人の存在を感じさせるといいつつも、GDOクラブ会員は280万人を越え、提携ゴルフ場は2,000コース以上、取扱商品は新品中古合わせて約12万点にも上る。それぞれに合わせたメール配信となれば、データベースを活用した効率化は不可欠だ。
「購買や予約等のイベントドリブン系はログやトランザクションなどのデータを活用して自動化しています。Marketing Cloudがデータウェアハウスと連携し、様々なフラグで抽出したリストを一元的に管理しています。シナリオを組み立てて、それに合致する方をデータやフラグでリストアップし配信するのです」(志賀氏)
シナリオには要件定義書があり、オンタイムで配信されているメールの一覧が共有・管理されている。各事業部の担当者が月に2~3本のコンテンツやシナリオの作成・改修を行い、全体のコントロールを大山氏が担う。
「部門に全てを任せると重複や過剰配信が生じやすいので、テクノロジーの力も借りながら適量に調整しています」(大山氏)
もちろん、初めから円滑だったわけではない。売り上げ目標を持つ事業部はどうしても多くの配信を望みがちだ。そのため当初は衝突もあった。その際に、フィジビリティスタディの結果を見せることで、適切な議論ができるようになったという。現在も仮説を立てて検証し、調整するというスタイルを踏襲し、メールチャネルのCV数はMarketing Cloud導入前の約140%に向上。ゴルフ場予約の約1割、物販では3割を担うチャネルだけに、そのインパクトは大きい。
活動による効果は数値だけでなく、コールセンターに寄せられる声など定性的な面にも変化があるという。「メール担当者への好意的なコメントを毎日のようにいただいています。これも接客としてのメールが、多くのお客様に深く受け入れられていることの表れと認識しています」(大山氏)
メールで実現できることがまだまだある
確実に関係構築ができているGDOのメール施策だが、今後は部門やチャネルの統合を実現し、一層のシナジー効果をあげることが目標だという。
「現在、メールのシナリオとサイト内のレコメンドをつなげようとしている段階。サイト外の店舗や広告媒体等との連携は先になるでしょう。ですが、お客様の視点に立てば、店舗とサイトで同じ人からサービスを受けられたら快適でしょう。ですから、せめて顧客情報の連携だけは早く実現したいですね」(志賀氏)
「リアルタイムのコミュニケーションを充実させるなど、取り組みたいことは沢山。もちろんオムニチャネルも意識すべきですが、大きな絵を描くばかりで中がスカスカでは意味がないでしょう。お客様のことを考えたコンテンツを提供しながら、足下を踏み固めつつ進めて行きたいです」(大山氏)
現在、メールだけでなくWebやソーシャル、モバイルアプリやLINEなど、マルチチャネルへの対応が求められている。それらへの活用が可能なMarketing Cloudを用いながら、同社はさらに「楽しいゴルフライフ」の実現を目指す。
カスタマージャーニー研究プロジェクトチームのコメント
加藤: マーケティングオートメーションのシナリオをどうつくるか、どの技術を採用するかという点に意識が集中する傾向がありますが、デジタルでも結局は「人」ありきなのだと思います。GDOさんの場合はあくまでも「お客様ありき」という顧客理念から始っているので、成果に結びついているのだと感じるインタビューでした。
押久保: 「カスタマージャーニーを可視化したい」。近年そういった声を多く耳にする機会が増えましたが、言うは易し行うは難し。実際には、複雑かつ難易度が高い取り組みであるのは間違いありません。これまでの取材でも、現場で多くのマーケターが試行錯誤をしている様を見聞きしてきました。そういった状況の中、「お客様体験デザイン本部=CXD」という部署をいち早く設置し、お客様視点に立って業務を推進する体制を整えたGDOさんの取り組みには、見習うべき点が多いのではないでしょうか。
カスタマージャーニー研究プロジェクトとは?
「カスタマージャーニー」、顧客の一連のブランド体験を旅 に例えた言葉。デジタルやリアルの接点が交差し、顧客の行動が複雑化する中、「真の顧客視点」に立って、マーケティングを実践する重要性が増してきました。
カスタマージャーニーに基づいたマーケティングの必要性は、その認知が進む一方で、「きちんと“顧客視点に基づいたシナリオ”を作成し、運用できている企業はまだまだ少ない」多くのマーケターに意見を聞くと、そのように認識されています。
今回、押久保率いるMarkeZine編集部とセールスフォース・ドットコム マーケティングティングディレクターとして、各企業とジャーニーを研究してきた加藤希尊氏を中心に、共同でカスタマージャーニー研究プロジェクトを立ち上げました。本プロジェクトでは、「顧客視点のマーケティング」における成功例を取り上げ、様々なアプローチ方法をご紹介していきます。
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