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Yahoo!広告活用の今を追う(AD)

アプリのマーケティングもROASベースで! 急速拡大中の市場で成果を上げる発想の転換とは

 スマートフォン版やアプリ版Yahoo! JAPANトップページの刷新、それに伴う広告ソリューションのリニューアルと、近年まさにドラスティックな変革を続けているYahoo! JAPANによる本連載。今回は、Webに比べて効果測定や行動分析、データ活用にかなり遅れをとっているといわれる、アプリのマーケティングに注目。米国発で世界において成長を続け、日本でも昨年より本格展開し急成長しているAppLovinの坂本達夫氏をゲストに、アプリマーケティングの課題と打開策について話し合った(※本記事内容は、2016年3月取材時点での情報となります)。

アプリ市場での動きに伴いアプリプロモーションを支援するサービスの登場

MarkeZine編集部(以下MZ):今回は、スマートフォンが普及したことで著しく広がっているアプリ市場で今どのような動きがあるのか、先進企業の取り組みを交えて、AppLovinの坂本さんとヤフーの和波さんにお話をうかがいます。まずは、これまでのご経歴を簡単に教えてください。

AppLovin Corp. 日本営業部 部長 坂本達夫氏(写真左)ヤフー株式会社 マーケティングソリューションカンパニー アプリ広告 サービスマネージャー兼 アプリ事業推進室 室長 和波 豊氏(写真右)
AppLovin Corp. 日本営業部 部長 坂本達夫氏(写真左)
ヤフー株式会社 マーケティングソリューションカンパニー
アプリ広告 サービスマネージャー
兼 アプリ事業推進室 室長 和波豊氏(写真右)

和波:現職の以前はアドフラウド、アドベリフィケーション、データポリシー整備等を中心に、広告プロダクト全般のプロダクトポリシー責任者をしていました。当時からアプリ市場もみていたのですが、2014年から新たにアプリマーケティングのサービス責任者になりました。

 2015年5月にYahoo!アプリインストール広告をリリースし、次いで12月にアプリ内のユーザー行動解析や広告効果測定ができるマーケティングソリューション『Yahoo! MOBILE INSIGHT』をリリースして、アプリデベロッパーの支援に力を入れているところです。

坂本:私は楽天でキャリアをスタートさせ、オンライン広告と関わり始めたのは2011年にGoogleに入ってからです。AdSenseとAdMobのパートナーシップ開発営業を経験し、2012年後半ごろからアプリにフォーカスするためにAdMobの日本での実質的な責任者になりました。昨年6月にAppLovinへ参画し、日本でのビジネスの拡大に取り組んでいます。

 米国発のアドテク企業、AppLovinは2011年創業ながら、昨年の年間売上が250億円以上、今も年間+100%以上の成長率で拡大しています。ROASベースで高いパフォーマンスを実現するマーケティング自動化ソリューションを強みに、モバイルアプリ分野では独立系で最大規模のプラットフォームになっています。

CPI重視では既存ユーザーの活性化はできない

MZ:モバイルアプリ市場はWebに比べて遅れているといわれますが、どうご覧になっていますか?

坂本:たしかに、Webで進んできた道を今まさにアプリが、ものすごいスピードで追いかけているような感覚ですね。たとえばROASをベースにした広告配信最適化も、Webの世界だと何年もかけてそこにたどり着いたという歴史がありますが、アプリ領域ではそこへのシフトが今まさに急速に起こっています。

和波:同感です。それに、1~3年前だと、ブーストしてランキングを上げる手法が一般的でしたが、現在はよりユーザーの質にフォーカスしたマーケティングに移行しています。

 そのため既存ユーザーが大事だという考えが、さらに高まってきています。その部分も、CPI重視からユーザーの定着やLTVを含めた考え方にシフトしている要因だと思います。

MZ:Webに比べて、アプリは発展するスピードも速い印象です。市場の急速な拡大に対して、マーケティングの環境整備が追いついていないという状況なのでしょうか?

坂本:そうですね。技術的には、Webが5、6年かけて発展してきたところを、アプリにおいては、この1、2年で駆け抜けてきた感じです。人材や組織的な部分で、まだ本腰を入れてアプリマーケティングに取り組める体制になっていないという課題も垣間見えます。

 デジタル広告に対する理解があまり進んでいない大手企業ほど、顕著ですね。例えば、アプリのプロモーションのご担当者はROASで考えたいと思っていても、ROASで最適化するためには売上データを外部に提供する必要がありますが、会社のポリシーでそれが出来なかったり、リソースが足りなかったりといった理由で、実現が困難になっているケースも多いです。

リエンゲージメント広告の実施に必要な分析力

MZ:先ほど和波さんから、既存ユーザーを大事にというお話がありました。たしかにCPIを追うだけでは対応できない課題ですね。

和波:ええ。アプリがインストールされても、当然ですが全員が常に使ってくれるようになるわけじゃない。そこで、ダウンロードして休眠状態になっているユーザーへのリテンション、リエンゲージメントにいま注目が集まっています。まだ企業も代理店もKPIの設定から模索している状況ですが、成功事例が出てくれば一気に加速していくかなと思っています。

MZ:成功事例が生まれるのにネックになっている要因は、なにかあるのでしょうか?

坂本:組織的なバックアップと、人材の問題が大きいのではと思っています。まず、どうしてもCPIをベースにした新規ユーザー獲得に予算や人的リソースなどが割かれる傾向があります。ROASベースでマーケティングを考えると、当然リエンゲージメントも含めた包括的な収益最大化プランを立てたほうが良いです。

 それから、アプリをインストールし使わなくなった人といっても、何日間休眠した人とか、過去に課金した人とか、セグメンテーションの切り口がさまざまです。その切り口を戦略的に立てられる人や経験のある人が、なかなかいないのが現状です。

 リエンゲージメントは、放っておけば 徐々に落ちる既存ユーザーからの売上に対し、その落ち幅を緩くしたり、さらに伸ばしたりする施策です。なので、施策を打たなかった場合に売上がどのように推移する見込みで、施策を打ったからこれだけ売上が伸びた、という差分を統計的に分析しなければ効果が分からない。この分析力も、課題のひとつです。

ROASが見合うなら投資額を増やせばいい

MZ:そうすると、アプリマーケティングで成果を上げつつある企業は、そうした人材の部分もカバーできているのですね。

坂本:そうですね。代理店でゲームのプロモーションを外からサポートしていた人がクライアントサイドに移るとか、社内でアドテクを使ったマネタイズに実績のあるチームが今度はプロモーションを担当するといった、知識・ノウハウのある人がマーケティングを担当する会社が徐々に増えてきているように思います。 良質なユーザーをいかに獲得し続けられるかは、仮説立案と分析が出来る人が運用することでかなり再現性が高くなります。

和波:本来であれば、アプリ開発の設計時から成果ポイントやユーザー行動分析などのマーケティング指標の取得を意識した開発が必要です。

 ですが、実際はマーケティングを考慮しない設計・開発がされているケースも多くあり、インストール数・課金額などの数値しか追えない状態になっています。開発完了後にマーケティングを加味した再開発は難しいため設計時に「良質なユーザーを獲得できているか」などの計測や行動分析ができるアプリ開発が必要です。

坂本:日本で特に多いと思うのですが、マーケティングと開発が完全に分かれているのも難しいところです。データ活用が大事だという話になっても、マーケティングチームが持っているデータを開発にフィードバックしてアプリを改善したり、開発チームが持っているデータをマーケティングのために活用したりといった進め方は、小さい会社のほうが素早くやりやすい。その点で、スタートアップや中小規模のデベロッパーのほうが、正しいマーケティングをしていると感じることがあります。

 小さい会社のほうが経営とマーケティングの距離が近いため、予算に対する考えが柔軟なのも大きいですね。本来ROASが見合っていれば予算のキャップを設けずに、可能な限りいくらでも投資してその分回収するほうが利益最大化という経営目的を考えると合理的なのですが、日別や月別の予算が固定されているとそれができません。

良質なユーザーを獲得しているメディアを明らかに

MZ:大手だと、その点も厳しそうです。

坂本:そうなんです。本来のビジネス目的を考えると、予算の上限やCPIにこだわるのはあまり意味がないのですが、まずそこを理解していただかないことにはアプリマーケティングが発展していかない。そうした部分の啓発も必要だと、強く感じています。

MZ:逆に先進的な企業だと、今どういった議論がされているのでしょうか?

和波:この半年くらいでようやく、ユーザーをもう少し分類してターゲティングをしたいという要望が出てきています。分類したユーザーセグメントを適切に評価するためにも、メディアという大きな単位で評価するのではなく、メディアとユーザー分類のセットで良質なユーザーを獲得できているかを把握する必要があります。

坂本:その部分が、ほとんどブラックボックスですよね。「透明性」を高めていくことが業界の発展の1つの鍵だと思います。また、広告テクノロジーという面からも、データを活用した広告配信に着手している企業の多くが、アドネットワークとトラッキングツールから別々にデータを取ってきて、突き合わせて、ここは回収率が高いからCPIを上げようなどと手作業を強いられている状態です。本来、それはプログラマティックにできるはずなのですが、実現できているアドネットワークはほとんどありません。実際AppLovinではその部分を実現して、多くの企業の支持を得ています。

MZ:メディアごとの獲得ユーザーのパフォーマンスを可視化して、自動で広告運用を最適化していると。

坂本:ええ。むしろ今、それを実現できているネットワークが他にないことが、AppLovinが急激に伸びている大きな理由です。

アプリマーケティングをデータドリブンへシフトしていく

MZ:冒頭でお話しいただいた「Yahoo! MOBILE INSIGHT」では、どういった課題解決をしていくのでしょうか?

和波:ここまで話題に出ていたように、CPIベースでのプロモーションがアプリマーケティングの大きな課題です。Yahoo! MOBILE INSIGHTではアプリ内でのユーザー行動の分析や出稿メディアごとの獲得状況を把握して、Webと同じようにPDCAを回して運用できるソリューションを目指しています。

 5月には、ユーザー属性や行動分析をもとに、さらに深掘りしたユーザーセグメントをプロモーションに活用できる、オーディエンス機能も追加予定です。これによって、分析から活用そして効果測定をさらに推進していきます。

MZ:最後に、今後市場をどのようにしていきたいか、お聞かせください。

和波:アプリ市場をもう少しデータドリブンにシフトさせたい、という思いがいちばん強いです。単純な成果ポイントだけでなく、デベロッパーのビジネスに直結するROASをベースにマーケティングができるように、環境やプロダクトを整えて、提供していきたいと思います。

坂本:僕も同感です。その整備を通じて、やはり質のいいアプリをつくっているデベロッパーがもっと成功する未来になってほしい。健全なエコシステムを構築することが、アプリを通じて世の中をよくしていくことにつながると思っています。本当にビジネスがグロースするためにはどのKPIを上げるべきで、そのためにはどの広告を打つべきか、その判断を僕らは支援していきます。

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2016/04/20 11:00 https://markezine.jp/article/detail/24222