クリエイティブの種類
テレビCM/既存素材流用
動画広告のクリエイティブを用意する際に最も手早いのは、テレビCMなどのために用意した既存のCM素材をそのまま入稿することである。大半の動画広告配信面は、テレビCM素材であれば入稿できるため、デジタルデータさえ用意すればすぐに動画広告を開始できる。
一方で、テレビCMはWeb向けに制作されたものではないため、Webの文脈や形式に最適化されておらず、効果が見込みにくいという説もある。例えば、YouTube TrueViewは5秒間スキップ不可という特徴があり、最初の5秒の使い方が肝になるが、テレビCMクリエイティブではその点の工夫が行われていないのが一般的である。
既存素材加工
動画広告のためにクリエイティブを用意する際、テレビCMや販促映像などの既存素材を元に、Web向けの加工を加えるという手法もある。例えば、テレビCMが始まる前に、YouTubeの枠に合わせて目を引く5秒間のアイキャッチ映像を追加する、といった具合である。
テレビCMと異なり、YouTubeやFacebookなどの動画広告では動画素材の秒数制限がゆるく、自由な秒数の映像を配信できる事から、こういった活用は容易である。ただし、アドネットワーク/DSPから購入する枠では、テレビCMに似た15秒、30秒などの秒数制限がある場合が多いため注意したい。
新規制作(Made for Web)
Webオリジナルで新規制作された動画素材のことを、Made for Webと呼ぶ。テレビCM素材が無いブランドが動画広告を行う際に、映像素材を新規制作する場合に加え、テレビCMを展開しているブランドであっても、YouTubeの5秒間スキップ不可に代表される動画広告配信面が持つ独特の特徴や、テレビCMには無いピンポイントでのターゲティングなどの特徴を活かすため、Web専用クリエイティブを制作する事例が増えている。
米国では、テレビCMクリエイティブを流用した場合に比べ、Web向けのクリエイティブを用意した方が、好感度や利用意向といったより深い態度変容を起こせたという調査もある。

テレビCMとの組み合わせ方
リーチ補完
テレビCMとオンライン動画広告を組み合わせて実施する場合の役割分担には、主に3つのパターンが存在している。まずはリーチ補完で、テレビCMでリーチしにくい層に対して、動画広告を配信することで、広告が到達する相手のカバー範囲を補うという考え方である。
例えば、夫婦の両方に働きかけたい商材がある場合、主婦層が視聴する日中にテレビCMを展開しつつ、夫向けには性別や既婚未婚でターゲティングしてFacebook動画広告を出稿する、といった具合である。
フリークエンシー補完
フリークエンシー(頻度)補完とは、テレビCMではフリークエンシーを高める効率が悪い場合に、動画広告を活用して補う手法である。広告は、1度限りではなく、ある程度の回数接触したほうが印象に残りやすい傾向があり、その頻度をフリークエンシーと呼ぶ。
テレビの視聴者層は、高齢者、主婦などに多少の偏りがあるため、若者に3回CMを見てもらえる量の出稿を行うと、高齢者に10回CMが当たってしまう、というような事が発生する。これを解消するため、例えば全年齢均等にCMを見てもらいたいという場合に、高齢者に3回、若者に1回分のテレビCMを出稿しつつ、動画広告も活用してWeb上で若者に2回分CMを見てもらう、というような役割分担を行うことが考えられる。
態度変容補完
一般に広告には、認知、関心、好感、利用意向といったブランドや商材に対する生活者の態度を変える、すなわち態度変容(ブランドリフト)を起こすという狙いがある。そこで、例えばテレビCMでまずは広く商材に対する生活者の認知を生み出し、その後、動画広告を使ったオンラインキャンペーンで好感、利用意向を生じさせる、などの態度変容における使い分けのシナリオを組む事が態度変容補完である。
こうした使い分けが効果的な背景としては、動画広告は時間尺やクリエイティブ内容の自由が利きやすく、LPコンテンツ等と組み合わせた利用も可能であるため、テレビCMに比べてより深い態度変容を起こす仕掛けが行いやすいことがある。