流入増だけでなく、ブランドイメージも一新
施策の結果、初回の公式ツイートをした瞬間に、トヨタのウェブサイトへのオーガニックの流入が跳ね上がったという。また、ネットでのプリウスの評判も、ポジティブなものが増えたという。
「プリウスの各部品には、なかなか覚えられない複雑な名前がついています。ですが、キャラクター化したことにより、例えば「2ZR-FXE エンジンちゃんかわいい」といったツイートが多く見られました。極端なアプローチではありますが、固有名詞を覚えてくれたということは、自然と皆さんのなかにプリウスが入り込んでいけたのではないかと思います」(樋口氏)
擬人化されたキャラクターは、全部で40体。それぞれが実在の部品そのものの設定だ。作画を担当した26人の絵師には実際に部品を見てもらい、キャラクターを描いてもらったのだという。結果、Twitterではその絵師や担当する声優自身もそれぞれのアカウントからツイートするなど、第三者からの情報拡散も巻き起こった。
「コンテンツとして、ラジオで声優さんにプリウスのカタログを読んでもらったりもしました。例えば“アメリカの学園ドラマ風に読む”などシチュエーションを決めて。まさに職人芸です。そこでさらに話題になりましたね。“トヨタがついに、おかしくなった”といったツイートも見られました(笑)。これもデジタル言語的には褒め言葉だと思っています。良い反応を多くいただけました」(齋藤氏)
結果から見ると成功といえる本施策だが、かなり挑戦的ともいえる。従来のトヨタのイメージとはかけ離れているが、社内の声はどうだったのだろうか。
「面白いことを常に新しい手法でやっていかないと、これからのお客様の心を掴むことはできません。それが社内でもわかっているので、後押ししてくれる社員も多かったですね」(齋藤氏)
潜在層にアプローチしながら販売につなげる方法を模索したい
今後も、引き続き若年層に向けてプロモーションを展開していきたいと齋藤氏と樋口氏。具体的な展望を聞いた。
「実は、既に次の施策を仕込んでいます。今回の取り組みで、若い方々が反応するポイントが見えてきました。今回は認知拡大や興味喚起を重点的に行いましたが、私たちの最終目標はご購入いただくこと。今後は販売店につなぐ施策を強化していきたいですね」(齋藤氏)
「単純に「面白いキャンペーン」というだけではダメなので、どう販売へ繋げるか、というのは意識しつつ、クルマやトヨタへ意向の無い方にもキャンペーンでトヨタをいいなと思ってもらえて、5年後、10年後に販売につながるために、今回の施策を突破口として挑戦を続けていきたいですね」(樋口氏)
意気込みを見せる両者に対し河本氏は、Twitterはパーチェスファネルの様々なフェーズで最適なコミュニケーションが展開できると、活用の可能性を示す。
「車の購買サイクルは7~8年に1回と言われます。しばらくは車を買わない人と、今にでも購入したいという人では、当然コミュニケーションアプローチも異なります。長期的な顧客育成の観点においては、プロモトレンドなどを活用し、3,500万人のTwitter利用者へブランディングアプローチが可能です。特定の興味関心層を捉えるニッチメディアではなく、皆さんのいつも傍にあるスマホ上でよりマスメディア的なアプローチができるのです。
一方、本音が見えるプラットフォームですから、例えばキーワードターゲティングなどで“この車、欲しいな”といったツイートから、現在のお客様のニーズを探り、今まさに購入検討中のお客様にキャンペーンの合理的な情報提供をすることもできます。このプラットフォームの強みを生かしてこれからもあらゆるフェーズで皆様のビジネスにご協力できればと思います」(河本氏)
トヨタが次に見せる展開はどのようなものか、Twitterとどのようなタッグを組むのか。今後も目が離せない。