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Netflix CEOの予言「テレビ放送の寿命はあと10年から20年」を考察する

5Gモバイルが実現する世界

 5Gモバイルは、これからのIoT(Internet of Things)の時代に対応した技術になるようだ。つまり、大量のデータが大量のデバイス間で相互にやり取りされるシステムを構築する。しかも、これまでよりも安定して、正確に、利便性もずっと高くなる見込みだ。

 5GPPP(The 5G Infrastructure Public Private Partnership)という組織がヨーロッパで2013年に発足した。欧州委員会(EC:European Commission)が、第5世代(5G)携帯電話ネットワークの実現に向けて作ったコンソーシーアムのようだ。5GPPPの資料「5G Vision」には、「5G disruptive capabilities(5Gの破壊的な能力)」という項目で次のように書かれている。

5G will provide an order of magnitude Improvement in performance in the areas of more capacity, lower latency, more mobility, more accuracy of terminal location, increased reliability and availability. 5G will allow the connection of many more devices simultaneously and to improve the terminal battery capacity life.

 つまり、5Gは、これまでの技術に比べて、圧倒的にパフォーマンスがよくなる。そのデータ容量もずっと大きく、データ伝送の遅れが少なく、これまでよりも移動性に優れていて、位置情報ももっと正確で、信頼性と利便性もずっと高まる。もっと多くのデバイスが同時に接続することもできるし、個々の端末のバッテリーも長持ちするようになる、という感じだ。

 具体的に要点を書きにまとめた。要するに、世界中の70億人が7兆デバイス以上で接続してきても耐えうる無線通信で、それはIoTのプラットフォームになるということだ。

・2010年時と比較して1,000倍の通信容量
・2010年時と比較してエネルギー消費量を10分の1に
・データ送受信停止時間( zero perceived)が感じられないような安全で信頼性の高いインターネットサービスを提供
・70億人以上が利用する7兆デバイス以上が接続する無線通信リンクの展開促進
・誰でもどこでもアクセス可能なユニバーサルで低価格なサービス
・Internet of Things(IoT)のプラットフォーム

 さて、5Gモバイルが日本では2020年に実現して、ものすごいサービスになっていて、地上波デジタル放送を上回る技術的な優位性を持っていたとしても、結局、そのサービスが普及しなければ意味はない。5Gモバイルは果たして、普及するのだろうか?

 内閣府の発表によると、2015年度のスマホの普及率は67.4%(前年度比6.8ポイント増)だった。また、総務省の資料で、平成26年度(2014年度)のインターネットの普及率を見ると、13~59歳までの各世代別の数字は、すべて90%以上になっている。60~69歳は75.2%、70~79歳は50.2%となっている。59歳までの世代には、インターネットは「あまねく」日本人に普及していると言ってもいいのかもしれない。

 その一方で、若者のテレビ離れがよく話題になるようになった。NHK放送文化研究所の調査では、テレビを「ほとんど、まったく見ない」と回答した人が2015年に、20代で16%、30代で13%になっている。

 さらに、東京大学大学院情報学環の橋元良明教授の資料では、10代テレビの視聴時間が2005年に149.6時間だったのに、2015年には72.6時間と半減している。また、20代テレビの視聴時間も、2005年に162.8時間に対して2015年は111.3時間と大幅に減っているようだ。また、総務省の調査では、デジタルテレビをインターネットと接続している(つまり、結線されたテレビ=connected TV)世帯は23.9%(平成26年末/2014年末)ということだ。

放送から通信に舵を切ったのか?

 ある放送業界の人は、「NetflixのCEO、Reed Hastings氏の予言は、日本には当てはまらないとは言い切れないのではないか?」と語った。つまり、2025~2035年ぐらいの間に、4K・8K映像と5Gモバイルが普及してしまうと、地上デジタルテレビ放送は不要になるかもしれない、と。

 私自身は、2020年までに全国すべての小・中・高校に無線LANが導入されることがキーになるような気がする。たとえば、2020年までに全国すべての小・中・高校に無線LANが導入されるとしよう。それが総務省の予算で(国の補助金で)5Gモバイルに対応してくるとする。そうすると、学校で4K・8Kで「デジタル教科書」を使う環境で育った子供達は、2Kのサービスに戻るだろうか?

 2020年に10歳の子どもがタブレット端末やスマホに慣れ親しみ、4K・8K対応ディスプレイの映像クオリティに目が慣れたとしよう。その子どもたちが成長した10年後、彼らが20歳になる2030年。この20歳になった「デジタル教科書」世代は、4Gモバイルのスマートフォンではなく、当然、5Gモバイルを買うのではないだろうか。もしかしたら、その頃には6Gモバイルになっているかもしれない。そして、おそらく、自宅のWiFiも、5Gモバイルになるのが自然だろう。当然、4K・8K対応のテレビ端末を使っているのは言うまでもない。

 2030年。地上デジタルテレビ放送の社会的役割は何か。「デジタル教科書」世代にとっては、過去のものになっているのではないだろうか。今後、若者のテレビ離れ、あるいは、日本人のテレビ離れが加速するとしたら、地上デジタルテレビ放送は「あまねく日本全国において受信できるように」放送するという目的、社会的役割を果たせるのだろうか。

 皆さんは、どのようなシナリオが妥当だと思うだろうか?未来のことは何が起こるかわからない。予断は許されるべきではないだろう。いずれにしても、今後、4K・8K、そして、5Gモバイルがどのように発展し普及していくのか、あるいは、普及しないのか。2020年に向けての5Gモバイルの動向、そして、その後の10年、2030年ごろまでに、地上デジタルテレビ放送はどうなっていくのか?Netflix CEOのReed Hastings氏の予言は当たるのかどうか?総務省の動きやNTTDoCoMoなど主要なプレーヤーの動向を注視していきたいところだ。

本記事は「Unyoo.JP」の記事「2030年地デジの社会的役割は終わる:Netflix CEOの予言と5Gモバイルの衝撃」を要約・編集したものです。長編のオリジナルコンテンツを読みたい方は、こちらをご覧ください!

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/06/23 08:00 https://markezine.jp/article/detail/24598

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