決め手はサポート体制と確実な効果
ECサイトにおいて、もはや不可欠なレコメンド機能。株式会社ストリーム(以下、ストリーム)では2015年、運営する家電通販サイト「ECカレント」に株式会社ゼロスタートのレコメンドエンジンを導入し、その機能性を大幅アップさせた。
導入後のチューニングによって、レコメンド経由の売上も向上しているという。詳しい取り組みをストリーム マーケティング部の井料修氏、津川陽平氏および、同社のレコメンド運用を支えるゼロスタートの出張純也氏に取材した。
井料氏はストリームが運営するECサイトのデザイン構築からシステム関係まで携わるマーケティング部門を統括する人物。津川氏は、ECサイトのキャンペーン企画や、今回のレコメンドを含む、ソリューションの業者選定から導入、運営まで担当している。出張氏は、同社が提供する検索エンジンとレコメンドエンジンについて開発から運用まで携わっているエンジニア。現在、ストリームのレコメンドシステムを裏から支えている立場でもある。
ストリームは2015年、これまで導入していたレコメンドエンジンの切り替えに伴い、検索エンジンの性能評判も加味しゼロスタート製品を採用した。「業界No.1であることはもちろん、ゆくゆくは、サイト全体での改修を予定していたため、サーチエンジンとレコメンドの連携を第一に考えたときに、ゼロスタートさんが最適だと判断しました」と井料氏。
また、一番の決め手となったのは導入後のサポート体制だという。「ツールを導入したらそれでおしまい、という企業もあるなか、ゼロスタートさんは“製品導入後も、週1回のペースでミーティングを行い、サポートしてほしい”というリクエストに応じてくださいました。ここが大きいですね」(津川氏)
リアルタイムのメールレコメンドと独自ロジックで、売上アップ
現在、「ECカレント」のレコメンド経由の売上は、全体の約5%。以前導入していたエンジンよりも増加傾向にあるという。具体的に、どのようなレコメンドをしているのだろうか。
例えば、メールによる動的なレコメンドがある。これはメールが開封されたタイミングで、リアルタイムにレコメンドの内容が変わるというもの。従来の一斉送信メールはメール作成時に算出されたデータに基づき商品を表示するので、情報がどんどん古くなってしまう。一方、「ECカレント」のメールは動的なレコメンドによって常にフレッシュな商品を表示できる。
当然サイト上のレコメンドは常に検索内容や顧客行動を分析しており、「この商品を買った人はこんな商品を買っています」「この商品を見た人はこんな商品も見ています」といった一般的なレコメンド機能も「ECカレント」仕様にチューニングしている。
データのない新商品も、ロジックを駆使して適切なレコメンド
「レコメンドエンジンは導入したら終わりではなくて、サイトの事情に合わせて個別にチューニングしていくことが重要」と出張氏は語る。なぜなら、単純に“一緒に買われている商品”を表示するように設定しただけでは、関連性の低い商品が表示されてしまう場合があるからだ。
有名な例え話だが、金曜日の夕方にスーパーでオムツとビールが一緒に売れることが分析でわかったとする。この背景には、オムツを買ってくるように頼まれたお父さんが、自分のビールも買っているといったところだろう。だからといって、ECサイトでもビールをカートに入れた人にオムツをレコメンドしていいわけがない。だが、単に“一緒に買われている商品”と設定すると、そういったレコメンドが出てしまう。
例えば「ECカレント」の場合、「チューニングをしなかったら、ドライヤーをカートに入れると音楽プレイヤーがレコメンドされる。けれど、エモーションを考えると本来ならドライヤーならヘアケア商品をレコメンドした方がいいし、音楽プレイヤーならオーディオの方がいい。今見ている商品がどのカテゴリなのか判断して、それと大枠で同じ商品を強く出す形です。これはサイトの取扱商品やカテゴリによっても異なるため、調整が必要です」(出張氏)
「ECカレント」側でも、以前導入していたレコメンドエンジンでは、家電商品と風邪対策の商品が一緒にレコメンドされてしまうようなことがあったため、カテゴリの優先度合いの調整は重要課題だったという。
「さらには、データの不足への対応も懸念事項でした。例えば、レコメンドデータがまだない新商品はどうするかがあげられます。ゼロスタートさんにご相談したところ、新商品が属するカテゴリの“人気商品ランキング”のデータを混ぜてレコメンドしていただくなど、データがまだ十分揃っていなくても適切なレコメンドを実現していただきました」(井料氏)
週1回のミーティングで築いた信頼関係が強み
また両社のやりとりで特徴的なのが、密に連絡を取っていることと、ゼロスタートの知見を活かした迅速な対応だ。
「定期的に確認しているのは、レコメンドの商品をクリックしてもらえたかどうか、その先で買われたかどうか。それをふまえて週1回ミーティングをしています。他にも、ちょっと疑問に思ったことは常に共有しています」と津川氏。課題が見つかっても、多くの場合、ミーティングから1週間以内に解決策を得られるという。
「先ほど触れた新商品のレコメンドも、実はレコメンド経由での売上が落ちてしまったことがありました。それも、すぐに対策をしていただけました」(津川氏)
「管理画面で細かな設定をしなくてすむのも魅力です」と井料氏。ゼロスタートでは基本的に導入企業が管理画面で細かな設定をするのではなく、ゼロスタート側がチューニングを行うようにしている。「現場の方が調整をしてトライ&エラーを行うことも重要ですが、私達のノウハウを活かすことで、最短ルートでの問題解決ができると考えています」(出張氏)
実際に、“この商品のときにこのレコメンドは少しおかしいと思う”というような感覚的な細かいリクエストでも、「すぐに対応してもらえ、売上にも反映される」と井料氏は満足顔だ。
「ツールを入れたらあとは自分達ですべてやらなければならない、という状態だけは絶対に避けたかった。なぜなら、『管理画面を使って自分達で改善していくことが、スピーディに見えて実はかなり難しい』と他のサイトで経験していたからです。ツールを活用できないのであれば意味がありません。その点、現状では、ゼロスタートさんの豊富な知見もご教示いただいてレコメンドの最適化がされています」(井料氏)
データがなくても、ロジックを駆使して適切なレコメンドを出す
「ECカレント」がレコメンドエンジン導入を成功させた秘訣は何か。三名に聞いた。出張氏は企業とエンドユーザー、双方の立場で考えることが必要だという。「“この商品を強く出したい”というご要望は頻繁にいただきます。ですが、それはエンドユーザーから見ると違和感がある場合も多い。そのときに、それは効果がないから止めた方がいいですよ、とハッキリ申し上げて、その代わりご納得いただけるような代替案を必ずご提案しています」(出張氏)
井料氏と津川氏はクライアント側として、事前に課題を整理しておくことが重要だと見解を述べる。特に、今回は以前導入していたレコメンドエンジンから浮かび上がった問題点を洗い出し、最初に相談していたという。「今回特にポイントとなっていたのが、データ量をカバーするためのロジックをどうするかです。この点を事前にご相談することで、当サイト独自のやり方・「ECカレント」に適したレコメンドを実現できています」(井料氏)
精度をさらに上げて、流行の人工知能を超える人工知能へ
今後もさらに機能を追加して様々な施策を打っていきたい、と井料氏と津川氏。広い視野での展開を考えているという。一方、出張氏も「私の技術的野心をぶつけていきたい」と意欲を見せる。
「人工知能という言葉が流行していますが、当社は以前から既にそういった技術を人工知能という言葉を使わずに活用しています。いわゆる人工知能によるレコメンドを超えた、もっと高レベルのレコメンドを加味した機能を、「ECカレント」さんとチャレンジしていければ」(出張氏)
強いチームワークでレコメンドのチューニングを進めるストリームとゼロスタート。今後、どのような展開を見せるのか注目したい。