よくある「時間がない」という問題をどう解決するか
市川:今日、会場にホワイトボードを設置し、来場者から事前に質問を貼っていただきました。その中から、いくつかピックアップしていきます。まずは、「実行する時間をどう作ればいいか?」というもの。新たな取り組みをしていく上で、そのために割く時間をどう作っていくかはよく課題になることですね。お二人の場合はどうだったのでしょうか。

馬場:富士ゼロックスには社内制度で「10%ルール」というものがあります。業務の10%はイノベーティブなことに使いなさいというものです。しかし、この10%の時間も自分の努力で作っていかなければなりません。本当に実現させたいことがあるなら、そこで当然、業務の効率化を意識するようになります。
市川:業務としてやるのか、業務外としてやっていくのか。これは企業風土や個人の仕事観によっても違うとも思いますが、どのように考えていますか。
馬場:大企業で業務中に自分が本当にやりたい新たな取り組みをやっていくためには、真の狙いを隠しておくことも大切でしょうね。表向きに設定した当初の目的とは別の方向に進んでいくことがあったとしても、何か成果に結びついてくると「あいつがやるなら仕方がない」と味方してくれる人が増えてきます。
市川:坂和さんはあまり業務中と業務外の境目がない感じがしますが。
坂和:それが以前はプライベートと仕事の時間はきっちり分けていました。でも、今は仕事も人生のうちかなという感じですね。あえて時間を作るというよりも、やりたいことについては、寝ているときでも移動中でもずっと考えていて、考えている時間も楽しんでいます。
オープンイノベーションで陥りやすい罠を避けるために
市川:「進める際に陥りやすい罠は?」という質問も来ています。何か気をつけるべきことはありますか。
馬場:大企業の場合、何か新しいことをやると、そのことが原因でちょっとした悪い風評が流れて、会社全体にまで悪影響が出てしまう恐れがあります。ですから、新しいことをやろうとすると、社内から止めようとする動きが出てくるわけです。また、我々はメーカーですから、富士ゼロックスのブランドで新しい商品を発表するとなると、たとえば「動かなかったらどうするのか」という品質の問題が出てきます。イノベーティブなものを出そうとすると、大企業にはいろいろな制限がありますね。その制限を意識しながら、うまく立ち回る必要があるでしょう。
市川:坂和さんはどうですか。
坂和:うちみたいな小さな会社だと、冗談じゃなくて失敗すると本当に簡単に倒産しちゃうことがあります。ですから、自分たちでやれる範囲をしっかり見極めるように注意することが大切です。それから、新しいことをはじめると大企業が目をつけてきて、潰される可能性もありますね。本当にガラッと変えるには大企業と上手くやりながら流れに乗って、最後に一歩リードするのがいいかなと思っています。
馬場:相手の大小や立場関係なく、対等に同じ目線でやらないと共創なんて絶対できない。大企業側の姿勢として、これは大事なことだと思います。
日本人ならではの共創で日本を再興する
市川:最後にこれからオープンイノベーションに取り組もうという方に向けて、一言ずつメッセージをお願いします。
馬場:「異質な人と数多く出会い、議論しよう!」ということですね。想いを共有できる異質な人と議論することで起きる化学変化が、自分を次のステージに押し上げてくれる。これが次の0から1を加速するポイントかなと思います。自分の運命の人と出会い、ディスカッションを重ねていきましょう。
坂和:「こういうサービスが日本にあったらおもしろくなる」「日本最高」みたいなことを、みんなで実現できればと思います。一緒に日本をもっとめっちゃおもしろくしましょうよ!
馬場:日本をもう一度強くしたいよね。共創というのは日本人に向いた考え方だと思います。協調し合い、共創し、日本オリジナルの形を作ってみたい。これが私の目指すところです。これはどんなことがあってもブレません。できるかどうかはわからない。でもその想いは絶対変わりません。