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MarkeZine Day 2016 Autumn レポート

メルカリ×マネーフォワード×ロフトワーク、プロダクトマネージャーが語る「UXに基づいた施策」

サポートセンターに上がる声からスピーディーな改善へ

入谷:では、サービスをより快適に使ってもらうために、どのような「ユーザー体験」の向上施策を行っているか、特に最近の取り組みについて伺っていきたいと思います。

伊豫:最近特に注力してきた施策は「らくらくメルカリ便」ですね。ヤマト運輸との連携で実現したもので、メルカリで売れた商品をできるだけ簡単かつ安心・安全に発送することを目的にしています。“らくらく”のポイントとしては、まず「全国一律料金」であること、そして「いろいろなサイズのラインナップ」、QRコードによる「宛名書き不要・匿名配送」などがありましたが、最新ではヤマト運輸の集荷が容易にできる機能を盛り込みました。

らくらくメルカリ便
らくらくメルカリ便

入谷:興味深いのが、アプリの中ではなくて外側、それもヤマト運輸との連携ありきということでしょうか。システム調整など難しい局面もある、難易度の高い施策だったと思います。

伊豫:確かに自社のアプリ内よりも、手間も労力もかかることでしたが、やはりニーズとして出品・梱包・配送がキモであることは明らかでしたから。

入谷:そこになぜ気づかれたのですか? しかも、全国一律金額ということは、その分メルカリさんが負担されているわけですよね。持ち出しで実現するほどの経営判断はどのようになされたのですか?

伊豫:フリマアプリで出品することを考えた時「配送が良くわからないし、面倒」というのは、最初に思うことです。ここについてはユーザーインタビューをするまでもなく、ユーザーニーズとして明らかなので、あとはそれをどう解決するかという発想になりました。普通に当たり前のサービスだと思ってもらうためには、配送の簡単さは“キモ”であり、そこを乗り越えられれば長く使ってもらえる。LTVが向上すると判断したわけです。マーケットプレイスとして一強となりたいので、問題解決だけでなく、サービス全体のための投資として捉えています。

入谷:ちなみにメルカリさんはユーザーインタビューやアンケートもあまり取らず、どんどん機能追加や改善を頻繁に行われている印象があります。そのポイントについてはどのように気づき、どのように優先順位をつけるようにしているのでしょうか。

伊豫:起点となっているのはカスタマーサポートに集まってくる利用者の意見ですね。その1つ1つをプロダクトチームまで毎日フィードバックしています。これらの生の声はリアルタイム性があります。“おかしいな”と思ったらすぐに、私たちのもとに返ってくる。それを随時検討し、活用することがポイントだと考えています。

入谷:カスタマーサポートとプロダクトが日々連携して、サービスを改善されているのですね。素晴らしい取り組みだと思います。

あらゆるステークホルダーのメリットを最大化する

入谷:マネーフォワードさんも新機能を続々と追加されていますよね。直近で盛り込まれた「ユーザー体験」の向上施策についてお話しいただけますか。

細谷:2016年6月から「オフィシャルアカウント」がスタートしました。マネーフォワードは、利用者だけでなく、多くの金融機関との連携によって成り立っているサービスです。ですから、金融機関にも価値を提供する必要があります。そこで、連携している金融機関がお知らせや分析、ディープリンクなどをカスタマイズして、利用者とのCRMの窓口として活用いただける機能を盛り込みました。

オフィシャルアカウント
オフィシャルアカウント

 たとえば、今までは、入出金といった操作は一旦マネーフォワードのアプリを閉じて、金融機関のアプリを立ち上げて……という動作が必要でした。それが、マネーフォワードからワンタップで金融機関のアプリに移動して、シームレスに操作することができるようになりました。つまり、ユーザー体験を損ねないわけです。

入谷:単に利用者が便利になるのとは、また異なる価値の提供の仕方ですね。閲覧だけでなく、もう一段踏み込んだことができるような構造になっているわけですか。

細谷:今年3月に住信SBIネット銀行さんがAPIを解放されましたが、日本の銀行がAPIを解放したというのは大きなニュースだと思います。これまでは情報を読み取るだけで、アプリの中だけで完結させるのは難しかったものが、マネーフォワードにくれば自然にできるという、その価値は訴求していきたいですね。その延長で、ユーザー体験がどんどんよくなることを期待しています。

入谷:一見、利用者より金融機関にメリットが大きいように見えますね。能動的にサービスを使いたいという人以外にとってはデメリットになる可能性もあります。体験を損なわずに改善するためにどのような取り組みを行ったのですか。

細谷:おっしゃる通り、「オフィシャルアカウント」が利用者にとっては不要な情報で、わかりにくくなるのではないかという懸念もありました。しかし利用者と金融機関、私たちがWinWinWinとなるには、こうした基盤が将来的にも必須です。その上で、利用者が不快にならず、金融機関にはメリットがあるものにするにはどうしたらいいのか、あらゆる部署間で議論がありました。特にユーザーインタフェイスに落とし込む際に、デザイナーとのやりとりはかなり密に行い、その中で落としどころを探っていきました。

サービスをユーザーにどう伝える? 二社の取り組み

入谷:それでは、最後に「ユーザーにどう伝えるか?」という課題について伺いたいと思います。お二人のお話を聞いていると、両社ともにマーケティング部門と密に連携しながら、顧客獲得も含めてユーザー体験をデザインされている印象があります。その中で、新しい価値を届ける際には、どのような体制や手法で取り組まれているのでしょうか。

細谷:既存の利用者に対して伝える際は、メールやプッシュ通知などでコミュニケーションを行っています。その際に「どう伝えるか?」という表現部分はデザイナーが得意ですから、プロダクト側としては何を伝えたいのかを共有した上でクリエイティブ作成を行っています。一方、新規に向けてとなると、マーケティングや広報など様々な部門の協力を得て「広く伝える」ことを意識しています。

伊豫:メルカリのマーケティングチームはプロダクトチームに内包されており、そこに溝ができないような組織体制になっています。たとえば新規層に訴求する場合は、メルカリで人気の高い商品などをデータ分析して、それをAPIで吐き出し、インハウスで広告化していくという取り組みを行っています。また、既存の利用者に対して新機能をお知らせする際には、FacebookやTwitter等のソーシャルチャネルやアプリ内お知らせ機能など、通知機能をフル活用します。

入谷:先ほどカスタマーサポートとの連携というお話がありましたが、同様にオンラインマーケティングのチームがプロダクトチームと一緒にいることで、スピーディーな取り組みができるだけでなく、根源的な価値のコミュニケーションが実現できているのですね。

 お二人とも、本日は大変興味深いお話をありがとうございました。

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウマミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの製作などを経て独立。ビジネス系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/11/02 10:00 https://markezine.jp/article/detail/25453

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