コンテンツの品揃えよりも重要なこととは
MZ:次に、サービス運営側の立場から意識していることを小池さんにお話しいただきたいと思います。

小池:特に力を入れているのは編成です。例えば、同じ時間帯に人気コンテンツを複数チャンネルで放映すると、競合してユーザーの奪い合いになってしまいます。そうではなく、時間帯ごとにコンテンツのバランスを考えたほうがWAUは良くなる。これを弊社では横の編成と呼んでいます。
一方で、縦の編成というものもあります。これは、次の時間帯に流すコンテンツにできる限り関連性を持たせる編成にすることを指します。この縦の編成と横の編成、さらに週単位での横の編成を考え、AbemaTVを習慣的に使ってもらえる編成を目指しています。
編成のスキルに関してはテレビ朝日に力を貸していただきつつ、インターネットならではのユーザーの行動を弊社がいち早くつかみ、編成に反映しています。
MZ:ここまで、編成にこだわるのはなぜでしょうか。
小池:AbemaTVの場合、すべて無料で登録情報もなく基本的にはリアルタイムで番組を見てもらうものなので、いかに多くのユーザーに継続してもらうかが重要になります。
これをコンテンツ単体のパワーだけで対応するのは難しい。そうではなく、毎日9時にふとアプリを開いてしまう、そんな心地よい編成ができたほうが良いと考えています。
ソーシャルメディアとPRに注力
MZ:今度は野村さんに、広告・マーケティングの観点で意識していることをお伺いします。定額制動画配信サービスなどと比較されることが多いと思うのですが、差別化するために意識していることはありますか。
野村:実は、あまり競合を意識していないというのが正直なところです。動画という括りで、定額制動画配信サービスとよく比較されますが、マネタイズの仕方も視聴スタイルも違います。ですので、差別化というよりは、AbemaTVの立ち位置を素直に伝えていくことが重要だと思っています。
実際に行っている施策に関してですが、特に力を入れているのはソーシャルメディアの運用とPRですね。というのも、小池が話したように、AbemaTVの利用を習慣化してもらうことがとても重要です。ですので、常に最新情報やユーザーのアクティブなコメントが届く状況を作っていくべきだと思い、これらの施策に力を入れています。
MZ:具体的にはどういったことを行っているのですか。
野村:ソーシャルメディアに関しては、運用経験の豊富な人材を揃え、運用しています。FacebookとTwitterの2つの運用に対し、ソーシャルメディア専門の担当を複数人置いているのは珍しいと思います。
小池:PRのための取り組みのひとつとして、「AbemaTimes」というメディアを通してAbemaTVで放送される番組内容を記事として広く発信しています。本メディアで公開した記事はソーシャルメディア上で投稿したり、各ニュースサイトに外部配信を行ったりしています。ただの番組宣伝用のコンテンツではなく、記事として面白いものを作り、メディアに取り上げられることを狙っています。

野村:自社完結で、AbemaTIMESのようなメディアとソーシャルメディアを運営していることは大きな強みだと思います。二次情報として取り上げられることを意図してコンテンツを発信できていますからね。