YouTuberの動画が刺さるただ一つの理由
テレビ番組を中心とした、マスメディアの動画とオンライン動画は何が違うのか。この疑問に対し鈴木氏は次のように答えた。
「基本的にテレビの場合、番組とCMが分かれてしまっている。流行るテレビCMも一部ありますが、敬遠される傾向にあります。
ただ、ネット上でYouTuberが商品紹介をする動画を見るネットユーザーは多い。なぜなら、YouTuberが楽しんで、好きで商品紹介の動画を作っていることが伝わってくるからです。それでいて、スマートフォンやタブレットで好きなときに見られるのは大きいと思います」(鈴木氏)

確かに、テレビが巨大な存在であり続けるにしても、Web動画も大きな影響力を持ち始めているといえる。
「ウチの1歳の子どもは、一般人がただおもちゃを使っている動画にハマっています。今の子どもたちって、ゲームをやること自体の面白さだけでなく、人がゲームをやっているのを見るのも面白がっている。そうした感覚を持っていますよね」(鈴木氏)
桑野氏も“そうした感覚”を持つ若年層に対し、渋谷クリップクリエイトは何ができるのかを考えているという。最近では、FRESH! by CyberAgent内でYouTuberと共同で生放送番組「金曜ゲームショー」を制作し、配信を開始した。
「ゲーム実況に関する動画を配信している方々を組んで、彼らが実現したい企画をベースに番組化しました。これが功を奏し、同番組は2時間で12万前後のユーザーが視聴する、国内でも有数のゲーム紹介番組となっています」(桑野氏)
Web動画に求められるのは「狭さ」と「尺」
しかしながら、作り手がやりたい企画ということだけでは、Web動画がウケる理由の説明としては弱いのではないか。鈴木氏はその質問に対し、Web動画を作る上で重要な視点を解説した。
「まず、Web動画=サブコンテンツとして捉えるのは避けたほうが良いですね。例えば、映画のスピンオフ動画をネットユーザーが見たときに、“なぜ映画館に行かないとメインが見れないの?”と思う人もいるはずなんです。メインコンテンツを出す意識を持ち、“狭さ”を狙うことが重要です。強烈にターゲットを絞った動画のほうが反響が起きやすい。僕個人は、みんなにウケる動画というのは“奇跡”の産物と思っています(笑)」(鈴木氏)
また鈴木氏は、テレビでは番組やCMの尺が決まっている点を挙げ、ネットならではの尺の使い方も重要だと、次のように語った。
「ある動画配信サービスではオリジナル制作30分ドラマがものすごい反響だった、NHKの朝ドラが人気だという話を聞くと、ドラマの定番の尺といえる1時間は長いと思われているのかもしれない。寝る前や通勤時に気軽に見られる30分という長さがちょうどいいのかな、といった考えも必要ですね」(鈴木氏)