クリックした後もユーザーが違和感を抱かない
2015年のサービスローンチから1年半が経過し、ヤフーは現状のYCDについてどう考えるのか。宇都宮氏は、サービス初期から一貫して「企業からのニーズが高まる」と確信していたという。その理由に、昨今におけるネイティブ広告文脈との関連性を指摘する。
「Webサイトを見る際、広告だとわかるUIを目にすればユーザーはクリックしてくれません。仮にクリックする人がいてもごくわずかです。そのなかで、ヤフーの検索連動型広告『スポンサードサーチ』は広告だとわかっていても、よくクリックされている事実もある。場合によっては自然検索の結果よりもクリックシェアが高いことも見受けます」(宇都宮氏)
つまり、“広告だからクリックされない”わけではない現実がある。なぜ広告でもクリックされるのか? それはユーザーが求める、有益な情報を提供できているからである。
「ヤフーが展開する検索連動型広告の反応が高いのは、クリック後にユーザーが違和感を持たないUIを担保していることも挙げられます。YCDもしかりで、ユーザー体験を損ねずセールスを前面にしたコンテンツが出ないように、審査は厳格です。クリック後も、それまでの自然な体験を継続してほしいからです」(宇都宮氏)
「西日本に強い」ことを示す関西地銀の事例
そこで知りたいのが、西日本でトップクラスの業績を誇るというトランスコスモスが、実際に手がけている事例だ。ここでは、2点の事例を紹介する。1点目は関西地区の地方銀行が行った、金融商品の認知拡大施策である。
この地方銀行では、まずトランスコスモスからのYCDの提案を受けた後に、様子見の期間を設け、他の事例の状況をつぶさに確認した後、ある程度の感触を想像できた段階を待って正式に導入した。
その判断は見事に的中し、非常に大きな成果を挙げる。実施前後を比べると、「企業ブランド名」と「商品」を組み合わせたYahoo! JAPANでの検索数が1.6倍、CV数が1.7倍に飛躍。同時期はYCDだけを新たに展開していて、テレビCMなどを一切実施していなかったことと、他に導入したソリューションもなかったことから、伸びた分がそのままYCDによる貢献だと推測できたのだ。
「たとえば“マイカーローン”商品について、“マイカーローンとは?”という、直接的な商品説明のコンテンツは用意しません。“マイカーを買わなければならない状況”や“マイカーの選び方”になど「関心テーマ」に関する情報を主軸にしたページを提供し、多くのユーザーの遷移を生み出し、そこからCVを生み出しました」(小寺氏)
ヤフーのプロダクト設計が緻密になされているため、遷移後のUIに戸惑うユーザーが少ない。よってユーザーは、地銀のドメイン上に移ったとわかっても、それまでと地続きのエクスペリエンスであり、関連性を感じるコンテンツとして享受できるのだ。