DMとメールの組み合わせで1.8倍の効果を得たSansan
続いて登場したのが、Sansan マーケティング部 エバンジェリスト 石野氏だ。
この数年で驚異的にユーザー数を伸ばし、現在5,500社のユーザーを抱えるSansanでは、急激な成長にともなう課題も出てきた。その一つがリード管理データベースの重複だ。個別にデータベースを整備してきた結果、サイロ化された状態になっていた。
これを解決するため、同社ではMAツールのMarketoを導入。「誰がどうリードに当たっているかを管理し、プロセスを再構築した結果、受注件数が2倍になりました」と石野氏は説明する。
だが、石野氏自身も手を動かして手応えを感じるうちに、デジタルに閉じている状態に対する限界も感じたという。MAツールの場合、最初はメールアプローチになるが、どうしてもそれでは届かない層が存在するという。また、良かれと思って展示会で名刺交換した人に自動でメールマガジンを送っても、その急激なアプローチにひいてしまう層も一定以上いるそうだ。
こうした層に対し、どうアプローチするべきか。石野氏が悩んでいた時に紹介されたのが日本郵便だった。
「デジタルネイティブの世代からすると、DMは面倒臭いというイメージもありました」と石野氏は説明する。しかし、名刺情報を起点としてMAとDMを組み合わせることで、それを超える効果を見込んで日本郵便とMAツール、そして効果検証の担当として博報堂プロダクツが進めるプロジェクトで実証実験を行ったのが、2016年7月下旬~8月末のことだ。
同社ではDMの実際の効果を測るため、コールドリストをDMのみ・メールのみ・DM+メールという三つのクラスタに分けてテストを実施した。効果検証のために、ユニークURLを発行してDMに印刷し、クリック率を測ったそうだ。結果は、メールよりDMのほうが反応が高く、それよりさらに効果があったのがDMとメールの組み合わせだったという。最も効果が高かったDMとメールの組み合わせは、メールのみのクラスタと比べて1.8倍のクリック率、1.5倍のアクセス率があったという。
「実際にやってみると、圧倒的な受注への貢献効果がありました。最終的なトップラインが上がって受注が伸びた。かけたコストの分以上に効果が出たわけです。その理由は三つあります。
第一に、メールで届かない層へリーチできたこと。第二に、DMは長期的なアクションが望めること。今回のテストでも、発送後3ヵ月を経ても商談につながるケースが多数ありました。第三に、上司から部下へとDMがわたり、さらに社内の他部署へと拡散するシャワー効果があることです。メールではなく、モノを送ることで拡散効果があることが実証されました」(石野氏)
Sansanではこの実証実験で感触をつかんだことで、次回はホットリードに対して同じ試みを実施するアイデアも出ているそうだ。
「デジタル vs. アナログ」から「デジタル&アナログ」へ
石野氏の発表を受けて、鈴木氏は「これまでデジタルとアナログは、『デジタル vs. アナログ』という二項対立で捉えられていました。しかし今日では、二項共存、さらにいえば多項多立が求められる時代です」という。
ただ、共存するといってもテクノロジーの有効活用は必要だ。データドリブンで精緻なターゲティングが可能になったため、よりダイレクトにマーケティングアプローチできるという利点がある。
そして仮に、思うような成果が得られないとしても、「そこから得られる学びは必ずあるはずです。挑戦してみるそれ自体、失敗はありません」と鈴木氏は断言する。
マーケティングの限界を突破する鍵は、実はアナログにあるのかもしれない。