膨大に取得できるログデータを味方に
押久保:なるほど。確かに、生活者がスマホを持ち歩くことで、多種多様なデータの取得が可能になっています。
長崎:意識的に回答してもらうアンケートと違って、スマホで取れるのは、いわゆるログデータですね。ネットリサーチは狭義だとネットアンケートリサーチということになりますが、広く捉えれば、ネットで収集できる情報すべてを対象に調査することとも言えます。ネット上の行動履歴や、位置情報などもそうですし、他にもいろいろな情報の種類と収集方法があると思います。
このバラエティを広げたという点で、スマホの役割はとても大きいですね。何せPCは持ち歩きができないですし、意識的なアンケートだけで人の心を推し量るには限界があります。
押久保:スマホの普及によって、ネットリサーチに新たな価値が生まれているんですね。ただ、その分、膨大な種類のデータを使いこなして読み解いていく、マーケターの技量も問われそうです。
長崎:まさに、そうですね。特に難しいのは、コミュニティの中で変わっていく反応をどう加味するかという点だと思います。昔は「この商品の味は好きですか? ラベルはどうですか?」と一対一の関係性の中で反応を得て、それを積み重ねて考えていました。
今はソーシャルの登場によって生活者の間でも情報が回っているので、同じ「好き」という回答でも以前と同じには受け取れないというか。デジタル上で仮想集団を構築し、情報がどう回るかのシミュレーションを加味するといった方法も、この時代ならではです。
「生活者の本質を見たい」深まる企業のニーズ
押久保:そうなると、いわゆるアンケート調査とはかなり離れてきますね。実際に調査をマーケティングの判断に使っている企業サイドでは、こうした潮流をどう捉えているのでしょうか。ニーズの変化などはありますか?
長崎:狭義のネットアンケートリサーチに求めるものは、以前とそう変わりませんが、広く「顧客の心を知るための調査」という意味合いでいうと、生活者の本質を見たいというニーズは非常に高くなっていると感じます。それは、スマホの普及で調査の可能性が広がっている流れと、表裏一体ですね。
いろいろな言葉が使われますが、“カスタマージャーニー”が代表的です。一人の顧客がどういう気持ちの変遷をたどり、どう行動するか。インサイトを知りたいとか、その瞬間に感じていることを把握したいといった話も、同じニーズだと思います。
押久保:御社が提供しているシングルソースパネル「i-SSP」は、まさに一人の人がどういう行動をしているかを追って見ていけるものですよね?
長崎:そうですね。ただ、メディア接触に焦点が当たっているので、それ以上に生活者を多角的に捉えたいニーズが高まっているなと。ソーシャルでの接触などはもはや企業側でもコントロールできないので、そこまで加味してリサーチがどう貢献するかは、我々の課題でもあります。