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MarkeZine Day 2017 Spring レポート(AD)

プライベートDMPを機械学習・ディープラーニングで最適化せよ 理論からレコメンド・MAの最新手法まで

 機械学習やディープラーニングは早く採用すればするほど競争優位を実現できる圧倒的な技術なのだという認識がマーケターに広がりつつある。けれども、AIを実際の業務に採り入れるハードルは依然として高い。MarkeZine Day 2017 Springでは、長年データ分析に携わりAIの活用にも明るいアクティブコア代表の山田氏が登壇。AIの本質から、プライベートDMPにAIを組み込む具体的なメリットまでを明快に語った。本稿ではその講演のレポートをお届けする。

分析、セグメント、レコメンドを一気通貫に提供

  山田氏が代表を務めるアクティブコアは、顧客軸での分析・レコメンド・マーケティングオートメーションをワンストップで実行できる「アクティブコア マーケティングクラウド」を提供している。

株式会社アクティブコア 代表取締役社長 山田賢治氏
株式会社アクティブコア 代表取締役社長 山田賢治氏

  同社は、顧客IDを軸に統合したデータをもとに、顧客を可視化・分析し、レコメンド・マーケティングオートメーションをワンストップで実現する仕組みを開発し、特許を取得している。

  本講演では、機械学習やディープラーニングの概論を展開したのち、プライベートDMPでデータ統合し「個客」にアプローチする方法を紹介。最後には、プライベートDMPに対して機械学習およびディープラーニングを活用して成果を拡大するための最新手法を解説していく。

マーケティングで活用されるAIとは

 まず山田氏は人工知能(以下、AI)についての概論を展開していく。AIとは、ジョン・サールの定義によれば「コンピュータを用いて人間と同様の知能を実現させること」を意味している。

講演資料より(以下、同)
講演資料より(以下、同)

 「一般に言われるAIは、人間が知能で行っていることを機械にさせるもので、具体的に言えば、人間の思考パターンを機械で置き換えるものです」(山田氏)

 このようなAIの一つである機械学習とは、確率・統計モデルに基づくパターン認識を指している。与えられたデータからいくつかのパターンを認識・学習し、未知のデータを分類・予測するものだ。手法としては、ニューラルネットワークや決定木(デシジョンツリー)、ランダムフォレスト、SVM(サポートベクトルマシーン)、クラスタリングなどがある。

 機械学習の本質は、正解との誤差から学習モデルを更新することにある。まず学習用のデータをもとに学習モデルを構築する。そのモデルに入力データを入れて得られた予測データと、正解である教師データと突き合わせる。そして、その誤差を学習モデルにフィードバックする。

 次に、本番データを入力して、予測や分類を行いグルーピング・売り上げ予測・クラスタリング・レコメンド・アラートを実施しながら、随時モデルを更新し続けていくのである。

機械学習の限界とディープラーニングのインパクト

 機械学習の課題は、機械が正しく学習するために適切なデータを用意しなければならないことにある。

 「機械はどのようなデータが適切かわからないので、データは人間が用意してあげる必要があります。そしてデータの内容として、性別があったほうがいいのか、年齢があったほうがいいのか、会社規模があったほうがいいのか、といったことは人間が考える必要があるのです」(山田氏)

 次に、機械学習の弱点として、特徴量設計ができないことが挙げられる。特徴量とは統計モデルにおける説明変数のことで、目的となる変数を説明してくれる要素だ。サイト訪問者の購入が目的変数だとすれば、サイト訪問の有無やメルマガ流入の有無といったことが説明変数や特徴量となる。特徴量設計とは、こういった注目すべき特徴を定量的に表して、機械に与えることを意味する。

 この機械学習の弱点を克服したのが、ディープラーニングである。ディープラーニングでは特徴抽出をアルゴリズムに組み込むことが可能になる。どの特徴を抽出すべきかを機械に学習させることができるのだ。

 昨年、プロ棋士に勝利して有名になったアルファ碁は、機械学習である教師あり学習とディープラーニングを組み合わせてモデルを精緻化できることが強みだった。まず教師あり学習で予測モデルを構築し、それを初期値として深層強化学習で改良していくことが、アルファ碁の予測能力を飛躍的に向上させたのだった。

プライベートDMPでデータを統合し「個客」アプローチを実現

 山田氏は機械学習とディープラーニングについての概論に続いて、アクティブコアが提供するマーケティングクラウドを例に、プライベートDMPで顧客IDを統合して顧客にアプローチする方法を説明していく。

  プライベートDMPの役割として最も重要なのが、会員IDとWeb履歴を紐づけることだ。通常のアクセス解析では、デバイスごとに割り振られるCookieをもとにアクセス解析を行う。一方プライベートDMPでは、会員IDを軸にすることで、デバイスをまたいだデータ統合ができる。

 それどころか、Web行動履歴・メール・広告への反応データと、顧客データや属性情報を結び付け、さらには売り上げデータなどの社内データ、外部のDMPが保有するオーディエンスデータとも紐づけることさえも可能だ。

 こうして拡張された顧客情報をもとに、ターゲットとなる顧客を抽出し、コミュニケーションシナリオを作成し、メールやWebやアプリといった各デバイスで顧客に情報を届けることができる。

 たとえば、優良顧客の条件を分析し、優良顧客を抽出することができたとする。次に、優良顧客のデータとYahoo!DMPが保有するオーディエンスデータをCookieベースで同期させれば、さらに施策の可能性が広がる。具体的には、優良顧客に対して離反を防ぐために広告を打つことや、優良顧客と同じ特徴を持つ新規ユーザーに対して広告を配信することができるようになる。

プライベートDMPとレコメンド・MAを連動させる

 BIツールなどでは分析画面からアクションを起こせないが、アクティブコアのプライベートDMPでは、分析画面上でアクションまで実施できる。これはアクティブコア マーケティングクラウドの強みの一つだ。

 たとえば、分析画面からキャンペーン対象を絞り込み、配信予約し実行するということができる。メール配信システムはMAに内蔵されている。

 分析面の強みとしては、顧客分析や広告分析から個へ落とし込んでターゲット抽出できることが挙げられる。

 レコメンドについては、Web行動履歴だけではなく、属性やオフライン行動を加味できるので、より精度の高いパーソナルなレコメンドが実現可能になっている。

 マーケティングオートメーションでは、単純なセグメント配信よりも「個客」に寄り添ったアプローチができる。ステップメールを送るにしても、IDに紐づいた属性・行動履歴をもとにレコメンド要素を追加して送ることで、クロスセルが期待できる。

機械学習・ディープラーニングでプライベートDMPを強化する

 最後に山田氏は、同社のツールに機械学習・ディープラーニングを採り入れ、プライベートDMPの可能性を最大限に引き出す手法について紹介した。

自動セグメント作成

 一つ目の事例として山田氏が挙げたのが、自動セグメント作成機能だ。購入履歴や利用頻度、性別やWeb行動履歴を機械学習させることで、CVしそうな顧客を自動抽出することができる。

 従来のスコアリングがしていたように、ページAを見たらプラス3点、メール流入でプラス1点といったように、手動でアクションに点数を設定するのではない。機械学習・ディープラーニングの結果から、CVにつながる特徴を自動的に学習して、スコアリングに活かすことができるのだ。

ディープラーニングで次回購入商品を予測

 二つ目の事例は、ディープラーニングによるレコメンド精度の向上についてだ。

 従来のアクティブコアのレコメンドエンジンは、協調フィルタリングの手法を採用していた。協調フィルタリングとは「こういう人は、これを見たらこれを買う」というものだ。次に買う可能性が高いとされる商品を、レコメンドページに表示することができる。レコメンド上位5つと顧客が買った商品が一致する確率を調べたところ64.3%あった。

 このレコメンドエンジンにディープラーニングを導入することで、同じ確率が78.0%にまで向上した。レコメンド上位10個に限れば購入商品が一致する確率は94.1%にも上った。

機械学習によるメール配信時間の最適化

 次に山田氏が紹介したのが、機械学習によって個別の顧客に対してメール配信する開始時間を自動的に最適化する機能だ。

 顧客特性によりメールを開きやすい時間が午前中・正午・午後・夕方と分かれているはずなので、特性ごとに配信時間をパーソナライズすることで、全体の開封率を上げることができる。

 ある事例では、メールを12時に一斉配信した場合の開封率が19.1%だったのに対し、配信時間を最適化して発送した場合、開封率は29.7%にまで向上した。

 ツールがなくても、ためしに会員登録の時間や直近のCVの時間帯で、配信時間を分けてメールを配信してみてはどうか、と山田氏は提案する。どの顧客層がどの配信時間ならCVしやすいかが、おおよそわかるはずだ。配信時間を最適化することで成果が上がることが実感されたら、ツールの導入を検討するのがおすすめだという。

自動ABテスト機能

 最後に山田氏が解説したのが、機械学習によるABテストの省力化だ。

 たとえば、メール配信でABテストを実施すると仮定する。その場合、全体の配信のうち2割を使ってABテストを行い、効果の高いと判明したほうのクリエイティブを残りの8割に配信することになる。

 この仕組みを、機械学習を活用することで全自動化することができる。従来のABテストでは、テスト・検証の手順を踏んだ上で2回目から改善内容を反映していたが、機械学習を採り入れることでテスト・検証・実行を1サイクルで完了することが可能だ。このようにフローが改善されることで、業務時間を大幅に短縮することが期待できる。

AI時代におけるマーケターのミッションとは

 山田氏は講演のまとめとして、将来AIがさらに普及したときマーケターの仕事がどのように変わるかというビジョンを語った。

 ディープラーニングに特徴量を自動抽出させることが今より一般化したとしても、入力層にどのようなデータを入れるかはある程度人間が決めなければならず、システムに任せることはできない。画像データならばそのままツールに入力すればよいので簡単だが、マーケティングデータの場合、マーケターがデータにどんな要素を含めるか、よく考える必要がある。

 つまり、今後どれだけAIが普及したとしても、AIに学習させるデータは人間が判断して収集する必要がある。学習させるデータの質が悪いと、どんなに素晴らしいツールやアルゴリズムがあってもおかしな予測になってしまう。人間の取り組みによって収集・整理された入力層の質・要素が、機械学習・ディープラーニングのポイントなのだ。

 AIや機械学習の恩恵として、単純作業・繰り返し作業・レポート作成の自動化は既に実現しつつある。山田氏によると、今後はこれに加えて、売り上げやリスクの予測、ボットを活用した接客、レコメンドの精度向上、自動分析、自然言語処理、ターゲット自動抽出といった技術がビジネスの現場へ普及していくことが予想される。

 「デジタル化が進み利便性が高まったが、マーケターが日々向き合う仕事量はむしろ増えているのではないでしょうか。分析、レコメンド、調査やメール配信、アプリ管理と、マーケティング担当者の仕事は多くなりがちです」(山田氏)

 今後はこれらの煩雑なルーチン業務を圧縮し、売り上げを増やすための戦略を立て、施策を打ち続けることが重要になってくる。「考える」時間と「新しいことを実行する」時間を確保することがマーケターのテーマになる、そのように山田氏は語り、講演を締めくくった。

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この記事の著者

ヒロ88(ヒロハチジュウハチ)

ビジネスジャンルを中心に取材、編集を行なう。得意ジャンルは不動産開発、メディア開発。1988年生まれ。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/04/24 09:00 https://markezine.jp/article/detail/26362