犯してはならない「4つのミス」
コンテンツを通じてターゲットユーザーの心を動かしたい場合、實川氏は犯しがちな4つの過ちを指摘した。

特に上図1について、實川氏は「コンテンツマーケティングに取り組む人はすごく真剣に考えるべき」と力を入れる。「心を動かす」=「驚き」と定義した上で、驚き(感情が動く)に繋がるコンテンツを提供できているかを強く問うのだ。
「簡単に想像できる内容は、読者にとってもつまらないものです。『この切り口は考えたことがなかった』といった“驚きの提供”が、ユーザーのファン化に繋がります。検索したらアクセスしやすいページなだけではファンになりません。辿り着いた後にアクションを起こしたくなる、健全な驚きの提供が問われています」(實川氏)
2については、實川氏から紹介された実話がわかりやすい。ターゲットが曖昧、思い込みのままだと失敗するという例だ。
「セキュリティ系企業のオウンドメディアを立ち上げたいという相談を受けた際に、当初はインフラエンジニア向けの学習情報や新技術に関する情報提供を検討していました。一方で、ターゲットユーザーへのインタビューやグループディスカッションを行うと、あまり検索経由で調べていないことがわかってきました。たとえば、現場の先輩に直接教えてもらったり、書籍で学習したり、というケースが大半。調べたとしても、日常的なキャッチアップではなく、困ったときに調べるだけでした。これでは学習情報での継続接触は難しい。事前の想定はそれっぽいだけで、外していたわけです」(實川氏)
Web担当者側目線で、“今日から使える◯◯選”という切り口も用心したい。目は引きやすいが、業界に詳しい人が見れば「一概に言ないのに」「簡単に実行できる技術ではないのに」などと、見抜かれる。避けたいのは業界の信頼を失うことだ。
PVに頼らない評価方法で判断する
3について、ブログ更新「だけ」にフォーカスされがちで、心を動かすコンテンツが用意できているかとは関係ないことを問う。ここでマーケティングのファネルを参照した。
コンテンツマーケティングとは、コンテンツを用いたマーケティングであり、マーケティングの全フェーズに関わる。もし目的が認知向上に限るのなら、たくさんの記事更新は理にかなっているのかもしれないが、もっとサービスのことを知りたいと思った場合は、どのようにすべきだろうか。
「サービスページが充実しているか、SNSやメルマガはやっている場合に関連コンテンツが用意されているか、などを状況ごとに見ていきましょう。ファネルの上側の認知施策ばかりを考えがちですが、コンバージョンに近いファネルの下側にも力点を置きましょう」(實川氏)
4については、PV数を高めても、ファンの心をつかんだりサービスの利害を伝えているかの判断にはならない。實川氏は、アナリストの清水誠氏が提唱する「コンセプトダイアグラム」を参照し、PVに頼らないコンテンツマーケティングの評価方法を解説した(上図)。
「この図ではアンティーク家具店を例にしていますが、“詳しくなる”という軸と“揃えたくなる”軸の2軸を用意し、スタートは“家具を求めている人”。ここから軸にあわせたアクションポイントを考え、各アクション同士の間にKPIを設定します。この例だと、“普通に探す”と“雰囲気を知る”の間にフォトギャラリーページのセッション数というKPIとするのがいいでしょう」(實川氏)
これだと、改善すべきKPIが注力すべきコンテンツとリンクしてわかりやすい。上司や決定権のある相手に説得する際、PVではなくKPIを用いた折衝にも繋がられる。
