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【別所哲也×本田哲也】Wテツヤが語るこれからのブランドとブランデッドコンテンツ

見たくなる物語の2つのパターン

別所:「Branded Shorts」をはじめてわかってきたのは、僕ら自身が視聴者としてどういったものを見たいのかということ。これは大きく分けて「ベターライフ」か「アナザーライフ」の2つです。

 ベターライフというのは、自分の人生をより良くしてくれる何かを提示してくれるストーリーです。アナザーライフは、自分とは本来無関係だけど垣間見たい世界のこと。たとえば、犯罪組織のスリリングな話であったり、ファンタジーであったりですね。

 今のブランデッドムービーは、どちらかというとベターライフを描くことが多くなっています。家族や社会との関わり方や絆を描いているものが多い。ですが、ベターライフだけではなく、アナザーライフといのも大きなキーワードだと思います。

本田:海外含めて、企業は保守的な場合が多いですからね。ただそれだけじゃいけないと、私も思います。

 ここ最近のカンヌライオンズのトレンドとして、安全なベターライフの見せ方から飛び出していこう、勇気を出そう、「ブレイブ」になろうというのがあります。微妙な社会問題に物申すことでブランドとして言いたいことを伝える、勇気を持った企業が出てきています。今年のライオンズエンターテインメントのエンターテインメント部門でグランプリを受賞したのは、スペインに本拠を置くサンタンデール銀行の「ビヨンド マネー」というブランデッドムービーです。あなたの経験や思い出を売れますという世界を描いていて、「お金の価値は何か?」「お金に変えられない価値とはなんだろう?」ということを投げかける内容です。この作品の狙いは明らかに物議を醸すこと。これを見た人々が「僕はそう思う」「私はこう思う」と議論する。議論になることを、あえてやるというのは広告・PR業界のトレンドでもあります。ベターライフの表現からちょっと広がっていく傾向が感じ取れます。

別所:感性に訴えかけて、「どう思う?」というところに行き着くかどうかがすごく大事! 要はそれがシェアにつながるかどうかですから。

本田:どういう理由やモチベーションのときに人はシェアするかという話ですね。「感動した!」「これは役に立つと思うよ」というのもシェアする理由になりますが、「どう思う?」という投げかけがあると、受け取った人も「俺はこう思うけどどうかな?」とか「私はこうなんだけどどうかしら?」と、「どう思う?」の連鎖が広がっていきますよね。

 人間の本能として、「自分はこういう人間だ」ということをある程度社会から理解されたいということがあります。堂々とアピールするのは抵抗感あるでしょうが、ある問題に対して賛成なのか反対なのか、どう感じているのかを通して自己表現するという形ならやりやすいんですね。

視聴環境の変化

別所:動画の視聴はスマホがメインになっていくことでしょう。SSFF & ASIAセレクションのショートフィルムをキュレーションサービスantenna*で配信しています。また、SSFF & ASIAの映像作家を含めたクリエイターネットワークで企業のビジュアルマーケティングをサポートするFROGLOUD(フログラウド、パシフィックボイスの関連会社)とantenna*とで、ブランデッドムービーの制作・配信サービスの提供もはじめました。その取り組みの中でわかってきたのは、15秒で離脱する人が多いということです。奇しくもテレビCMの尺と同じ15秒。それ以内だと、とりあえず見てもらえる可能性が高まります。15秒以降からは、自分に関係ないと思われると見てもらえません。15秒を一つの折り目として、その先を見てもらえる工夫が必要になってくるのです。

本田:自分に関係あると思ってもらえるような物語なり話題なりニュースというものを中間地点に作っていかないと、ということですね。

別所:もう一つ重要なのは音がなくても伝わる内容かどうか。スマホでの視聴は電車の中であったり、カフェであったり、音を出せない状況であることも少なくありません。そういった、視聴環境の変化に寄り添いながら表現を修練していく必要がありますね。

本田:メディアが変わっても、どういう状態で見られているかということを想像する力は、作り手や発信者にとってすごく大事ですね。そういった想像力が欠如してしまうと、どんな大金を注ぎ込んで作品作りしても失敗します。優秀なマーケターはどんどん外に出ていっていて、机の上だけでは仕事していませんし。答えは街にある

別所:また、僕らやマーケターが改めて考えなくてはならないのは、「そもそもブランドとは?」ということ。それをもう一人のテツヤ、本田さんにも伺いたいのですが――

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改めてブランドとは?

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この記事の著者

市川 明徳(編集部)(イチカワ アキノリ)

MarkeZine編集部 副編集長
大学卒業後、編集プロダクションに入社。漫画を活用した広告・書籍のクリエイティブ統括、シナリオライティングにあたり、漫画技術書のベスト&ロングセラーを多数手がける。2015年、翔泳社に入社。MarkeZine編集部に所属。漫画記事や独自取材記事など幅広いアウトプットを行っている。
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※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/08/01 10:00 https://markezine.jp/article/detail/26743

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