専用プラットフォーム「TONARIWA」を提供
MarkeZine編集部(以下、MZ):大手企業を筆頭に、LINE ビジネスコネクトを活用した事例が続々と出てきています。今回はそんな紹介も交えて、電通アイソバーの清水さんと冨田さんにお話をうかがいます。まずはお二人の役割と、組織体制について教えていただけますか。
清水:ソーシャルメディアマーケティング部では、ソーシャルを活用したマーケティングサポートを企業に提供しており、私が責任者を務めています。部内にはコミュニティマネジメント、ソーシャルエクスペリエンスデザイン、ソーシャルソリューションの3つのグループがあります。
冨田:私は、そのうちのソーシャルソリューショングループのリーダーを務めています。当グループでは、ソリューションを企業に提案する営業の機能と、運用開始後にサポートしていく技術対応の機能を備えており、LINEとの窓口も担っています。
また、当社が開発したLINE ビジネスコネクト専用のプラットフォーム「TONARIWA(トナリワ)」も私のグループで主に扱っています。TONARIWAは、APIを使って1対1のメッセージングプログラムを開発したりセグメント配信したりすることができます。
MZ:企業のマーケティングを支援する上で、電通アイソバーならではの強みはどういった部分でしょうか。
清水:企業にソリューションだけを提供することは少なく、各種ソーシャルメディアでのコミュニティ設計やコンテンツ開発、またユーザー体験を向上させる最適なクリエイティブの知見を踏まえた開発と運用サポートを連携して支援できるので、それが当社の強みだと思いますね。
キャンペーン活用からマーケティング支援へ
MZ:LINEとは、いつごろから連携されているのですか。
清水:2015年、LINE ビジネスコネクトのAPIがまずクローズドで公開されましたが、その段階で開発面でのパートナーとして連携していました。背景としては、以前からコミュニティマネジメントグループで、LINEの効果的な運用を企画提案していて、それが相当な数になっていたんですね。
LINEを使ったキャンペーンのアプリケーション開発なども多く手がけていたので、そうした部分が実績として認められるようになり、現在はLINE ビジネスコネクトのゴールドパートナーになっています。
MZ:TONARIWAは、それを機に開発されたのですか。
清水:そうですね。これまでは、企業の要望に合わせて都度オンプレミスで開発していましたが、汎用的なシステムを提供できるパートナーが望ましいという意向がLINEにありました。我々としてもこのタイミングでさらにLINE ビジネスコネクトの活用を拡大したかったので、プラットフォームの開発に着手しました。
開発にあたっては部門横断のプロジェクトチームを組み、冨田のグループのほかに社内の専門的な技術部門とも連携して進めました。
MZ:当時からここまで、案件の内容に変化はありましたか?
清水:LINE ビジネスコネクトを使うと、LINEを介してキャンペーン応募などを簡単にできるので、最初はキャンペーンプラットフォームとしての活用が多かったです。動画の募集も容易なので、今もそうした事例は一定数ありますが、それに加えてCRM的な活用やECに誘導して直接購買につなげるなど、マーケティングやビジネスそのものを推進する活用が増えています。
LINEのメディア的価値とプラットフォーム的価値
MZ:短期的な活用から徐々に長期に、購買やエンゲージメント向上の目的でも使われるようになっているんですね。これまで、累計何社くらい支援されているのですか?
清水:30社を超える企業を支援しています。
MZ:事例が増えると、新たに関心を持つ企業も増えている状況でしょうか。
冨田:そうですね。それに、以前と比べていろいろな段階の企業からご相談いただくようになっています。かなりリテラシーが深まっている企業だと、こういうことをしたいと具体的な構想をお話しいただくこともありますし、これまであまりLINEのようなサービスのビジネス活用に積極的でなかった企業とは、現状の課題にLINEをどう活用できるかという点から一緒に考えることも多いです。
MZ:そうなると、TONARIWAもカスタマイズが必要になることが多いのでしょうか。
冨田:TONARIWAも汎用的ではあるものの、やはりLINE ビジネスコネクトでできることが多いだけに、案件ごとに細かい調整は発生します。そのため、それを見込んで柔軟に対応できるように設計していますし、その点が強みですね。
MZ:そうなんですね。幅広い目的での活用を支援する中で、今LINEはどういった機能を担うようになっているのでしょうか?
清水:グローバルでは様々なメッセージアプリがありますが、日本国内ではLINEは生活者に最も接触頻度が高いアプリになっていると思います。それを踏まえて、企業に対しては「メディア的な価値」と「プラットフォーム的な価値」という2つの価値を説明しています。
LINEでチケット予約から搭乗までできるAIRDO
MZ:「メディア的な価値」と「プラットフォーム的な価値」、それぞれについて解説いただけますか。
清水:まず、単純に多くの人が使っているので、これまでのマス広告と同等レベルでメッセージを発信できます。企業が発行するスタンプも、相当な拡散が見込めます。そうした点で、メディアとしての効果が期待できます。
もうひとつは、顧客育成のプラットフォームとして活用できるという点です。仮に最初は300万人に一斉配信したとして、その後はセグメント別や1対1のメッセージ配信を効果的に使ってコンバージョンに近づけたり、さらにエンゲージメントを強化したりすることができます。認知からコンバージョン、そこからのエンゲージメント構築とファン化まで、一気通貫して利用できると捉えています。
冨田:特にプラットフォームとしての価値は、他のソーシャルアプリにない特徴ですし、LINE ビジネスコネクトの特徴とも大きく関わっています。大量リーチから1対1まで絞り込めることで、キャンペーン利用だけでなくビジネス自体の推進が可能になっていると思います。
MZ:なるほど。では、具体的な事例を教えていただけますか?
清水:事業に直接貢献する活用では、航空会社で初のLINEでチケット予約から搭乗まで可能にした、AIRDOの「AIRDO ONLINE Service」が好事例でした。
エンドユーザーの動画再生回数が合計750万に
MZ:それは便利そうですね。
清水:それまでは、予約から搭乗までのカスタマージャーニーがかなり複雑になることもあったのですが、インターフェースをLINEに一本化することで、ユーザー体験がすごくシンプルになりました。
また、旅行への意向を高めて予約を促す仕組みとして、LINEで北海道の魅力を発信するBot形式の「旅ナビ」も立ち上げました。この情報に接触して、そのまま予約するケースも実際に多く出てきており、結果的に搭乗客数が前年比114.2%に伸長し、過去最高になったと聞いています。
冨田:キャンペーン的な活用だと、昨年11月11日の「ポッキー&プリッツの日」をめがけて展開したダンスコンテスト企画「ポッキー シェアハピ ダンスコンテスト」の反響が大きかったですね。動画を撮って投稿してもらうのですが、スマホで撮った動画をそのままLINEで送信できるので、その手軽さから応募総数が伸びました。
また、投稿を受け付けて事務局のチェックを終えたら「マイページにアップされました」とプッシュ通知を送ったことも、拡散効果を高めたと思います。そのマイページを自分のSNSでシェアする人が多かったので、投稿動画の再生回数は合計で750万まで伸びました。
MZ:合計とはいえ、一般の人が撮った動画でそこまで伸びたんですね。
冨田:我々も驚きましたし、応募後のエンゲージメント構築がしっかり図れたと実感した事例でした。LINE ビジネスコネクトの機能を複合的に発揮できたと思います。
LINE ビジネスコネクトと「ブランドコマース」との親和性
MZ:活用の幅が本当に広がっているんですね。冒頭で、コミュニティ運営やUX最適化まで含めた支援が御社の強みだというお話がありましたが、特にLINE ビジネスコネクト活用で得意とする案件のタイプなどはあるのでしょうか?
清水:どのような目的にも柔軟に対応できますが、ひとつ当社が目指す姿として「ブランドコマース」という概念があります。ブランディングとコマースは、施策や指標の部分で切り離して語られがちですが、テクノロジーとクリエイティブを掛け合わせれば、ブランド認知から購買、関係構築までの一貫した流れを生み出せます。
この概念と、LINE ビジネスコネクトの機能はとても親和性が高いので、常に念頭に置いていますね。コマースまでつながったビジネス活用の事例は、当社のグローバルネットワークへもシェアしていきます。
MZ:最後に、今後パートナーとしてどのような支援をしていきたいか、お聞かせください。
冨田:LINE ビジネスコネクトのゴールドパートナーとして、クライアントのビジネスにどう貢献できるかが主眼なので、今後もひとつひとつの案件の質を高めて成果を上げていきたいですね。それが好事例を増やすことにもつながり、活用の幅も広げるのではないかと思います。
清水:ビジネス活用の増加にともなって、我々の相対するクライアントの部門もマーケティングから事業企画などにも広がっています。なので今後は、LINE ビジネスコネクトを使ったビジネスモデルを提案するなど、コンサルティングに近い領域まで踏み込んで支援できればと思います。事業自体を推進する、まさに「ブランドコマース」を実現するプランをどんどん提案して、同時にそれを当社の強みとして、LINEから指名される状況も目指したいですね。