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Back to Mail Marketing(AD)

今も昔も“最強の利益創出ツール” 凄腕ECマーケターたちが語る、メールマーケのリアルとポテンシャル

 チャネルが多様化しても、常に顧客とのコミュニケーションの主軸を担ってきたのは「メール」だ。だからこそ、今改めてメールマーケティングの価値について振り返る必要があるのではないか。チーターデジタル(旧・エクスペリアンジャパン)主催で9月13日に開催された「Back to Mail Marketing 2017」の講演で、オイシックスドット大地 西井敏恭氏、ディノス・セシール 石川森生氏の二人がメールマーケティングのリアルとポテンシャルを語った。

「最強の利益創出ツール」なのは、今も昔も変わらない

写真左から、MarkeZine編集長 押久保 剛 オイシックスドット大地 西井 敏恭氏 ディノス・セシール 石川 森生氏
写真左から、MarkeZine編集長 押久保 剛
オイシックスドット大地 西井 敏恭氏
ディノス・セシール 石川 森生氏

押久保:はじめに、ご自身のプロフィール、現在のお仕事についてご紹介ください。

西井:食品宅配ECサイトのオイシックスと、大地を守る会が統合してできたオイシックスドット大地で、今年4月からCMT(チーフマーケティングテクノロジー)という役割に就きつつ、CMOサポートのサービスを展開するシンクロの代表取締役も務めています。メールマーケティング歴は15年ほどで、メールマーケティングの重要性というのは日々感じている部分です。

石川:元々はBtoB側のソリューションベンダーにいて、その後ファッションECサイト「MAGASEEK」、製菓製パンECサイト「cotta」の運営などを経てディノス・セシールに移りました。ずっとEC畑にいるので、メ-ルを打っていない日はないという感じです。当社は元々カタログ通販の会社です。

 全体売上1,200億円の中の50%強がECの売上で規模は大きいのですが、あくまでカタログ通販の受注チャネルの範囲に留まっている状態なので、今後ECの観点でもっと戦略立てて実践していける状態にするのが今のミッションです。

押久保:ズバリ、現状のメールマーケティングをどうお考えですか。昔と比べ外部環境は激変していると思いますが。

西井: 正直メールマーケティングの施策自体は、そこまで変わってはいないと思っていますが、確かに配信環境は変わっています。一番の変化は、メールを受け取るデバイスの中心がスマートフォンになっていることです。PCで読まれる前提であった頃と、メールの作り方など大きく変わりました。ただ、タイトルが重要など、メールの効果を高める方法はあまり変わっていません。しかし、できること、やるべきことをまだやりきれていない企業が多いように見えます。

 たとえば、ECサイトをお持ちの企業で、カート離脱したお客様へリマインドメールを送る、入会したユーザーにステップメールを送るなどの取り組みができていない企業は多いですが、技術的には2010年頃からできる環境はあります。

 近年話題のマーケティングオートメーション(以下、MA)も2009年頃からそれに似た機能が出てましたし、MAツールが増えた現在でも、活用しきれていない企業がとても多いです。それなので、メールマーケティングの伸び代はまだまだ大きいと感じています。

石川:僕もメールマーケティングの状況としては10年前とほぼ変わっていない印象です。今も昔もメールは『最強の利益創出ツール』だと思っています。

 EC事業は新規顧客の購入だけでは利益はでません。購入者の情報をハウスリスト化して、できるだけ安価な手法でリーチをかけて、リテンションし利益を上げていきます。そのときに一番安価にリーチできる手法がメールであって、その価値は変わっていません。

サイトの延長線上の感覚でブランドを伝える

西井:メールが効かなくなったとの話を耳にすることがありますが、それは受信するメールの数が増えて読みきれなくなっているだけで、メールをまったく読まなくなった人はいないと思うんです。

 短期的に売上を立てるミッションが課せられたときには、メールを2倍、3倍打つことですぐに売上が立つと、これまでの経験から実感があります。ただ配信数を増やしてもユーザーが読みたいメールでなければ読まれなくなるので、読まれるメールをしっかり作ることが重要です。それを「メールが効かなくなったからやめよう」というのは短絡的だと思います。

押久保:色々な手段がある中で、メールが最も優れている点ってどこだと思いますか。

石川:他のチャネルと比べて載せられるコンテンツが量・質ともに全然違います。メールは、「サイトの延長線上」と捉えています。サイトで表現している内容をメールで展開することで、サイトに訪問する前にそこに何があるのかわかる状態がつくれているんですよね。

 そういう意味ではブランドへの入り口という意識で使っています。アプリのプッシュ通知やLINEで送るショートメッセージは、アテンションは取れますが、制限があるためリテンションではメールに及びません。そう考えると、今も昔もメールに替わるチャネルは、出てきていないと思います。

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現場の悩み其の1「メールのクリエイティブはHTMLかテキストか」

押久保:「クリエイティブ」についてお伺いしたいのですが、テキストとHTMLではどちらを使ったほうが効果が高いとお考えですか。

石川:商材によりますね。HTMLを使って視覚的に訴えなくても提供しているサービスが十分伝わるものであればテキストで問題ありません。しかし、ディノス・セシールのように明らかに商品を見せたほうが効果が上がると想像できるものは、当然、伝えられる量が多いHTMLのほうが良いでしょう。

西井:僕は完全にHTML派です。理由の一つは「一覧性」の点。テキストだと最後まで読むのが大変ですし、主要デバイスがPCからスマートフォンになったことで、メール閲覧画面が小さくなり一覧性が担保できません。

 二つ目は「ブランド」を伝えるという点において。メールが自社ブランドを伝えるツールにもなると考えると、HTMLのほうが表現できることが多いと思います。特にウェルカムメール、注文完了メールは、ユーザーとの一番最初のコミュニケーションになるので、そこではHTMLメールを使ったほうが効果が出ると考えています。

現場の悩み其の2「セグメント配信か、一斉配信か」

押久保:セグメント配信、一斉配信についてどう考えますか。石川さんから、セグメント配信しないほうが売上は最大化するとのお話を聞いたりもしたのですが。

石川:その話は「すべてのコンテンツに気合いが入っている」ことが前提です。セグメントをかけるのは、興味がないユーザーにメールが届いて不快な思いをさせないためや、無駄を省くためです。自分がお薦めできる商品・サービスだと思えるまでコンテンツやサービスを作り込めれば、担当者は自信をもってオファー(メール)を出せます。それができたら、ニッチな商材でない限り、とにかく全員にお知らせして、評価してもらったほうがいいと考えてます。

西井:ターゲティング全盛の時代ですが、セグメント配信はある意味減ってきている感もあります。デモグラフィックデータを使ったメール配信が流行っていた時代は結構前で、今はどちらかというとMAツールを使ってお客様のサイト上のアクションに対して配信します。オイシックスもセグメント配信というよりは、旬の商品やイベントに応じた内容のメールを作って、一斉メールを配信することが多いです。

押久保:セグメントすること自体が、送り手側の勝手な都合だったりしますね。シンプルに反応に合わせてメールを送った方が、効果的なケースも確かにあります。

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現場の悩み其の3「メールとCRMは掛け合わせるべき?」

押久保:セグメント配信の話とは逆になるのですが、より適切な配信をしていくという意味で、メールとCRMを掛け合わせたほうが良いのではという話が最近聞かれるのですが、どうでしょうか。

西井:「CRM=メール」の文脈で話される方が結構多いですが、CRMの領域の中にメールというツールがあり、メールだけ整理すればCRMが完結するということではありません。そこを一緒にすると危ないです。

 お客様との関係構築の中では、適切なタイミングで必要な情報を送るのはもちろん大切ですが、メール以外のツールでできることも多く、場合によってはそちらのほうが効果が高いこともあります。

石川:CRMを考えると、ライトコンテンツよりもライトタイミングが大切だと思っています。そう考えると、ユーザーが好きなときに開封するメールは、ライトタイミングに送ってもその瞬間に読まれる確率は低いため、アプリのプッシュ通知やLINEなどのチャネルのほうが、よりライトタイミングを掴みやすいと言えます。

 しかし、メールの「アーカイブできる」特徴を活かすことで、ユーザーとより適切な関係を構築することができるのも事実です。たとえば、高額な家電製品を購入したユーザーにアフターケアの方法を伝えるシナリオを考えたとき、LINEやSNS系ツールで知らせてもサービスとして作用しません。

 あえてメールで知らせて、検索できる状態にすることが、顧客接点としては有効です。重要なのはチャネルの特性を理解し、シナリオによってチャネルを使い分けることです。

メールマーケティングをより向上させるには

押久保:お二人が参考にしている企業の取り組みやメールがあればシェアしてもらえますか。

西井:日本企業だと、マーケティングという意味で上手いと思うのはZOZOTOWNさんですし、クリエイティブでいうと靴下専門店のタビオさん。サイトを見ても一つひとつのクリエイティブのレベルが高いです。

 石川さんが仰ったようにサイトのコンテンツ自体のレベルが高いとメールのレベルも高く、そこは共通しています。あとは海外企業のメールやサイトもよく参考にしています。

石川:コンテンツの参考という点では、ニッチサイトを見るほうが圧倒的におもしろいです。特におもしろいのはお酒関係ですね。規模としては小さいと思うのですが、お酒に対する愛情・愛着がサイトやメールから伝わってくる。1本のお酒に対して、3,000字ぐらいの長文メールを送ってくることもありますが、内容が深くて購入意欲が掻き立てられます(笑)。

西井:やはり、そういうストーリーや、読みたくなるメールを作るのは大前提ですね。

押久保:最後にメールマーケティングをやり尽くしたと思っている方々に対して、お勧めの見直しポイントを一言ずつお願いします。

西井:登録完了メールなど、最初に送るメールを見直すのが一番良いと思います。その出来が、その後のメールを読むか読まないかを決めるぐらいのインパクトをもっています。

石川:テクニカルなことを色々やる前に、お客様に対して価値あるコンテンツを提供できているか、もう一度見直すほうが重要です。たとえば小売りの場合、商品スペックが全部一緒なので、多数の商品の中から目利きして「この商品がいい」という付加価値を提供できるかどうか。その価値が提供できているかは見直すべきだと思います。

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/12/01 10:00 https://markezine.jp/article/detail/27138