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若者に銭湯ブームを巻き起こす! 花王が仕掛ける、ルトロンのおでかけ動画キャンペーン

 今年、花王は創業130周年を記念して、自社製品である「花王ホワイト」の、1956年の復刻デザイン版を発売する。そのキャンペーンとして、製品の販売場所でもある銭湯をフックに、動画メディアのルトロンで“おでかけ動画”を制作。他のメディアでも広告として展開している。その背景や狙いは何か、同社の豊田氏と廣澤氏、そしてルトロンを運営するオープンエイトの倉田氏に取材した。

知ればハマるはず。銭湯と若い世代との架け橋に

 花王の豊田氏は、「花王ホワイト」(以下、「ホワイト」)のブランドマネージャーとして、今回紹介する銭湯とのコラボキャンペーンを統括している。廣澤氏は、同社のデジタルマーケティングセンター コミュニケーション企画室でビューティーケアブランドのデジタルを活用したマーケティング設計を担当しており、今回の施策でも最適なWebメディアの選定や効果検証などを行っている。

 一方、スマホ・女性・動画を軸にしたマーケティング事業とメディア事業を展開するオープンエイトの倉田氏は、営業部の部長として、クライアントへマーケティング支援を統括している。

3名写真
(左)株式会社オープンエイト セールス本部 営業部 部長 倉田達也氏
(中央)花王株式会社 ビオレu・ホワイトグループ ブランドマネジャー 豊田正博氏
(右)同社 デジタルマーケティングセンター コミュニケーション企画室 廣澤祐氏

 今年、花王は創業130周年を記念して、同社の石鹸製品である「ホワイト」の、1956年の復刻デザイン版を発売する。これにあわせて同社は、花王の製品の販売が定番となっている都内の銭湯をテーマに様々なメディアでキャンペーンを展開することを決めた。この施策を行う背景に関して、豊田氏はこう語った。

 「趣味で銭湯を巡っているのですが、どの銭湯にも当社の製品が必ずといっていいほど置かれていることに気がついたんです。この入浴文化に当社の商品がこんなに浸透しているのであれば、『ホワイト』の担当になった際には、銭湯とコラボレーションした施策を打ちたいと思っていたんです。それでこの度、晴れて担当になったので、何かできないか廣澤に相談したわけです」(豊田氏)

 銭湯は今、2代目の若い経営者が運営しているケースが多いという。また、高齢者になじみがある場所と思われがちだが、たとえば皇居近くの銭湯では、ランステーションとして若いランナーに利用されていたり、都心の銭湯ではスーパー銭湯のように若い世代の人がカジュアルに利用していたりと、客層が広がっている。

 「豊田から話を聞いた時に突き刺さったのが、銭湯には高齢者と若者をつなぐ橋渡し役としてのポテンシャルがあるということ。であれば、若い世代と高齢者世代をつなぐ場所として銭湯の魅力を伝えることで、両世代に一体感を生み出せないかと考えました」(廣澤氏)

花王仕様に変身した銭湯を、おでかけ動画で紹介

 そもそも、今回のキャンペーンでは、花王創業130周年の記念オリジナルデザインを立たせ、「昔ながらの信頼できるブランド」というイメージを作る狙いがあった。そこで、まず東京都浴場組合と協力し、都内の銭湯にそのデザインを前面に打ち出した、レトロなデザインのポスターとうちわ、暖簾を設置することに決めたという。ただ、その施策には課題もあった。

創業130周年記念のオリジナルデザイン
創業130周年記念のオリジナルデザイン

 「若い人と高齢者を銭湯でつなぎたいと思う一方、リアルでの施策を若い人にどう知ってもらうかが大きな課題でした。設置するだけでは、知ってもらう動線が限られます。そこで、オープンエイトさんの運営しているルトロンというおでかけをテーマにした動画メディアでコンテンツを掲載することにしました。花王ブランドを押し付け過ぎず、銭湯に行きたくなる魅力を訴求することで、“こういう場所をご用意したのでぜひ来てみてください”と伝えられないかと考えました」(廣澤氏)

 ルトロンは、プチ贅沢をコンセプトに、新しい発見・体感ができる、グルメや宿泊施設、イベントなどの情報、ヨガやビューティーなどのHOWTOを中心に、クオリティの高いオリジナル動画を月間1,000本配信しているおでかけ動画マガジンだ。

 ルトロンを運営するオープンエイトでは、広告案件に関して、広告主が考えるブランドの良さや伝えたいメッセージを軸に、ユーザーが日常で利用するイメージが想起できるよう、動画メディア運営の知見を活かし、提案することを大切にしている。

 ユーザーが日常で利用するイメージを想起させることで、ユーザーの態度変容をより促すことができことがわかっています。今回の『ホワイト』と『銭湯』のコラボレーションも、ルトロンで銭湯特集を行った知見があったからこそ実現できました。今回も銭湯をフックにいかに『ホワイト』を知ってもらうか、メディア運営の知見を活かして展開していきます」(倉田氏)

巻き起こる人から枠への回帰

 他の媒体も選択肢にある中で、ルトロンに決めた理由はなんだったのだろうか。廣澤氏はこう語る。

 「ネット広告の歴史の中で“枠から人へ”という言葉が生まれたと思いますが、昨今のブランドセーフティやフェイクニュースの問題を受けて、『どこ』で『何を』読むかの一貫性が重要になってきており、“人から枠へ”と原点回帰する動きもあると思います。そのため、媒体を選定する際に、生活者がどういう情報を求めている場所であるかを考えることが重要視されるようになりました。

 その中でルトロンがメディアとして持つ特性が、ユーザーのどこかに行きたいというモチベーションとマッチしていて、銭湯や今回の施策にも合うと考えました」(廣澤氏)

 さらに花王ではルトロンでの訴求に加え、若い世代の人が銭湯に行きやすくなるよう、東京都浴場組合と共同で都内の銭湯マップを制作している。

 「銭湯マップでは500軒以上の銭湯が掲載されています。紙にはなりますが、それを持っていただきながら、銭湯巡りをしていただけたらいいなと思っています。私はまだ70件ほどしか行けておらず道半ばですが、すでに素敵な銭湯に多く出会えたので、若い人にもそういった体験をしてもらいたいですね」(豊田氏)

1コンテンツに留まらせず、多くの媒体で広く伝達

 今回の施策、「ホワイト」のことを広く知ってもらうのはもちろんだが、「この施策で商品が売れていくことももちろん重要だが、それよりもまずは空気作りをしたい」と廣澤氏は語る。

 「豊田の考えのように、銭湯の良さは若い人にもっと理解してもらえるポテンシャルを持っています。その良さを伝えることで、銭湯っていいなという空気感を作るのが今回のミッションだと考えています。若い世代に向けた施策を通じて、高齢者の方や銭湯好きなの方との一体感を作っていきたいです」(廣澤氏)

 動画は10月20日に公開されたばかりで効果検証はまだこれからだが、結果として銭湯の来場者が増え、その中の若年層の率が高まることを目指している。

 「ルトロン経由で来場したかを測るのは難しいと思うので、いかに効果計測するかが課題になると思います。ただ、今回はテストマーケティングの意味合いが強い施策でもあるので、やってみての反響を見たいなと思っています。

 また、オープンエイトさんのほうでブランドリフトサーベイを行っていただき、コンテンツを見てくれた生活者が、実際にその銭湯に行きたくなったかどうか、購買意欲が上がったかどうかなどいくつかの指標をチェックしたいと思います」(廣澤氏)

 オープンエイトでは、動画コンテンツの制作や展開から、効果の調査まで、全面的に支援している。同社はルトロンのメディア事業のみならず、国内最大級の規模と質を備えた女性系動画マーケティングプラットフォームの「VIDEO TAP」や動画記事広告を配信できる「NATIVE TAP」などのマーケティング事業を展開している。ルトロンで作成した動画タイアップ素材を上記配信プラットフォームで他媒体へも配信していくことができるのも強みの1つだ。

動画クリエイティブのクオリティの高さ訴求

 実際に20日より配信しているのは以下の動画だ。

 今回の動画を構成するにあたり行ったオリエンテーションで花王は、伝えたいことやブランドの概要の紹介にとどめ、ルトロンの制作部隊が感じたことをコンテンツにしてほしいと要望を出したという。その理由と動画のポイントについて廣澤氏は次のように語る。

 「読者に本当に届くコンテンツは、その媒体のことをよく理解している方が感じたままに描いた方が適切だと思い、細かに伝えませんでした。よくある話ですが、広告主としてブランドの良さを伝えたいという想いが先行すると、物が主役に立った押しつけがましいコンテンツになってしまいがちです。

 しかし、今回の動画はお客様が銭湯に訪れた時、どういった『体験』が待っているのか、また、その『体験』に花王ホワイトがどう寄り添っているのかを1つのストーリーで伝えられているのではないかと感じています」(廣澤氏)

おでかけをフックに広がる、ルトロン活用の可能性

 最後に今後の展望を尋ねたところ、「ホワイト」以外のブランドでも、たとえばイベントなどの施策を行い、ルトロンで紹介するといった展開も考えているという。

 「記事だけに閉じない、多様な施策を行ったほうが、ルトロンの強みを活かせると考えています。また、イベントなどと組み合わせる際は、ルトロンを読みにきている人たちのインサイトやモチベーションに合わせたイベントを作っていければと思います」(廣澤氏)

 豊田氏は、「ホワイト」というブランドの展望として、もっと若い世代に知ってもらう機会を設けたいとした。

 「歴史の深い商品になりますから、この安心感を若い方にもっと伝えたいですね。そして銭湯という昔ながらの空間の中で、『ホワイト』に慣れ親しんでいただくタッチポイントを一過性ではなく、恒常的に作っていきたいと思います」(豊田氏)

 最後に倉田氏は、オープンエイトとしてこれから、既存のマーケティング事業とメディア事業をミックスさせたクライアント支援にチャレンジしていきたいと述べた。

 「オープンエイトは『ユーザーの心を動かす体験を創る』というミッションを掲げています。これからの広告コンテンツもこういった考え方がとても重要だと思っています。

 さらに、マーケティングとメディアの両事業の知見を活かしていくことで、ユーザーに共感されるコンテンツを作り、それを伝え、さらに広げていく。今まで点で動いていたことを、線で提供する取り組みが行えるようになったので、引き続きこの考え方を追求し、花王様をはじめ、多くのクライアントを支援していきたいです」(倉田氏)

ルトロンのコンテンツ、アプリでも楽しめるように!

 これまで、WebサイトやFacebookなどを通じて動画コンテンツを配信してきたルトロンが、アプリをリリース。アプリならではの世界感と見やすさで多くの動画コンテンツを楽しめるようになっています。ぜひダウンロードを!

【AppStoreはこちら

【Google Playはこちら

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この記事の著者

東城 ノエル(トウジョウ ノエル)

フリーランスエディター・ライター
出版社での雑誌編集を経て、大手化粧品メーカーで編集ライター&ECサイト立ち上げなどを経験して独立。現在は、Webや雑誌を中心に執筆中。美容、旅行、アート、女性の働き方、子育て関連も守備範囲。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/10/25 11:00 https://markezine.jp/article/detail/27203