イベントで「購入」の背中を押す
顧客のインサイトは「購入」のフェーズでも重視されている。そのための施策のひとつが、アイサイトも体験できる試乗イベントの実施だ。
認知のフェーズで「安全らしいということは理解したが、実際はどうだろう?」と感じた顧客に対し、体験する場をつくる。体験を通して顧客の「購入したい」という気持ちがさらに動くと考えているという。
これまでに、延べ330会場以上44万人が体験し、今後も続けていく予定だ。

クルマがある人生を愉しむスバルファンへ
続く「購入」後の「利用」フェーズ。顧客と向き合い続ける長い期間だ。
スバルでは顧客のインサイトや車の利用シーンを知るために、Twitterのソーシャルリスニングや各種イベントで顧客のリアルな声をヒアリングしている。それをもとにスバルネクストストーリー推進室が中心となって、様々な取り組みを実施する。ここでは、3つの事例を紹介する。
1)オーナー専用アプリで利便性を高める
顧客と常に接することのできる基盤として「マイスバル」というオーナー専用アプリをリリースした。このアプリからは、ディーラーへの連絡やアフターサービスの予約、顧客向けのイベント情報の取得ができる。電話ができないときや、営業時間外にも連絡を取ることができるツールとしても好評だ。現在は約7万人が利用しているという。

2)Webサイト発信のイベントで愉しみを提供
Webサイト「アクティブライフスクエア」は“スバルと一緒にでかけよう。”をテーマに、参加型のイベントを提供している。

これまでに、ツール・ド・東北に参加するサイクルチームのメンバー募集や、スバルがマーケティングパートナーとなっている長野県阿智村での天体イベント、モータースポーツを一緒に応援するイベントなどを実施してきた。スバルの工場見学も人気イベントだという。
また、全国のディーラーでも積極的に企画があがっており、延べ500以上のイベントが行われている。「地域に密着するディーラーの協力は、顧客接点として重要な存在です」と小島氏は語る。
3)ファンコミュニティとファンミーティングで距離を近づける
スバルは「#スバコミ」という公式のファンコミュニティも運営している。2年前には全国から約2,000人のファンが集まり、社員やスタッフだけでなく経営層も参加した大掛かりなファンミーティングを#スバコミメンバーとともに、開催した。

さらに新車発表会へ#スバコミメンバーを招待したり、ファンによる自主的なイベントにスバルが参加したりと、ディープな関係が保てるコミュニティが形成されている。
広い接触と深い理解を目指す
体験を重視した取り組みを多く実行するスバル。その成果は、どのように計測しているのか。小島氏は模索中であると補足しつつ「アンケート集計からNPSのような独自の推奨度を出している」と説明する。
計測の結果、口コミに接するほか、SNSの利用やイベントの参加という新しい接点への接触度合いが高いほど推奨度が上昇し、「安心と愉しさ」への理解も深まることがわかった。

リーチの取れるテレビCMを中心としたマス広告も調査対象の9割がCMを見たことがあると答えており、推奨度に反映されていた。CMクリエイティブが共感を呼び、ブランドの評価につながっていると小島氏は見解を示す。
イベントについては、参加人数が限られてくるため爆発的な広がりは生まれない反面、ブランド体験の濃度は高く、推奨度や理解度も群を抜いているという。
「イベントの課題はいかに、多くの人に知ってもらうか。今後は取り組みをオウンドメディアや外部メディアで露出するとともに、ファンコミュニティでの口コミも狙っていきたいと思います。」(小島氏)。
さらに今後は、導入したプライベートDMPも活用し、Web上の行動から店舗利用履歴まで一元したデータからさらに顧客の理解を深めていく予定だという。
最後に小島氏は次の言葉でセッションを締めくくった。
「お客様がどんな方々で何を考えているのか。どんなことに喜んでいただけるのかを適切に掴むことがポイントだと思います。お客様の求めるものをさらに理解し、取り組みの進化につなげたいですね」(小島氏)
