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MarkeZine Day 2017 Autumn(AD)

旅行・アパレル・食品流通小売業界の事例から見る、MA活用が導く業務効率化とコミュニケーション最適化

 日本にマーケティングオートメーションツールが登場して数年が経つが、その具体的な活用事例を目にする機会はまだまだ少ないのが実情である。9月27日に開催されたMarkeZine Day 2017 Autumnに登壇したチーターデジタルの北村伊弘氏は、自社MAツール(CCMP)の導入企業による活用事例を「マーケティング課題を解決できた例」と「効果的な施策を実施できた例」に大別して紹介。様々な業界での活用事例から、MAを導入することで実現できる業務効率化とコミュニケーション最適化の実態が見えてきた。

デジタルファーストにおける3つの共通課題

 マーケティングオートメーション(以下、MA)など、定評あるマーケティングツールを手がけるチーターデジタルは、世界17カ国に1600人のスタッフを擁する独立系マーケティングテクノロジー企業だ。

チーターデジタル株式会社 Chief Marketing Officer 北村伊弘氏
チーターデジタル株式会社 Chief Marketing Officer 北村伊弘氏

 グローバルでさまざまなコミュニケーション支援サービスを提供してきたエクスペリアンの会社分割にともなって独立したマーケティングサービス事業部門が、今年6月に社名を新たにチーターデジタルとして発足した。

 チーターデジタルは、エクスペリアン時代の豊富なノウハウを継承し、MAツール「Cross-Channel Marketing Platform(CCMP)」、メール配信システム「MailPublisher」を主軸に、企業のコミュニケーション戦略立案からツール導入サポート、運用サポートまでを一貫して手がけている。

 現在チーターデジタルのCMOを務める北村伊弘氏は、「すべてのマーケターに寄り添い、企業が顧客と良好な関係を構築できるよう支援することが我々のミッション」と語る。

 北村氏はこれまでのMAツール導入支援の経験から、今回のイベントのテーマでもあるデジタルファーストにおける共通課題を「データの管理・活用」「プラットフォームの導入・活用」「マーケティング施策の企画・実施」の3つの段階に分けて説明した。

大量データを柔軟に扱うことがMAツールの要

 まず、データの管理と活用について。企業は事業の発展にともなって、さまざまなデータソースを保有していることが多い。しかしデータの管理場所はばらばらに分散されがちなため、せっかく取得した多様なデータを効果的に活用できている例は少ない。これを克服することが、最初のハードルになる。

 2つ目は、プラットフォーム選びとその活用。MAツールは多数あるため、自社の課題を参照しながら特徴や機能を吟味して選定するのが難しくなっている。また、導入後に本当に使いこなせるか、操作性も考慮すべき点だ。

 3つ目は、マーケティング施策の企画・実施だ。実際にMAツールを使ってどういう施策を、どういったシナリオのもとに実施すれば効果が出るのか。LINEやアプリのプッシュ通知といった比較的新しいコミュニケーションチャネルを試す際に、有効なノウハウやリソースをどう確保するかも、企業が直面する大きな課題になっている。

 これらに対し、チーターデジタルは「データ/ソフトウェア/ピープル」の3つの観点でサポートしている。

 まず「データ」とは、マーケター自身で大規模な顧客データの管理ができる環境を提供することで、マーケティング施策においてタイムリーなデータ活用ができるようサポートしている。

 「プラットフォーム」とは顧客への一斉配信やシナリオ配信をクロスチャネルで実行できるキャンペーンを設計、最適化できるBtoC向けのマーケティングオートメーション「CCMP」などの提供を指している。

 また「ピープル」においては、マーケター自身がプラットフォームを使いこなし、データを活用できるようプラットフォームの導入から運用に至るまでの専門チームによる包括的なサポートを提供している。

 では、CCMPを活用して実際にどのような成果が上がっているのだろうか。北村氏は「マーケティング課題を解決できた例」と「効果的な施策を実施できた例」に大別し、前者のひとつ目の例として旅行予約サイトを運営する事業会社を挙げる。

情シスに依頼せずにタイムリーなメール配信を実現

 ホテルや旅館、レストランなどの予約サイトなどを運営するA社では、ユーザーがサイト内で自分の予算や好みに従って回遊したり予約したりすることから、豊富なデータを取得することができる。

 しかし社内の体制上、氏名やメールアドレスをはじめとする顧客の個人情報は情報システム部が管理しており、マーケティング部はタイムリーにユーザーにアプローチできないことが課題となっていた。

 マーケティング部が管理できていたのは、会員IDやホテルの情報など。たとえば一度閲覧したホテルの情報をメールでお知らせする際は、まずマーケティング部にて会員IDをもとに配信対象者を抽出し、それを情報システム部が管理するメールアドレスと紐付けることで配信リストを完成させていた。

 一連の作業を手動で進めていると、メールを配信するまでに当然時間がかかってしまう。「こうした問題は、実は非常に多くの企業で共通しています」と北村氏。

 そこでCCMPを導入し、マーケティング部が管理するデータと情報システム部が管理するデータの両方を一つのプラットフォームに取り込むことで、それぞれのデータをデイリーで自動連携できるようになった。また、CCMPのリレーショナルデータベース構造により、顧客マスタ情報と予約データを結合するなどし、柔軟な配信リスト生成が可能になった。

 このようにCCMP導入後は、手作業でのリスト作成がなくなり、業務を効率化することに成功した。結果、マーケティング部が常にフレッシュなデータを使い、機を逃さずにセグメントメールを配信できるようになった。

人対人のような自然なコミュニケーションを実現

 続いて、MAツール導入でどのような効果的な施策が実施できるのか、さらに具体的な例が紹介された。食品の定期宅配便を中心とするネットスーパーのオイシックスドット大地は、モバイルファーストという同社の方針に基づいて、MA導入を検討。

 もともとスマートフォン最適化に注力し、当然ながらコミュニケーションもメールだけでなくSNSやLINEなどモバイルに合ったチャネルを使いたいという要望が強かったという。

 定期宅配というビジネスモデル上、顧客満足度を高めて継続率を維持することが重要なテーマとなる。「食材をおいしく食べていただく体験が、サービスの継続において重要なので、MAツールでその後押しをしよう、という狙いがありました」(北村氏)。

 そこでCCMPを導入して今実施している施策のひとつが、「食べ方おすすめメール」。卵や野菜のセットなどを購入したユーザーに、食材の魅力を最大限に伝えるための、食べ方を提案するメールを送るというシンプルな施策だ。

 このメールを単純にメールシステムで配信すると、常に特定の商品を買っている人には同内容のメールがいつも届いてしまう。そのためMAツールで重複を避け、適切な頻度でのコミュニケーションを実現した。「MAというと、とかく複雑な分岐と膨大なシナリオがイメージされますが、人対人なら当たり前に行われる“自然なコミュニケーション”の実現もMAを使う醍醐味。その好例だと思います」と北村氏は解説する。

会員のステータスに応じたメールシナリオの実施

 また、モール型のアパレルEC「MIX.Tokyo」を運営するTSI ECストラテジーでは、メール配信システムを使った一斉配信のメールを見直し、会員のステータスに応じたコミュニケーション最適化を実現するためにMAツールを導入した。

 この事例でヒントになるのは新規顧客へのアプローチ方法だ。初回購入促進シナリオでは、まずECサイトの魅力や使い方をメールで案内。そのメール送付後に購入に至らなかった会員にはアプリの使い方を案内し、さらにそれらのメールにも反応しなかった会員にはコーディネート提案やクーポンを付与するメールを配信するなど、会員の行動に応じてコミュニケーションを最適化していった。

 すると以前の一斉配信メルマガに比べて平均開封率が5.3倍、CTRは9.3倍にもなった。休眠防止シナリオも同様に会員の状況に沿って段階的にメール配信を行ったことで、成果を高めている。

新規獲得や関係深化に寄与するメールシナリオ

 さらに運用準備中の事例となるが、コープデリはこの冬からCCMPを活用し新規組合員の獲得と既存組合員とのコミュニケーション向上に取り組むという。

 具体的には、「資料請求者フォローキャンペーン」、「ECサイトでの注文忘れ防止キャンペーン」などのメールをベースとしたシナリオを実施し、組合員の状況に応じたコミュニケーション設計を進めていく。またメールを開封していない会員には、SMSでメッセージを送るなどクロスチャネルでの接触を図る予定だ。

柔軟なデータ活用とワンプラットフォーム環境によりコミュニケーションの最適化を図る

 以上のように、CCMPで効果的な施策を実施できるのは、複数種類のデータをテーブルごとに管理しながら、それらのテーブル間を柔軟に連携できることが大きい。

 さらにワンプラットフォームで様々なコミュニケーションチャネルを操作できるため、チャネルごとのメッセージの出し分けや全施策を横断するフリークエンシーコントロール(配信頻度の管理)が可能だ。このように受け手にとってストレスの少ないメッセージ配信ができれば自然とコミュニケーション自体を最適化することにつながる。

 高度なデータ処理やワンプラットフォームでの施策実施はもちろんのこと、「専門知識がなくても使いこなせる操作性と、人的なサポートを一手に引き受けられる体制にもこだわっていきます」と北村氏。今後もマーケター自身が使いこなせるプラットフォームと、運用環境の提供に注力していきたい、と語って講演を締めくくった。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/12/04 11:00 https://markezine.jp/article/detail/27286