ブランド資産をつかさどる、マーケターの知恵袋的存在として
アーキビストという職業をご存知だろうか。アーキビストとは、歴史的な資料や物品を集め、適切に管理・保存する専門職であり、その多くは博物館や公文書館などアカデミックな場に所属している。
アーキビストは日本ではまだまだ馴染みのない職種で、国内の公文書館や図書館では、アーキビストが担うべき仕事を司書や学芸員がカバーしていることも少なくないという。ましてや、ビジネス活用となると、取り組んでいる会社はごくごく限られている。
一方の欧米では、アーキビストの養成プロセスと地位が確立されており、企業で活躍するアーキビストも珍しくない。彼らはマーケターの知恵袋として、自社の歴史やブランドをアーカイブし、新たなコミュニケーションにつながるインサイトの触媒としての役割を果たしている。
ザ コカ・コーラ カンパニー(以下、コカ・コーラ社)にも、1886年の「コカ・コーラ」誕生以来131年にわたる歴史をアーカイブするアーキビスト、テッド・ライアン氏がいる。
エモリー大学を1986年に卒業後、アトランタ歴史センターにアーキビストとして10年間務めたライアン氏は、1997年からコカ・コーラ社の歴史を語る物品や資料の保存・管理を統括している。このたび来日したライアン氏にアーキビストの仕事、そしてブランドの歴史をアーカイブすることのマーケティング上の重要性について語っていただいた。
ディズニー、アップル…一流ブランドはアーキビストを抱えている
――日本では、あまりアーキビストという職業になじみがありません。まず、アーキビストについて教えてください。
ライアン:アーキビストは、歴史的な物品や資料を適切な方法で管理・保存をする専門職です。私は大学まで歴史を専攻しており、アーキビストとして20年のキャリアを積んできました。
アメリカには300社を超える企業のアーカイブズ(資料庫)がありアーキビストが活躍しています。たとえば、ウォルト・ディズニーや「リーバイス」で知られるリーバイ・ストラウス、ナイキ、アップルといった企業のアーカイブズが有名ですね。
コカ・コーラ社では、企業としての歴史とブランドとしての歴史の両方をアーカイブしています。「コカ・コーラ」の商標である赤色、ロゴ、ボトルから、広告まで、ありあらゆるものを保管しているのです。