把握している情報の濃度でユーザーを分ける
有園:さて、今回のテーマは「個を捕捉できる時代のマーケティング」です。きっかけは、郡司さんが夏にとあるセミナーに登壇されるとき、その内容を事前に聞いたら岡本さんの本の内容によく似ていて。新卒で電通に入り、ずっとマス広告の企画制作をされてきた郡司さんと、方やずっとCRMを手がけられてきた岡本さんの考えが、今ここにきて近くなっているのは非常に興味深くて、お二人を交えて話せたらと思いました。
郡司さんは、マス広告からいつごろデジタル領域に移られたんでしたか?
郡司:2012年ですね。新設された局に異動して、ソーシャルメディアを前提とした、つまり情報が生活者から拡散したり、企業の発信に対する生活者の反応が可視化されることを前提としたコミュニケーション開発や、ここ数年はコンテンツマーケティング領域の業務が多かったですね。電通デジタルになってからは、マーケティングシステムを基盤としたマーケティングコミュニケーション全般をみるようになりました。
有園:岡本さんは、リクルートを経てディレクタスを起業されてから、もう長いですよね。
岡本:そうですね。1993年に起業して以降、一貫してデータベースマーケティングに携わっています。それこそ最初は紙のDMから始めてEメールマーケティングに移行し、今はOne to Oneコミュニケーションの戦略立案からツール導入・運用まで支援しています。
有園:そして私はちょうど、お二人の間に位置するようなネット広告の領域が専門というわけです。では早速、元の岡本さんの図から紹介したいと思いますが、簡単に図を解説していただけますか?
マス広告でしか接触できない人がいちばん遠い
岡本:これは「企業がどこまで“個”を捉えて接触できるか」に注目して顧客を区分けした図です。まずいちばん右は、会員登録している顧客。ECなら購買履歴がわかりますし、店頭ならアプリなどを提示することでデジタルにひもづいている顧客を指しています。次に、メールアドレスだけわかっている、メルアド会員。氏名や属性はわからなくても、開封率やクリック率などで興味関心はわかります。
次に、スマホアプリのユーザー。アプリはダウンロードしても情報登録が必須ではないので、顧客の情報は必ずしも入手できませんが、プッシュ通知はできる。ここで個人情報を入力していたら、最初の「会員」にぐっと近づきます。位置情報がわかれば、セグメントした情報も送れます。
有園:LINEの友だちもここに入るでしょうね。
岡本:そうですね。次が、ソーシャルメディアのフォロワー。プッシュよりは弱いですが、メッセージを受け取ってくれる可能性がある人たち。まあ、一つ前のアプリユーザー含めて、読んでいるかはわかりませんが。最後に、サイト訪問などのアクセスログだけがわかっている人。ターゲティング広告やリターゲティング広告は出稿できます。で、さらに外側にいるのが、マス広告でしか接触できない“一般生活者”です。
有園:その手前に、実はDMPがありませんか?
岡本:ああ! そうか、たしかに。
有園:この、気づいていなかった!という指摘ができるとコンサル冥利に尽きますね(笑)。さておき、トラッキングできる手段は増えている。その向こうの、マス広告のみで情報を届けられる人の中に、いわゆるインターネット調査のアンケートや調査会社のモニターとして捕捉できる人がいる感じですね。