消費者が商品の真価を知るのに協力できているか
山崎氏によれば、米国では口コミを確認するためにAmazonを閲覧するユーザーが一定数いるという。あのAmazonもアーンドメディアとしての役割を担いつつあるのだ。日本はまだそこまでではないが、たとえばメルカリで買おうと思っている商品のレビューをAmazonで先に見る、といった行動は思い当たる人も多いのではないだろうか。
ブランド企業のオフィシャルサイトはさておき、少なくともリテールに関しては、消費者から見たオウンドメディアとアーンドメディアの融合は進んでいく。企業もそれを意識しないと消費者の実態とズレが生じ、「今後のコマースにおいて後塵を拝することになると思う」と山崎氏。企業のサイトの記載とSNSなどでの評判が著しく乖離していたら、今の消費者がどちらを信じるかは明らかだ。
「情報の透明性が重要だという指摘を噛み砕くと、『消費者が商品の真価を知ることにどれくらい協力できているか』といえると思います。本当の姿が明らかになってしまう今、それをひた隠しにするのではなく積極的に開示する企業のほうが、今後は伸びていくでしょう」(山崎氏)。
さらに、ここでいう「商品の真価」についても、日々リアルタイムに膨大な情報に接している消費者を考えると「商品の価値は普遍ではない」という重要なポイントが見てくる。
情報のベクトルは「消費者から企業へ」
かつて企業は、価格やスペックといった客観情報に、マスマーケティングによって「このコーヒーはおいしい」「この車は素敵だ」といった画一的なイメージを上塗りして消費者に接触してきた。
しかし、他人の口コミがすぐわかり、売上ランキングや返品率もリアルタイムで可視化される今、商品の本質的な価値も刻々と変わっていくと捉えるのが自然だろう。以前は企業から消費者へ向いていた情報のベクトルは、「消費者から企業へ」と、逆方向になりつつあるのだ。
これは、ZETAが得意とする検索やレビューの領域を見てもよくわかる。検索行動は極めてインタラクティブ性とリアルタイム性が高い。レビューはリアルタイム性こそ薄いものの、次なる誰かの購買行動に大きな影響を及ぼす。
たとえば、米国でのある調査によると、レビューが0件から1件になるとセールスが10%上がり、30件になると1.5倍、50件になると2倍になる。また、50件の評価の平均が4.0点の商品より、100件の平均で3.5点を獲得している商品のほうが売れるという(※)。
※出典:『The impact of customer reviews and ratings on conversion rates』、Smart Insights
「こうあってほしいというマーケティングはもう通用しません。逆に、消費者がどう感じているかを起点に、『真実を見てください』という意志をベースにしたマーケティングに切り替える必要に迫られています。これが商品の本質的価値における情報の透明性であり、CXという今後ますます大切になる概念を前提にデジタルを活用する際の大きなテーマになると思います」(山崎氏)