単なる商品紹介を脱し、ブランドコミュニティ形成へ進化するには
また、今回「ポカリスエット」のプロモーションで特徴的な点は、プロモーション自体が単なる商品紹介にとどまらず、ブランドコミュニティ形成まで実現できている点です。
ブランドコミュニティとは、ブランドに対して好意的な活動(アクション)を行うコアなブランドファンを指す昔からある概念です。今では、ソーシャルメディアやスマホによって生活者を取り巻く情報量が爆発的に増え、何を信じれば良いのかわかりにくい時代になりました。
その結果、生活者は新しい情報基盤となったソーシャルメディアを通じて、信頼でき価値観が合う「人」から情報を得ることを重視しています。そのため、ブランドに好意や共感を持って実際にイベントへの参加や、SNSでのシェアなどの好意的なアクションを行ってくれる人々の集団、「ブランドコミュニティ」の重要性は増し続けています。
今回の「ポカリスエット」の施策では、「ブランドメッセージ」を伝えるために最適な“ダンス(踊ってみた)”トライブを狙い、投稿動画のTVCMへの採用やインフルエンサーの起用などで上手にターゲットをモチベートしながら、ブランドへの好意や共感だけでなく、実際のアクション(自身のダンス動画、口コミの投稿など)までを引き出すことができています。これはまさにソーシャルメディア時代の新しい形のブランドコミュニティ形成といえます。
ここでは、インフルエンサーは単なる「商品紹介者」ではなく「ブランドコミュニティ形成者」として機能し、さまざまな難易度のダンス動画募集の広がりが、そのままブランドコミュニティの広がりにつながっている点も理想的です。
今の時代、瞬間的に「この施策」「このメッセージ」への共感を促すことも重要ですが、長期にわたって同じ文脈でブランドコミュニティを育てていくことも頭に入れておくべきなのです。
商品やサービスの知名度、予算がすべてではない
こうした事例を紹介すると、「予算が十分で、すでに知名度も高い商品、サービスだから実現できるのでは?」と捉える方もいると思います。しかし、たとえ知名度がなくても、お金がなくても、インフルエンサーを単なる「商品紹介者」にしない施策は必ず企画できます。たとえば、インフルエンサーマーケティングが積極的に実施されるアパレルブランドであれば、こんな施策が考えられます。
【例:コートやシャツを主力商品とするアパレルブランド】
ブランドメッセージ
「ファッションで挑戦する。」
このブランドではユーザーの高齢化が進み、販売が鈍化。若返りを目指すためミレニアル世代の好意を醸成したい。
ソーシャルメディア上のコンテクスト
「美の再定義」
ソーシャルリスニングの結果、美しさに対する多様な価値観に関する内容がエンゲージメントしやすい傾向がある。
トライブ
「“ありのままの私”を追求する人々」
ジェンダーレス、ノームコア(能動的に“普通”であることを選ぶスタイル)、エフォートレス(頑張り過ぎないスタイル)など、影響力はあるが美やファッション意識についてマイノリティなトライブ。
施策案
「10people 1look」
国籍や性別、容姿、体格が多様な10人を起用し、1つのルックをそれぞれの人らしく着こなしてもらうイベントやそれらの画像、映像などによるコミュニケーション施策。美の多様性を体現するインフルエンサー自体がブランドメッセージを伝える存在として機能。ミレニアル世代の興味関心が高いファッション編、音楽編、学生編などでシーズン化し、継続的に展開すればブランドコミュニティの形成にもつながる。
こちらは非常に簡易な例ですが、このように先述の3ポイントを念頭に企画を練ることで、企業やブランドへの好意、共感まで醸成するさまざまなコミュニケーション施策を企画することができると思います。
今回は、生活者の情報環境を踏まえながら、“効果の出る”インフルエンサーマーケティングの実施方法についてお話しさせていただきました。ぜひ皆様のマーケティング活動の参考にしていただければ幸いです。