「Oracle Data Cloud」の3つの価値/精緻なターゲティング
2014年2月BlueKai、2014年12月Datalogix、2016年1月AddThis、2016年4月Crosswise、そして2017年4月Moatの買収。これらのソリューションを組み合わせた「Oracle Data Cloud」では、毎月7.5テラデータポイントを収集し、このデータポイントと世帯が消費した3兆ドルに及ぶオーディエンスの購買情報を紐づけることができるという。

非常に膨大な量のデータだが、「データにサイエンスを掛け合わせなければ、そこに価値はない」とロビン氏は強調する。
「品質の高いデータがあって、非常に精度の高いサイエンスを兼ね備えることによって、膨大な価値を提供することができます。その価値は、ターゲティング、IDグラフ(様々なデータや色んなデバイスとユーザーを紐づけるもの)、メジャメント(効果測定)の3つの能力に集約できます」(ロビン氏)
1、ターゲティング
最初の出発点は“オーディエンスシード(種)”である。オーディエンスシードは、全世界のデータの中から抽出されたコンシューマーの呼び名だ。シードや特徴量をベースに、Modeling360と呼ばれるオラクルのシステムが方程式を算出。ある特定地域のある世帯のあるオーディエンスが、どれだけシードと近似しているのかスコア付けを行う。最後にIDグラフを通すことで、そのオーディエンスが使っているCookieやモバイルの端末IDなどが同定される仕組みだ。

例えば、カードを使ってかなりの高額品を買っている対象者が5,000世帯見つかったとする。この5,000世帯は全国平均よりも高い世帯収入を持っている層だと予測される。加えて、システムは10万ほどの変数情報を使い、この中からカードを使って高級車を買っている世帯の特徴を洗い出していく。こうしたスコア情報をもとにIDグラフが、Cookie情報と端末情報の紐づけを拡張する。こうした一連の処理によって、もともとは5,000のオーディエンスシードが何百万ものCookieや端末情報へと拡張できるのだ。
そしてロビン氏は、このモデルで自社製品を購入したコンシューマーを同定した事例を語った。
ある企業が北米で、5つのデジタルキャンペーンを実施した。キャンペーンの趣旨について、オラクルには一切開示がなかったが、後でクルーズ旅行予約やピザ注文のキャンペーンだとわかった。
キャンペーン期間は2週間。広告クリエィティブにCookie情報を送信するピクセルを埋め込み、広告インプレッションとCookie情報を紐づける仕組みを構築。また、コンバージョンのピクセル情報も取得できたので、実際にクルーズ旅行を予約したのか、ピザを注文したのかまで把握できたという。
「我々は旅行を予約をする、あるいはピザを買うというCookieだけを選定し、オーディエンスシードを作成。トレーディングデスクに広告を配信する対象者を絞り込んだ情報を渡し、キャンペーンを実施してもらいました」(ロビン氏)

その結果、オラクルが関与した配信は、オーディエンス量が非常に少なく、キャンペーン全体の15%のCookieを占めるに留まった。さらにこれら15%のCookieが生み出したクリック数は少なく、クリック総数の9%だった。しかし、結果的にはこの15%のCookieが、実に売上の62%を占めていることがわかったのだ。
「オラクルなしでやったマーケティングキャンペーンと比較して、購買確率が高くなりました。デジタルキャンペーンにおいて、効果的にターゲットを絞ったマーケティングをしなければ、どれだけ無駄打ちが多いかということがよくわかるかと思います。これは米国においても、パラダイムシフト的な新しい考え方なのです」(ロビン氏)
