Paidが重要な役割を果たす「PEOS型」とは?
では、Paidにはブースターとしての付加的な役割しかなく、重要な役割は果たせないのでしょうか?そんなことはありません。以前に比べると、マス広告(Paid)のパワー低下は否めないと思いますが、しかしながら、「こういった状況ではマス広告(Paid)が効果的だ」という局面だって、確かに存在するのです。
その典型的な例が、カンヌライオンズ2016の話題作“McWhopper”です。
バーガーキングでは自社のハンバーガーをWhopper(ワッパー)と呼ぶのですが、毎年9月21日に世界各地で様々なイベントが行われる国際平和デーに合わせて、ライバルのマクドナルド社に対して、「その日だけはハンバーガー戦争を休止し、ビッグマックとワッパーを合わせた“マックワッパー”を2社共同で販売しないか」と新聞広告(NYタイムズの全面広告)で呼びかけました(Paid)。この新聞広告は、すぐに番組や記事で取り上げられます(Earned)。同時にバーガーキングは、自社Web上に、マックワッパーを販売する際のパッケージや店員のユニフォームまで用意しました(Owned)が、マクドナルドCEOの答えは「否」。ところが消費者がこれに反発し、自分でビッグマックとワッパーを買って来て「自家製マックワッパー」を作製。次々にソーシャルメディアに投稿を始めて大評判になりました(Shared)。結果、バーガーキングの購入意向は25%増加したと言います。
この事例を考える時、バーガーキングからマクドナルドへの「共同でマックワッパーを発売しよう」という呼びかけが、もしも自社Webサイトで行われたとしたらどうだったかを、想像してみてください。その場合、単なるジョークと受け取られかねず、番組や記事もここまで取り上げず、マクドナルドのCEOが返答をすることもなく、人々が自家製マックワッパーの作製にそこまで盛り上がることもなかったのではないでしょうか?
やはりこの広告コミュニケーションには、最初に「オフィシャルなメディア」としての新聞広告(Paid)のパワーが不可欠だったと考えられます。まず新聞広告を使い(Paid)、そのことを番組や記事が取り上げ(Earned)、自社ウエブサイトで様々な情報を整備し(Owned)、ついに人々が乗ってくれた(Shared)。そうした意味で、PEOS型と呼ぶことができるでしょう。
「PESOオーダー」の代表的な6タイプ
こうして「PESOオーダー」ということについて、いろいろと考えてみると、EarnedやSharedを得るためには、なんらかの「元」が必要で、その意味では結局のところ、OかPで始まることになる、というのが今のところの僕の見解です。いわゆる仕込みでEarnedやSharedで始める手もなくはないでしょうが、「広告コミュニケーションを企画する」という視点で考えた場合は、OかPで始めるのが原則のように思います。
そうするとPESOオーダーは、(1)OSEP型、(2)OESP型、(3)OPES型、(4)PEOS型、(5)POSE型、(6)PSEO型の6タイプくらいに分類できそうです。
連載最終回となる次回は、日本の事例も取り上げながら、上記6タイプの「PESOオーダー」に当てはまる事例を紹介し、“PESO活用の順番”の重要さについて、さらに深めて行きたいと思います。
(※この連載は、2017年11月19日の日本広報学会第23回研究発表全国大会で筆者が発表した内容に基づいています)