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トリプルメディアを一歩進めた、“PESOオーダー”という新発想

「PESOオーダー」の6タイプ、その特徴と代表的な事例は?

Ownedから始まる3つの型

(1)OSE(P)型

 まず、(1)OSE(P)型です。このOSE(P)型の事例は多く、現代の統合型マーケティング・コミュニケーションのスタンダードとも言えそうなタイプです。Web動画に代表されるなんらかのOwnedを起点にし、そのOwned(たとえばWeb動画)が数多くShareされ、その現象を番組や記事が取り上げ(Earned)、一連の流れのブースター役として時にPaid(従来の広告スペース)も活用します。

 この型は、前回取り上げたFearless Girl (2017)、Like a Girl(2015)、Dumb Ways to Die(2013)の他にも、数多く見受けられます。2017年の受賞作Cheetos Museum by Flitorayや2015年の受賞作Interception by VOLVOもこの型に入ると言えるでしょう(この2つの事例については、今回は詳しい説明は省略します)。

(2)OES(P)型

 次に、(2)OES(P)型について考えて行きましょう。これは、Owned(Web動画や何らかの仕組み)自体の話題性で、まずEarned(番組や記事で取り上げてもらう)ことを狙い、そのことからShared(SNS等での拡散)を狙うというタイプです。

 この型の具体例としては、日本の最近の事例を取り上げてみましょう。別府市の「100万再生で本当にやります!湯~園地計画」です。これは、温泉と遊園地を一体化させたアミューズメントパークを題材として取り上げたOwned(Web動画)が起点になっています。そこでは、温泉に浸かっている人が一緒に廻ってるメリーゴーランドだったり、一人ひとりの座席が温泉のお湯で満たされているジェットコースターなどが「湯~園地」として描かれています。

 このOwned(Web動画)が特別なのは、最後の方に市長が登場し、「100万回以上再生されたら、“湯~園地”を実現します」と、実際に「湯~園地」をオープンさせることを公約としたところです。

 このWeb動画は、すぐに話題となりました。どれだけの番組や記事に取り上げられたかのデータは持ち合わせていないのですが、筆者自身、番組で取り上げられているのを見て、この広告コミュニケーションを知りました。少なくても企画する側の狙いとしては、Owned(再生数連動公約Web動画)がEarned(番組や記事で取り上げられる)を呼び起こし、それがきっかけとなったShared(SNSでの視聴やシェア)活用という順番だったと推察されます。

 結果はどうだったのでしょうか?2016年11月20日に公開されると、わずか72時間で100万回再生を見事達成しました。「湯~園地」実現に向けて2017年2月10日からはクラウドファンディングを実施。2ヵ月間で総額約3,400万円の資金調達に成功し、2017年7月29~31日までの3日間実際に設置(Ownedの一種)、各日3,000人を集めたといいいます。

 その後も、「公約通りに“湯~園地”を実現」が番組や記事で取り上げられ(Earned)、3日間の様子がWebサイトで公開され(Owned)、それがさらにSNSでも拡散される(Shared)というように実際は、O→E→S→O→E→O→Sといったプロセスを経ていますが、そこでの「マーケティング・コミュニケ―ションの乗り物としてのメディア」についての考え方の本筋は、Owned→Earned→Sharedの流れにあったと考え、OES(P)型に分類しました。

(3)OPSE型

 今度は、(3)OPSE型を取り上げましょう。これは、Owned(Web動画や何らかの仕組み)を用意したうえで、Paid(広告)を活用してまずOwnedについて知らしめ、Shared(SNS等での拡散)を狙い、そのことをさらにEarned(番組や記事で取り上げてもらう)で拡げて行こうとする類型です。

 この型の典型例は、2009年の話題作“The Best Job in the World”。豪州グレートバリアリーフ地域が行った観光客誘致のための広告コミュニケーションです。アメリカ・イギリス・日本など8つの主要市場での認知アップと観光客増加が課題でした。

 企画者たちが行ったのは、最初にOwned(仕組み)の設定でした。The Best Job in the World(世界で最も素晴らしい仕事)として、魚の餌やり、プールの清掃、郵便の受け取りなどの仕事をこなしながら、プール付きの邸宅に住むことで、半年で約1,000万円の収入が得られるという、島の管理人の職を作ったのです。そして、60秒の応募ビデオをWebサイトに投稿して審査する、という仕組みも作りました。

 このOwnedを知らしめるのに、Paidとして伝統的な新聞の求人広告の枠を活用しました。このO→Pの流れは、リーマンショック後の不景気な世相にもぴったりとマッチし、イギリスの警官、世界的有名俳優の息子、寒空のドイツからビキニ姿での応募、北極海の漁師などユニークな応募が殺到しました(Shared)。1万4,000人応募の目標に対して3万5,000人の応募を獲得、絞り込みの過程も興味を呼び、多くのテレビニュースが取り上げました(Earned)。OPSEの流れですね。

次のページ
Paid(広告)から始まる3つの型

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この記事の著者

佐藤 達郎(サトウ タツロウ)

多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論/メディア論)。2004年カンヌ国際広告祭フィルム部門日本代表審査員。浦和高校→一橋大学→ADK→(青学MBA)→博報堂DYMP→2011年4月 より現職。
受賞歴は、カンヌ国際広告祭、アドフェスト、東京インタラクティブアドアワード、ACC賞など。審査員としても、多数参加。個人事務所コミュニケーション・ラボにて、執筆・講演・研修・企画・コンサルなども。また、小田急エージェンシーの外部アドバイザー、古河電池の社外取...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/01/22 09:00 https://markezine.jp/article/detail/27609

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