音声アプリのペルソナ設定が、心地よいユーザー体験を生む
――WHITEはGoogle Home日本版のリリースに合わせ、ローンチパートナーとして『日本史語呂合わせ』と『絶対音感オーケストラ』の2つの音声アプリをリリースされました。それぞれの特徴を教えてください。
伊東:『日本史語呂合わせ』は、戦国武将の「語呂丸(ごろまる)」と対話をしながら日本史の年号を言い当てるアプリです。語呂丸が「5、9、3。国民のヒーロー?」と質問したら、ユーザーは「聖徳太子」と答えると正解になります。
Google Homeを日本でローンチするタイミングでしたので、日本らしさを意識して企画しました。そして『絶対音感オーケストラ』は、スピーカーから流れる音を聞いて「ドレミファソラシド」の、どの音かを当てる音感ゲームです。
――開発にあたって、どのようなポイントに注力されたのでしょうか。
伊東:アプリケーションの人格、いわゆるペルソナの設定を大切にしました。グラフィック・ユーザー・インターフェイス(以下、GUI)で例えるなら、デザインのトンマナに近い概念だと思います。
たとえば語呂丸は「子供だけれど、戦国武将だから大人ぶっている感じ」「顔はこんなふうに・・・」というペルソナを設定し、そこから「わしは」や「〜である」といった一人称や言葉づかいを決め、キャラクターを作り上げていきました。
――『日本史語呂合わせ』は男性の声、『絶対音感オーケストラ』は女性的な声で応答していますね。
國原:声もペルソナを構築する要素のひとつです。Google Homeでは4種類の声から選ぶことができますし、MP3で音声を用意し再生することもできます。
伊東:さらに性格の一貫性も大切です。たとえば子供らしいキャラクターが、難しい言葉や内容を話してしまうとギャップが生まれますよね。「このキャラクターは、どんなことを話すのか?」というところまで踏み込み、設定をしなければなりません。これがずれると、ユーザーは誰と話しているのだろう?と混乱してしまい、心地よいUXが生まれないのです。
國原:ペルソナの設定をしっかりと行うことは、GoogleやAmazonといったプラットフォーマー(以下、PF)側のUXガイドラインにも掲載され、音声アプリを開発する上で重要なポイントです。音声アプリは会話・対話が中心となっており、人間同士のコミュニケーションに近いものが多くなっています。PF側としては、コミュニケーションの相手をはっきりとさせるためにペルソナを定義し、ボイス・ユーザー・インターフェイス(以下、VUI)の設計をしてほしいという考えがあるのだと思います。
ゲーム性のあるアプリで、スマートスピーカーとの付き合い方を提案
――WHITEでは、Amazon EchoのAlexa Skills「数あてゲーム」もリリースしています。音声アプリを開発するにあたり、どのような点にこだわっていらっしゃいますか。
伊東:「数あてゲーム」はAlexaが3桁の数字を決めて、それをユーザーが当てるというゲームです。ユーザーも、まだスマートスピーカーとどう付き合えば良いのか?と手探りの段階ですので、他のアプリも含め簡単で誰にでも使える短いコミュニケーションを企画し、会話や効果音を起点にしたコミュニケーションを意識しています。同業の他社さまからも評判が良く、嬉しいですね。
――では、大変だったのはどのようなところでしょうか。
國原:「話しかけると答えてくれる」というUXを、いかに自然な会話として実現させるかという点に苦労しました。まだAIでできることが限られていますので、開発サイドが質問と回答のパターンを洗い出しプログラムに組み込む必要があるのです。
伊東:たとえば天気を聞くという質問ひとつでも、「今日の天気は?」「傘は必要?」と人によって質問の仕方は違います。社内でヒアリングをし、質問パターンをたくさん集めました。今後AIの機械学習が進化し、発言の揺らぎはPF側でサポートされていくと思いますが、コミュニケーションパターンのノウハウはかなり蓄積されました。