業界を席巻するGoogle初期メンバー
有園:前編では、Googleの職場環境や評価制度、それから村上さんの“アダルト・スーパービジョン”という役割についてうかがいました。村上さんが参画したころの話を少しお聞きしたいのですが、1998年にラリーとサーゲイがGoogleを創業して、2001年にエリックがCEOに就任。で、エリックさんの面接を経て2003年に村上さんがジョインされたんですよね。
村上:ラリーとサーゲイが25歳で創業して、経営には誰かプロフェッショナルが必要だということで呼んだのが20歳近く上のエリックでした。で、営業をやっていたのが元ネットスケープ社にいたオミッド・コーデスタニ。今、Twitterの会長になっていますね。彼が来るまで、2人には“売上”という概念がなかった。
有園:初期のメンバーは他にも各所で組織を指揮していますよね。ティム・アームストロングはAOLの会長兼CEO、それからメリッサ・メイヤーは、事業の売却にともなって退任が明らかになっていますが、2012年にYahoo!のCEOになりました。
村上:彼女のリーダーシップはAppleのジョブズさんのように、ロジックじゃなくて感性だったね。UI/UXの最終決定権限をもっていて、これはもう議論して決めることじゃないから、彼女の感性で決まる。プリンセス・メリッサ、と我々は呼んでいました。
今、引き続き米国Yahoo!は苦労しているけど、あのときはビジネスがおかしかったのではなくプロダクトの新規性を出せずにいたから、彼女を引っ張ったのは決して悪くなかったと思います。
神は世界を4つに分けた
村上:それから、僕が「次のCEOかも」と思っていたとんでもなく優秀だったのが、直近でほんの2年ほどソフトバンク副社長だったニケーシュ・アローラ。政治力もあり頭もよくて、彼がEMEA(イーミア:Europe, Middle East & Africaの略)、南北アメリカをティム、ありがたいことにジャパンがノリオ・ムラカミ、残りのThe rest of the Worldをもう一人女性、の4人で世界の広告事業を管轄していた。それを仕切っていたのがオミッドですね。
有園:……スケールが大きすぎて、なんだか“神は世界を4つに分けた”みたいな感じですね。世界の残り全部、っていう言い方もインパクトがあります。
村上:そうね(笑)。2008年末に私も病気で第一線を退き日本法人の名誉会長に就任、オミッドが辞めて、営業トップにニケーシュが就いたらインターナショナルがばらけ始めてしまった。
そうこうしているうちに2011年にエリックが会長になってラリーがCEOに復帰し、ニケーシュのCEOの可能性はほぼ無くなった。だから、米国Yahoo!は、ニケーシュを選択しても良かったんだけど、メリッサを選んだ。前にも言ったように、抱えてた問題は、ビジネスというより、プロダクトの新規性だったから。
有園:あ、そういうこと(笑)。
村上:時期的には戻るけど、 IPO時の目論見書もね、前代未聞でしたね。「僕ら株主のことなんて考えてないよ? それでもいいなら買ったら?」みたいな。でも、当時30ドルで買った人は、今1,000ドルですからね。
で、今でも結局ラリーとサーゲイ、エリックが圧倒的な議決権をもっているので、ガバナンス的には何でも3人で決めればいいんですが、まあ透明性も必要だということで2015年に持株会社のアルファベットができました。アルファベットの傘の下にGoogle、ディープマインド、X——次世代技術を開発していたGoogle Xね、そんな各社があるわけです。