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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

経営と密接なマーケティングこそ真価を発揮できる

なぜ今後のBtoB事業にマーケティングが必要か

――BtoBへ本気で注力していく意識への改革が、BtoBシフトの第一歩といった位置づけですか?

 そうですね、もう少し具体的にいうと、本気で顧客起点のBtoBを実践するマインドになってもらうことを意図しています。そもそもBtoB事業のコーポレートマーケティングの機能が十分ではなかったので、エンタープライズマーケティング本部の役割もこれから理解してもらって、営業や事業部、R&Dのメンバーとも連携したフォーメーションづくりに注力していきます。同時に、パナソニック全社のブランドコミュニケーション部門、PR部門とも連携していきます。

 オフィスの移転をはじめとする働き方改革、ダイバーシティコミュニケーションを密にしてスピーディーにものごとを進めていく風土改革、また今お話ししたような意識改革が、当社のトランスフォーメーションの第一段階です。次に、全員が実際に顧客起点のソリューションビジネスに取り組んでいけるようにしていきます。働きやすくなれば、業績にもつながるというのが狙いです。そして最終的に、ビジネスモデルを改革していく。その姿に至るために、今は働き方改革、風土改革で、その土壌をしっかり作っているところです。

――BtoB事業領域はフェイス・トゥ・フェイスの営業で売れるから、マーケティングは不要だと考える企業や経営者もまだまだ多いと思います。御社では経営の考えとして、マーケティングを重視されているんですね。

 はい。BtoBには、最終的な製品の部品などを納品するBtoBtoCやBtoBtoBという形もありますが、CNS社で扱っているのは私たちで製品やサービスが完結する、エンドユーザーが直接の顧客であるBtoBです。だから、それぞれの顧客の課題をよく知り、ソリューションを提案していくことがとても大事なんです。

 私も様々なBtoB企業のマーケティングに携わってきましたが、おっしゃるとおり、マーケティングを重視する経営者は多くないと思います。確かにこれまでは、BtoBはフェイス・トゥ・フェイスの営業でよかったんですよね、いいものを作れば売れた時代だったから。でも、既にフェーズは変わりつつあることを、皆さん感じ始めているのではないでしょうか。

 当社も次の100年を見据えたとき、BtoB事業で、「ものを作ること」を最終目標にしては、もう生き残れません。私たちが考える“いいもの”ではなく、顧客起点でその課題に沿ったソリューションを提供する必要がありますし、ときにパートナリングを考えることも出てくるでしょう。また、企業としては当然、いい人材を確保することも大事です。そうなると、やはりマーケティングは不可欠です。BtoB事業は複雑だからこそマーケティングが重要だと私は思います。

新卒の営業時代に売上を作る大変さを知った

――パナソニックとしての考えと、山口さんの考えがその点でぴたりと合致しているんですね。山口さんは、有数の企業でマーケティングに携わってこられました。少し、ご自身のキャリアについてお聞かせいただけますか?

 最初のキャリアは、不動産の営業でした。業種や職種ではなく、基本的に男女平等で評価されるところにいきたいと思って選んだ会社でしたが、すぐにバブルがはじけて、系列の求人誌の広告営業をすることになって。1日80件から100件、ビルの上から下まで飛び込みで営業していましたね。当時は会議が夜の11時半から始まるとか(笑)、今では大きな声ではいえない状況でしたけど、売上を作る大変さと手応えを知りました。

 次に、海外事業に携わる仕事をしたいと考えて、名古屋を拠点とする商社に入りました。一人目の女性総合職として海外プロジェクトを担当し、シンガポールの子会社で生産した精密部品を日本企業や海外企業に販売する仕事、海外の製品を輸入して日本国内の量販店で販売する仕事を通して、モノづくりの意義や販促マーケティングの基礎を学びましたね。

――そこが、マーケティングに携わったきっかけだったんですね。

 そうですね。役員には上場企業の社長や会長の経験者も多く、その方々とも近い距離で話ができる環境だったので、経営にも興味を持ちました。ただ、女性だからという理由で、海外駐在の話がなくなってしまって。そこから、いずれも先方からの誘いを受ける形でマーケティングの経験を積み、担当する範囲も広がっていきました。

 シスコシステムズを経て、当時検索事業が急成長していたオーバーチュア、そして同社を買収したヤフージャパンではデジタルマーケティングを経験しました。事業者とメディアという2つの顔を持つ立場での学びも、大きかったです。

 そのうち、デジタルだけが伸びても日本のマーケティングはどうなんだろうと、今度はマス広告も含めてインテグレートしたマーケティングを経営に近いところで実践できる、それを私が学べる場に行きたいと思うようになりました。その折に日本IBMとご縁があって、同社もちょうど会社自体をトランスフォームするフェーズだったので、マーケティングとPR、広告宣伝、CSR、デジタルなどすべてを統括したコミュニケーション設計を担って、いろいろなチャレンジをさせてもらいました。

入社前に実感したパナソニックの本気度

――では、そこからパナソニックに移られた理由はなんでしょうか? 日本企業は欧米に比べてマーケティングの地位が高くないと言われる中、外資で手腕を振るわれていると、日本企業ではやりにくさを感じることもあるのでは、と思うのですが……。

 確かに、頷けるところもあります。実際、外資は日本に比べてマーケティングと経営が密接ですし、女性だからという理由でキャリアが左右されることも少ないので、私は自分が働きやすいから外資で働いてきたとも言えますね。

 だからこそ、自分がキャリアを重ねるほど、「日本企業が強くなくなったら日本はこの先どうなるんだろう」という思いも大きくなっていたんです。業界への貢献も含めて、次第に「最後のキャリアは日本企業で」と思うようになっていました。

 でも、もちろん、どこでもいいというわけではありません。パナソニック、CNS社に移った理由を挙げるなら、トップの決断が早いこと、未来に向けて本気でトランスフォーメーションしようとしていること。何より、経営と密接なマーケティングができると思ったことが大きいです。

――なるほど。「経営と密接なマーケティングができる」と、入社する前に経営陣の方々とお話される中で確信されたんですね。

 そうですね。まず、先ほどお話ししたような日本の今後を考えたとき、やはり当社のような日本の経済を築いてきた会社は強くあるべきだと思ったんです。その上で、樋口や原田(CNS社 副社長事業戦略担当の原田秀昭氏)、人事センターの所長とも話して、CNS社にBtoB領域として初のマーケティング組織を作る旨も聞き、これは本気で変わろうとしているのだとわかりました。ここなら、今まで経験してきたことを活かせる。正しくマーケティングができると感じました。

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経営と“握って”いないマーケターは、つらい

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:59 https://markezine.jp/article/detail/28063

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