Instagram×POPが生み出した効果とは
このようなインサイトも踏まえると、あらためて「デジタルと店頭の融合」の重要性が浮き彫りになってきます。トレンダーズではいち早く、SNSを中心としたデジタル施策と店頭を連動したマーケティング施策を提供していますが、ここで某食品メーカー(A社)様との取り組みをご紹介します。
A社はマス広告も多く実施されており、カテゴリ内でも安定したシェアを持っています。ただ、流通のプライベートブランドなどが多数参入してきたため、消費者にブランド指名で選ばれることが少なくなり、価格勝負に陥っていました。
これに対しA社はマス広告による一方向的なコミュニケーションだけでなく、SNSを活用して消費者との双方向コミュニケーションを実現させ、ムーブメントを起こしたいと考えていました。
そこで同社が実施したのは、Instagramを活用したハッシュタグキャンペーン。商品の新しい食べ方を提案しながら、消費者自身が考えたアレンジレシピを投稿してもらうという内容で、Instagramでは約80万リーチを獲得することができました。
また、キャンペーンの投稿は、POPをはじめとした販促物に活用。新しい食べ方を提案する売り場作りを行い、SNSの盛り上がりを店頭施策に連動させることにも成功しました。
SNS投稿やキャンペーン企画を店頭に活用する手法としては他に、店頭用のリーフレット作成やマネキンブースでの活用など、様々なケースが考えられます。
店頭施策の実現には店舗・流通側の理解や協力も必要となりますが、新聞購読者の減少によりチラシの集客効果が減退している中、流通各社も新たな集客施策を模索しており、「デジタルと店頭の融合」においてはメーカーと流通の双方のニーズが合致しているといえます。
インフルエンサーがモノを作る時代に
そもそも店頭におけるマーケティングに必要なのは購入への“最後のひと押し”をサポートすることです。女性がモノを購入する際の“最後のひと押し”になるのは「スペック」よりも「妄想」(※)と「言い訳」です。ビジュアルによりその商品がある生活を「妄想」させ、「トレンドだから」「みんな使っているから」という「言い訳」を用意しておくことが重要です。
では最後に、今後の「デジタルと店頭」を融合したマーケティング施策には、どのような手法が効果的なのか考えたいと思います。まず、私は店頭での「トレンド感創出」が鍵になると考えています。テレビ起点のメガトレンドが生まれにくくなった今の時代だからこそ、「SNSで話題」「おしゃれな人はみんな始めている」といったトレンド感を創出し、気付きと「言い訳」を与えることが有効です。
また、「スペックより妄想」という女性ならではのインサイトを刺激するためには、機能や効果などの商品優位性をテキストで訴求するよりも、既にSNSで人気となっている画像や動画投稿を二次利用するなど、生活者視点のUGC(ユーザー作成コンテンツ)を活用するほうが効果的です。
さらに、ビジュアルコミュニケーションが重視されるこれからの時代、「商品パッケージ」の重要性が増すことが予測されます。実際、ボトルのデザインを変更しただけでヘアケア商品の売上が上がった、本の装丁を変えたら女性にヒットして100万部を突破したなどの実例もあります。
このような背景も踏まえ、SNSで影響力のあるインフルエンサーの意見を商品開発・パッケージ開発に取り入れる企業も増えてきており、今後は「店頭とデジタルとの融合」から「商品開発とデジタル(SNS)の融合」へと発展していくのかもしれません。