小霜氏の7つの引き出しを一挙公開!
そしてセッションの中盤からは、小霜氏の手腕である様々な“引き出し”が、近年手がけたマス&Webクリエイティブの事例と共に紹介された。
引き出し1:視聴態度への配慮
花王のシャンプー「Essential」では、テレビCMとWebCMを並行して活用しており、朝のヘアセットを楽にする機能を訴求した動画を共通で使用している。ただしWebCMではターゲットを細分化し、こういう人に向けた商品だ、ということを冒頭でハッキリと提示している。
たとえば、子育てママ向けには「ちゃんと早起きしたのに! ママの朝はバタバタ!」などのコピーでまず共感を獲得する。こうしたWeb動画用の映像も、テレビCMと同時に撮影をした。
テレビCMの視聴態度は受け身のリーン・バックだが、WebCMの視聴態度はSNSなどを主体的に触っている、前向きなリーン・フォワードだ。その分、自分に不要な情報はすぐにスルーされてしまうので、自分ごと化するためにテレビCMの一般的なつくり「起承転結」の結論を頭にもってくる。それをやるかやらないかで、各スコアに1.5倍ぐらい差が出るという。
Webの強みは、ターゲティングができること。「ターゲットを細分化して名指し力を高められるほど効果は高まる」と小霜氏。ちなみにYouTubeのバンパー広告は、リマインドの役割などに活用し、テレビCMとほぼセットで捉えている。
引き出し2:長期PDCA
Web広告でPDCAというと、ひとつのキャンペーン内で効果の高いメディアやクリエイティブに寄せていく運用を意味する。だが、小霜氏は一度得たナレッジを次のキャンペーンに活かすことで「長期PDCA」を実行している。
たとえば前述のVAIOでは、初年度でWebCMに接触した人へバナー広告をリターゲティング配信。すると、「10,000円キャッシュバック」が思いのほか効いたことから、次年度はその文字を大きくして配信した。

WebCMの完全視聴率で平均38%を記録したことも
引き出し3:A/Bテスト
前述のように、WebCMはターゲティングによって効果を高めることができる。スマホ向けオンラインRPG「チェインクロニクル」の発売時、テレビCMと並行して企画したWebCMは、はじめに切り口を変えた複数のバナー広告を配信して「誰に刺さるのか?」をあぶり出した。
その結果、現在30~40代男性で往年のRPGファンに最も響いていることがわかったため、ターゲットをそこに絞り込んで本編WebCMを制作。セガサターンやドリームキャストといった過去のゲーム機がスマホと会話しているという“わかる人にはわかる”内容に仕立てた。
「これらのゲーム機を知らない若い人もいると思いますが、そういう人はもうターゲットではないと考えました。テレビCMはどうしても最大公約数的なつくりになるので、こんなことができるのはWebCMの利点です」と小霜氏。
引き出し4:マストヘッド
YouTubeのトップ画面上部に24時間広告が表示されるマストヘッドも、前述の視聴態度の違いから、冒頭に結論を持ってこないと視聴に進んでもらいにくい。ただし、タレントの都合などからWeb用の動画をゼロから撮影するのは難しいことも多いため、小霜氏は、結論を冒頭に提示するためにどうしても必要な画をあらかじめ想定し、撮影に組み込んでいるという。
引き出し5:多バリエーション
ターゲティングの可能性を最大限に活かした事例がこちら。北海道テレビの人気番組「ハナタレナックス」の特番が全国放送されることになり、その番宣をWebCMで展開した。出演するTEAM NACSの5人にそれぞれフォーカスしたもの、旅番組好き、そして元々の番組ファンという7ターゲットに向けてそれぞれ長尺・短尺の2パターン、計14映像を収録映像を元に編集した。
通常、YouTubeなどでのWebCM完全視聴率は10%程度のところ、本事例は平均38%、最も高かったのは50%近くとなり、運用会社がエラーだと思って調べたほどだそう。
紹介した事例のWebCMなど、小霜氏の手掛けたWebCM・テレビCMはこちらからご覧いただけます。