ネガティブな意見や炎上から目をそらさない
炎上のリスクについてはどうか。
今回のキャンペーンを通して寄せられた意見の中にも、決して「#1時間勤務」に好意的ではないコメントは少なくなかったという。たとえば「休みなのに休めない感じで、切り替えができない」「仕事は仕事として集中することが求められる」などだ。だが甲斐氏は、「それも1つの意見としてしっかり受け止めますし、こうした反応があったことも、大きな目的達成につながっています」と評価する。
「こういう働き方ができる会社なら、すぐに転職したい」「子育てしやすい」などの意見も聞かれた。これをきっかけに、社会全体が働き方に目を向け、その環境作りが活発になれば、社会的にも意義がある。
「女性の働き方について語ることは、人によっては非常にセンシティブで、確かにネガティブに発展しやすい要素もあります。ですが、働き方改革の本質を問いかけるならば、そこから逃げてはいけない、むしろ『逃げてどうするのか』という思いがありました。今回も、炎上やネガティブな意見が出てくることも想定し、それにどう向き合うかも踏まえて企画しています。ただ、始める前から『炎上するだろう』と予想されるようなことは、絶対にやりません。炎上と議論を履き違えるようなキャンペーンは、始めからやりません」(甲斐氏)
Twitterからマーケティングシナリオまで落とし込む設計が課題
キャンペーン期間中、それぞれのTwitterユーザーが考える「働き方」についての議論が活発になった。それと同時に、次回につなげるための反省点や改善点も明らかになったという。
1つは、マーケティングからセールスに向かっていくマーケティングファネルの設計だ。「広く認知をさせた上位層から、購買に落とし込む中間層、そして購買までのプロセスを設計するに当たり、改善の余地が多く見つかりました」(甲斐氏)
もう1つは、テレビを絡めることだ。「マーケティングの目的は達成しているので、今回の結果は悪くはありませんが、もう少し大きなビジネスプランを描いて規模を大きくできたのではないかと思っています」と甲斐氏。マーケティングシナリオに基づいて、購買に結び付けるため、データを統合・分析する仕組みを整備する必要性を語ってくれた。
日本HPは今後もTwitterを活用しながら、今の社会やテクノロジーの活用について、「考えてもらう」ためのキャンペーンに取り組んでいくという。今回の「#1時間勤務」で得た知見を生かし、次に同社がどのような仕掛けを進めていくのか、今後も注目したい。