ベンダーの知見に頼るのも必要なスキル
北村氏は、戦略を設計する有効な手段として、「当社も含めて、ベンダーを上手に利用すること」を勧めた。なぜなら、ベンダーは数多くの事例をこなしているため知見を有しており、製品についても精通しており、しかもベンダーの中には、これまでのようにツールの提供に終始するのではなく、クライアントの成果を上げるパートナーとしてそのスタンスを変えてきているものも多いからだ。
チーターデジタルの場合、BtoC向けMAを提供しているベンダーとして、世界15カ国で事業を展開。特徴は、長い業界経験を持つ従業員が多い点だ。
「この業界は人材の流動が激しいのですが、当社の場合、5年以上在籍している社員が4割以上いて、長期にわたってクライアント企業と付き合っています」(北村氏)
同社の主力製品は、「CCMP」(Cross-Channel Marketing Platform)と呼ばれるBtoCマーケター向けのMAツール、そしてメール配信システムの「MailPublisher」だ。そして、これらのツールを活用したマーケティング戦略コンサルティングや運用代行、コンテンツ制作などの専門サービスも併せて提供している。この知見をもとに、さまざまなBtoC企業のマーケティング課題解決に貢献しているという。講演の後半では、実際にクライアント企業と共にマーケティング課題を解決した事例が紹介された。
モバイルシフト化が進む顧客に向け、ブランド体験を再設計
まず北村氏は、米国のアパレル企業であるAMERICAN EAGLE OUTFITTERSの事例を取り上げた。同企業は、コアターゲットである15歳から25歳の顧客がモバイルシフトしており、その対応に追われていた。
こうした課題を受け米チーターデジタルは、スマホの特性の一つである「オンラインとオフラインをシームレスにつなぐこと」をコンセプトにした新しいブランド体験の構築を提案した。活用したデータは、会員情報と商品データ、そして店舗情報。これらをもとに、シームレスなブランド体験を設計するための要件定義を行った。その施策は、「RTB(Reserve・Try・Buy)プログラム」と呼ばれている。
RTBプログラムでは、スマホで商品を閲覧し、気に入った商品があればそのまま取り置き申し込み(Reserve)し、後日その商品をリアル店舗で実際に試着(Try)、購入(Buy)することができるというもの。取り置きされた商品は、メールやSMSを通じて告知され、在庫がある店舗を通達する。当然、基幹システムにある在庫情報とも連携しているわけだ。
「基幹システムに開発の手を入れて通知メールを送ることもできますが、このケースでは、RTBプログラムの実現にあえてマーケティングツールを導入しました。ツール内に予約履歴や閲覧履歴など行動パターンが蓄積されるので、そのデータをもとに次の施策に活かすことができます。将来の新たな施策への活用も念頭に入れてツール導入を判断したわけです」と北村氏は説明する。