AIでの予測やスマートスピーカーへの対応も

杉原:今後正式版の開発を進めるにあたり、どのような機能を追加させていくご予定でしょうか?
薄井:ひとつはレポーティングサービスを計画しております。働き方改革を受け、忙しい方にはダッシュボードを操作する時間すら割けない課題もあるので、必要な分析結果のみを一目で確認できる四季報や月報・週報なども検討中です。
もう一つは、マルチデータ統合分析にAIを絡め、タレントレイティングやキャスティングされた人物の組み合わせでの番組パワーやCM効果、視聴率などの予測できたら面白いのではないかと考えています。
杉原:やはり予測の方に行かれるのですね。タレント視聴率は御社のデータですべて取るのでしょうか?
薄井:外部のデータと連携する必要があり、現在検討をしています。
また、このようなパッケージ商品を提供することに価値を感じていただける一方で、各ユーザーごとに自社保有データを加えたり、オリジナルメニューを作りたいという要望もあります。それらの要望にも柔軟に対応できるよう、汎用のBIツールを採用し、高額な開発費や導入費などを発生させないようにしているのも、それらの外部データ連携の容易さのためです。
杉原:AIのエンジンも各社さんが適宜選ばれると思います。そしてそれに合うように、御社にしかないデータを提供すると。
薄井:TVメタデータをDMPにコネクトし、それぞれの視聴系のデータや調査データ、SNS、ネットの行動ログ、位置情報や移動履歴、POSなどの購買データをシンクして統合されたデータをダッシュボードにアウトプットし、AIで予測するという流れができると思います。各AIに適応するデータは意識していますし、今後は視聴系のデータだけでなく、スマートスピーカーの音声ログも対象になってくると予測します。
杉原:スマートスピーカーが今後は間違いなく入ってきますよね。今どのスマートスピーカーもテレビの操作が可能ですよね。
薄井:そうですね。スマートスピーカーが連携されると、スマートスピーカーやスマートフォンとテレビをペアリングして、テレビの前にいる個人や、声で指示を出した人が特定できるようになります。つまり、シングルソース化できる可能性が出てきます。大量の会員IDやネットの行動ログがこれらの視聴データとマージして、「テレビとネットとリアル行動(移動や購買)」をシングルソースにした膨大なマーケティングデータが構築されると思います。
今回は「Talent Rank」の機軸でお話しましたが、「TV Rank」シリーズ全体として、様々な外部環境の変化がある状況においてもマルチデータ統合というポジションを担っていきたいと考えています。
杉原:我々がいつも話題にするのは、デジタル施策とテレビ施策の統合分析の話です。しかし、テレビもデジタルもどちらもしっかりとできている所はほとんどありません。でも事業主さんに伺うと、皆さんそこは取り込まなければいけないという危機感を持っていらっしゃいます。一歩踏み込んだ動きができる時代は、意外と早く来ると思われますか?
薄井:日本におけるスマートスピーカーの普及やその速度はわかりませんが、その間にも様々なサービスやテクノロジーでデータの取得や統合環境は進むと思います。 特にグローバルサービスにおけるデータドリブンの考え方やデジタルシフトのトレンドを捉えると、またトータルオーディエンスでの様々な視聴計測やメディア接触調査、視聴ログの普及、視聴データと会員情報の連携の動きを見るだけでも、想像よりも加速度的な環境変化は予測できます。
杉原:ちなみに「Talent Rank」はテレビ局さんが使うイメージですよね?
薄井:はい。テレビ局を中心にTV Rankシリーズで既にサービス中の「CMデータ編」と「番組データ編」はご活用いただいておりますが、今回のTalent Rankは番組のプロデューサーや編成マーケティングの方のご期待が高い他、番組制作会社、キャスティング会社、広告会社、調査会社、広告主などのキャスティングに関わる方のお引き合いが多いです。意外なところでは、タレントを売り込む立場の芸能プロダクションさんから、Talent Rankの指標を把握してプロモートに活用したいニーズをいただきました(笑)。
また、Talent Rankはテレビ局向けにタレントパワーを指標化する目的ですが、相手がメーカー(広告主)になると、これがブランドパワーに置き換わり、統合するデータもPOSデータなどになります。そのニーズを受け、TV Rankシリーズでは「ブランド編」というテレビの露出効果を視聴者の態度変容やブランドリフト、CMのROIといった指標でスコアリングするメニューも構想しています。
杉原:共通するデータソースを使うのですが、プレイヤーが誰かによって加工の仕方や最終的なアウトプットの仕方が結構変わってくるというのが面白いですね。御社としては1つ1つに対応するよりもデータプロバイダーになって、外部にソリューションプロバイダーやインテグレーターがいるという状況になれば、様々なパターンにはめ込んでいけそうですよね。
また、ダッシュボードツールは結局ツールでしかないと思います。データの設計がきちんとまとまれば、必然的に見せ方はきまってくる。中間の部分をどう設計するかが、どう考えても肝になると思います。その部分を担うプレイヤーが今はそんなにいないかもしれませんが、環境や技術的な所がわかる人がいれば、今後出てくる可能性は大いにある。さらに要素となるデータが徐々にそろい始めているから、今後はさらに面白いことになるのではないかと思っています。
薄井:まったく同感です。ましてやマスというか、オフライン(特にテレビや売上)は今まで分断されていたものでしたが、データ統合ロジックによりシングルソース化されてくるという環境の変化が大きいのではないかと思います。それがより一層実現してくれば、個人に焦点を当てた精度の高い分析が可能になりますよね。そのうち、テレビCMもパーソナライズされて、見ている視聴者によってクリエイティブを出し分けるのが当たり前の世の中がやってくるかもしれませんし、データの統合分析もライブでモニタリングされるようになってきますね。
杉原:タイムリーに分析など、活用することが可能なTVのデータが揃ってきて、とてもおもしろい状況になってきましたね。興味深いお話をありがとうございました!
本記事は「Unyoo.JP」の記事「エム・データ薄井さんに聞く:Talent Rankでネクストブレイカーを見える化してキャスティング!」を要約・編集したものです。オリジナルコンテンツを読みたい方は、こちらをご覧ください!