ミレニアル世代の健康志向の強まりとその理由
このように大手ホテルがウェルネスやフィットネスをテーマにした取り組みを本格化させるのは、ミレニアル世代が健康志向かつ、旅行で他の世代より多く出費する傾向にあるからだ。
MMGY Globalの2016年の調査によると、米国のミレニアル世代家族は他の世代に比べ旅行回数と出費が多いことが明らかになった。過去12ヵ月の旅行に使った費用は5,295ドルで、次の12ヵ月の出費予定は6,282ドル。米国全体平均の次の12ヵ月の出費予定は4,945ドル。ミレニアル世代は1,000ドル以上多く出費する傾向があるということになる。
ミレニアル世代が他の世代に比べ裕福になったということなのだろうか。様々なデータから推測できるのは、ミレニアル世代は親世代や団塊の世代に比べ、健康志向が強く、酒などへの出費が少なくなり、その余剰分で旅行やウェルネスに費やしている可能性があることだ。
日本でも若者の酒離れやタバコ離れということがよくいわれているが、グローバルに見てもその傾向は同じようである。
ニールセンがオーストラリアで実施した調査によると、過去1ヵ月の飲酒割合は、ミレニアル世代が53%、X世代が65%、団塊の世代が72%と年代ごとの違いが明確となった。
英国でも成人のアルコール摂取割合が2005年以来で最低となっている。ガーディアン紙が伝えた英国の統計によると、すくなくとも週1回飲酒するという英国成人の割合は、2005年には64.2%だったが、2016年には56.9%にまで低下していたことがわかった。
Eventbriteが英国のミレニアル世代を対象にした調査では、酔っ払うことを「クール」と考える人の割合が10%以下、また酔っ払った人に対してマイナスの印象を持つ割合が40%と、アルコールから距離を置いている傾向も明らかになっている。また同調査では、71%がフェスティバルのようなイベント後には、お酒ではなく、健康スムージーを選ぶと回答している。さらに、お酒にお金を使うのであれば、他のことに使いたいという意見も多いようだ。
同調査に関わったニチ・ホッジソン氏は、ミレニアル世代の親にあたるX世代の多くが、問題があるとアルコールやドラッグに助けを求めていたが、ミレニアル世代は同じ失敗をしたくないと考えていると指摘する。
親世代の失敗だけでなく、ソーシャルメディアを通じて触れる新しい価値観に影響され、ミレニアル世代はますますウェルネスへの意識を高めていくことになるはずだ。ホテル業界を含め日本のインバウンド市場が世界のミレニアル世代を魅了するには、ウェルネスやフィットネスに関わるサービスやプロダクトを取り入れる必要があるのではないだろうか。