Twitter活用の加速に成功したすかいらーく、成果とプロセス
活用の成果
ガストの公式アカウントのフォロワー数を36万以上に増加。オリジナル動画コンテンツの配信を通じて、売上増加にも寄与することにも成功した。
プロセス
開設当初は活用に消極的、その理由は
――Twitterアカウントを開設した当初は、あまり活用が進んでいなかったと聞いたのですが、なぜ活用を本格化しようと思ったのでしょうか。
龍康殿:弊社は2012年頃にガストの公式アカウントを開設し、運用をスタートしました。開設後は一時的なキャンペーンで使うことはありましたが、効果が見えづらい点があり、会社として本格的にTwitter運用を進めるには至りませんでした。
その後2017年に、バーミヤンでアイドルグループ「ももいろクローバーZ」、人気アニメ「ご注文はうさぎですか?」とのコラボキャンペーンを行った際、告知媒体としてTwitterを使ったところ、これまでとは大きく違う拡散力と影響力を発揮し、それが客数増加にもつながりました。
これらの事例から、ブランドを知っていただくきっかけになるのではと思い、各ブランドでもTwitterアカウントを開設し、運用していくことを決めました。
吉田:2011年頃からSNSが流行り始めていたので、ずっとトライしたい、当社も使うべきだとの気持ちは持っていたのですが、それらを活用することでどのくらい売上につながるのかを証明できないところがあり、なかなか活用が進んでいきませんでした。
それまでは基本的に、クーポンを使ったコミュニケーションが中心。クーポンを活用すれば、どの媒体に載せたものがどれくらい売上効果があったかを実績として出せますし、クーポンを載せるチラシの媒体としてのパワーもわかっていたので、それにTwitterが見合うのか、心配な部分がありました。
濱嶋:あとは、正直活用の仕方がわかっていなかった。それで2017年頃からいくつかトライを重ねていったんです。元々利用者の多いブランドを持っているので、何か一つアクションを起こせば大きな反響が起きる。それを繰り返して改善しながらナレッジを蓄積していきました。
運用本格化のため行った“3つ”のアクション
――具体的には、どのような取り組みを進めていったのですか。
龍康殿:それまで、個々でそれぞれのブランドを担当していたのですが、2017年11月にソーシャルコミュニケーションチームを立ち上げました。SNS運用は私と吉田の2人で、最初は年間計画を一緒に立てて、はじめの半年はフォロワーの増加を目指した施策、半年以降はフォロワー内にファンを増やすためのコンテンツ提供を行うことにしました。
そしてこの戦略に基づき起こしたアクションは3つです。
1つ目は、アカウントの存在を知ってもらうための「フォロー&リツイートキャンペーン」の実施です。インセンティブはお食事券に統一することで、来店寄与に貢献することも狙いました。
2つ目は、「投稿ポリシー」の策定。各アカウントの中の人のペルソナを設定し、投稿時の言葉づかいを意識したり、投稿する内容を協議したりできる体制を整えました。
3つ目は、「社内での認知拡大」です。予算を使う以上ビジネスにどう結びついているかを証明する必要があります。そのため、まずTwitterとは何かを知ってもらう講習会を開き、お客様がどういった声を上げているのかを知ってもらい、Twitterの価値を理解してもらおうと考えました。現在も講習会は続けています。
吉田:ソーシャルリスニングツールを使って、自分たちのブランドに対してどんな投稿がされているかを見える化しているのですが、それを表示するモニターを多くの本部スタッフが通るところに設置しており、お客様の生の声をリアルタイムに見てもらえるようにしています。
魅力は最大限到達できるリーチとターゲティング精度
――Twitter広告を活用しながら、ガストのアカウントだと現在36万人までフォロワーを増やしたということですが、広告の効果はいかがでしたか。
龍康殿: Twitter広告を利用したことで、短期間で多くの方にアカウントの存在を認知していただくことができたと思っています。
プロモツイートであれば、セグメントしたターゲットに配信でき、ファーストビューであれば、すべての利用者に一度は必ず見てもらえます。プロモトレンドに関しては、ブランドに興味がなくてもキャンペーンを通じて弊社のブランド接点を作ることができるなど、目的に合わせた幅広いプロダクトが用意されているのはとても良かったです。
吉田:利用してみて、Twitter広告の一番のメリットは、配信先を細かくセグメントできることだと思いました。折り込みチラシでは、店舗までの距離をもとに配布先を決めていたりするのですが、Twitterでは趣味・興味カテゴリや特定のアカウントのフォロワーなど、細かいターゲティングができるのはすごいなと。
特に弊社のブランドの規模感だと、ガストは全国にあって、テレビや新聞などマス広告に出稿しているのですが、他のブランドだと店舗数の関係上マス広告でリーチするには費用対効果に見合わないんです。その中でTwitterは膨大なリーチ力と高いターゲティング精度を持っているので、現状に最適なソリューションでした。
濱嶋:また、ダイレクトにお客様にアプローチしつつ生の反応が得られるというのは、Twitterの魅力だと思っています。
クーポンの利用データ、ポイントカードから購買データなどが取得できても、個人レベルで判別することはできません。Twitterであれば、来店してツイートしている人、今から行こうと思ってツイートしている人など、何かしらアクションを起こしている人に声をかけることができるのはありがたいですね。
Twitterと共同でコンテンツ制作にも着手
――ここまでで、フォロワーを増加させることに成功したのはわかりました。続いて、ファン育成を目指したコンテンツ提供についてお伺いします。Twitterと共同でオリジナルコンテンツを提供したとのことですが、その背景を教えてください。
龍康殿:きっかけは、Twitter Japanからの提案でした。広告感が強くなく、楽しめるコンテンツを通じて商品のことを認知・理解してもらいたい旨を伝えたところ、芸人さんと絡めたコンテンツはどうかとご提案いただき、今回スポンサーシップという仕組みでコンテンツ制作、配信を行うことにしました。
吉田:企画としては、吉本興業の芸人さんたちに、ガストのメニューを使って“食レポ”対決をしてもらうというものです。フォロワーの方々には、一番おいしそうだった、食べたくなった食レポをした芸人さんを選んでリツイートで投票していただき、選ばれた芸人に投票した方々にはお食事券をプレゼントすることにしました。
\RT数×1円分のお食事券をプレゼント⁉️/
— ガスト【公式】 (@gusto_official) 2018年3月27日
投票方法はモーメントにまとめられているツイートの中から優勝だと思う芸人さんの食レポをリツイートして @gusto_official のフォローをするだけ!
〆切は4/17まで
※本ツイートはRT対象ではありません。https://t.co/WOAlHFoqMT
企画の最終的な目的は、食べたいと思って来店していただくことです。そのために、今回はキャンペーン前に期待感を最大限高めることに注力しました。
食レポの対象商品の中には、まだ発売していない商品もありました。その商品を発売前に食レポ動画を通じて紹介し、発売直前に結果を発表、クーポン贈呈の流れを作って事前の盛り上げを作ることにトライしました。実際に今回1位を獲ったのは新商品だったので、クーポンを渡すところまで想定通りにいきました。
食レポ動画、売上への反響はいかに
――動画の出来映え、実際の商品に対する反響などはいかがでしたか?
龍康殿:芸人さんをフックに、そのファンの方など今までリーチできなかった人たちにアプローチでき、食レポを通じてガストの料理を見ていただくことができて良かったです。
それと、「こんな商品があるなら行ってみようかな」という気持ちにアプローチできたように感じています。それはライブ配信時のコメントなどを読む限りではありますが、「行ってみたい」「食べたい」という気持ちでコメントをしてくださった方々につながっていることが見られたので。
吉田:配信後、食レポで取り上げた既存商品の売上も増え、カットステーキという商品に関して販売数が増えており、今回の企画が販売への影響が出ている印象はあります。
消費者のリアルを捉える特長を活かしていく
――今後は、Twitterをどのように活用していこうとお考えですか。
吉田:Twitterを本格的に運用開始してから5ヵ月ほど経ち、おかげさまで順調にフォロワー数も増えてきました。引き続きフォロワーを増やす活動は行っていきますが、さらに今後はコンテンツにも力を入れていきたいです。
コンテンツを通じて、既存のお客様に、ガストをフォローして良かったと思ってもらえる、胸を張って友達にリツイートしてもらえるようなコンテンツを作っていかなければ新しいフォロワーも増えないと思いますので、新たなコンテンツを考えたいと思います。
また、Twitter運用の成果を証明するために、店舗や商品と連動したキャンペーンを実施したいと思っています。さらに、最近少しずつ始めていますが、他企業とのタイアップも増やしていきたい。実店舗でのコラボだとハードルは高いですが、Twitter上だと簡単にでき、フォロワーの皆さんも喜んでくれることが多いので今後も取り組んでいきます。
濱嶋:Twitterもそうですが、デジタルはあくまで手段にすぎません。提供者側の理論を優先したプロダクトアウトの考え方ではなく、お客様の目線やライフステージに寄り添うマーケットインの考えに即した接客の手段として利用していきたいです。
お客様の生の声や行動を理解した上で施策を実行していくのにTwitterは最良なメディアだと考えていますので、今後も活用を進めていきたいです。複数の自社メディアをつなぐ、リアルタイム性の高い情報発信のベースとして、今後も発展させます。
デジタルマーケティングとお店での接客はまったく同じで、お客様とのあらゆるタッチポイントで丁寧にコミュニケーションを継続していくことが、ブランドを好きになってもらうことにつながります。我々の業種では食事の選択肢の中にあり続けることが大事だと思っているので、そこを最優先にマーケティング施策を展開していきたいと思っています。