クオリファイ~MQL化のために広告&架電をどう使うか
では、マーケティングアクションについてはどうだろうか。森本氏はABMをもじった「Account Based Advertising」というキーワードで、注力顧客のみに広告を配信していることを説明した。
具体的には注力顧客の従業員にのみブラウザジャックを実施したり、取締役以上の人にのみ特別イベントの招待の広告を出すといった徹底的な広告出し分けも行っている。首都圏以外ではリアルイベントではなくWebセミナーの広告を全面的に押し出すのも広告の効率を高められると考えている。
チャネルはデジタルだけに限らない。既存顧客の部長以上に対して、1カ月以内に広告を表示してもらったが、クリックしてもらえていない場合、デジタルで追いかけるのではなく、連絡先が分かっている場合には架電を行う。
アカウント選定の結果、好ましいターゲット(Prefarable)だとみなしたユーザーに対してはどのメディアで集客するのかを検討し、広告にレスポンスがあってCookieをセットできたらResponded Anonymousに格上げし、リタゲ広告で再接触して情報登録を促しDMPのデータをリッチにしていく。
追加されたユーザー情報をもとにクオリファイをかけて、本当に必要なお客様だと判定されれば、Identified Targetとして、インサイドセールスに渡す、という仕組み作りこそがAccount Based Advertisingなのだという。

DMPに貯めるCookieの質を高める
KDDIでは具体的にどのようにDMPを使っているのか。企業IPアドレスを指定できるDSPは数多くある。そうしたDSPを活用して広告をクリックさせてから、DMP上で調べると企業名がわかる。
「もともとIPアドレス指定のDSPを使っているので、クリックには至らず広告表示しただけのユーザーも『広告表示セグメント』としてDMPの中にデータを貯めておきます」(森本氏)
「広告表示セグメント」については企業名を特定するために、DSP以外に、刈り取りにおいて高いCPAを発揮するGDNも活用しているという。

次は、誰がキーマンなのかの特定が課題になる。良質なクッキーを集めるために、次の3つの要素を役立てていく。
- 所属部署・役職→CRM情報・MA・名刺情報
- 接触しているメディア→広告出稿時のタグマネジメント
- 閲覧している記事コンテンツ→自社コンテンツメディア
これらを自社データだけで賄おうとすると、既存顧客のみに向けての施策になってしまう。新規顧客にアプローチを強めるために、プライベートDMPのデータを「宝の山」にするための補強として2ndパーティーデータがあると森本氏は語る。
「どこどこJPさんなどの3rdパーティデータに対して、2ndパーティデータは個別の企業間同士の取引で、クッキーの交換や買い付けを行います。たとえば、会員データによる企業・役職・職種情報や記事コンテンツの閲覧情報などです」(森本氏)
企業・役職・職種情報と、閲覧記事を組み合わせると、ターゲットユーザーのペルソナが可視化でき、本当に狙うべきキーマンが明らかになってくるのだ。
ディスプレイ広告はABMに最適なメディア
最後に森本氏は次のように要約を行って、講演を締めくくった。
「MAだけではサイロ化して『アプローチできる人に対する最適化』に陥ってしまいます。アカウントベースのデータを見ないと競合やパートナーに最適化されたマーケティング施策にかたよってしまうのです。
ディスプレイ広告はABMを実施するB2Bマーケティングにとって最適なメディアのひとつで、DMPとうまく組み合わせることで統合的なABMが実現します。そのためには2ndパーティデータを活用して、顧客情報を直接取る前にターゲットユーザーのペルソナを可視化することが有効です」(森本氏)
本レポートの前半では、MA偏重の弊害を指摘し、マーケティングの後工程にあたるインサイドセールスを効率化するためのMQL指標について解説する。記事はこちら